銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅱ
ユキは進と別れてからどれぐらいの時間が流れているのか全くわからなかった。真っ白な部屋にカレンダーはなく日付の分かるものがなかった。自分がどれだけの期間意識不明でいたのかドクターは教えてくれなかった。毎日ベッドに寝かされ移動するのはトイレとシャワーの時だけ。その移動ももちろん車椅子。個室に入る時以外は必ず衛兵がそばにいて常に監視されている状態だった。
ユキは意識を取り戻してから日を追っている。今日は目覚めてから多分一週間…。意識が戻ってから2,3日はひょっとしたら4,5日だったのかもしれないがなんとなくそれぐらい…と思いながらベッドの上で毎日を過ごしていた。
(こんなに何もしない日が続くなんて…初めてかも知れない。)
一日が長く動かないのでお腹も空かない。しかし定期的に食事が運ばれてくるが手をつけず戻す状態が続く。
(いったいこの食事は誰が作っているのかしら…)
料理を見ると今まで普通に食べていたものだがなにかしら加工していそうで食べる気にならなかった。ユキはそれを踏まえ"中央病院から持ってくるリスト"に非常食も加えていた。出される食事には手をつけず部屋にどっさり置いてあるその非常食を食べる。栄養は持ってきてもらった点滴で補う。病院の非常食は入院患者分と職員用が数日分用意されているので底を尽くことはなさそうだ。
「あなたが食べているものはなに?」
さすがに一週間非常食を食べ続けているので衛兵が聞いてきた。
「非常食というものよ。非常時に持ち出して食べるもの…今私のとって非常時なの。」
ユキが"余りおいしくないんだけど"と付け加える。
「私たちの出す食事手をつけない。」(衛兵)
「ごめんなさい。食材を無駄にしてるのは分かっているけど誰が作っているのか
わからないしなにか入ってたらって思うと食べられないわ。」(ユキ)
「少尉が心配している。食べない、と。」
衛兵の言葉にユキ違和感を感じる。
(なぜ心配なんてするんだろう?おかしくない?だって私は捕虜よ?)
ユキはそんなことを思いながらふと一つの疑問にたどり着く
「私が死んだら困るって事?」
衛兵に聞くが答えず黙り込んでしまった。
(やっぱりそうなのね…私が死んだら都合の悪いことが起こるのね。そうするとあの
食事に何か盛ってるってことはなさそうだわ。でも…)
余りおいしくない非常食だがペットボトルの水を入れれば冷たいがご飯が食べられるので非常食が底をつくまではそれを食べ続けようとユキは心に誓う。最近は熱を出すこともなくなり痛みも無くなってきた。しかし体の内部は元通りになっていないので急激な動きは避けるようにと言われている。注意するのはその程度だ。ベッドの上で看護師の時の経験を活かし軽いリハビリも始めている。
衛兵に何度か何をしているのか聞かれたが説明しても理解できないらしく途中から何も聞いてこなくなった。
(いつでもここから脱出することができるよう準備をしておかないと…そのためには
体を元通りにすることが先決…)
ユキは油断するとこぼれそうになる涙を封印した。
作品名:銀河伝説 (新たなる旅立ちの後) Ⅱ 作家名:kei