パラヴェート・ラスト
重ねた唇の、少し冷たい感触はもう未知のものではない。けれど、慣れたというにはまだ、感情のざわつきが激しく真冬の心を揺さぶる。教師と生徒がこんなことをしていいのか、そんな後ろめたさもあるのかもしれない。
ふいに湿った暖かさに、唇を探るようにちろりと舐められる。いつもの、舌をねじ込まれる前の合図。この先に待っている息迄貪るような蹂躙を予感して、知らず真冬の体が震えた。それを感じ取ったのか、逃がさないとばかりに硬い腕が乱暴な手つきで真冬の体を抱き寄せる。……鷹臣の行為は、いつだって荒々しくて激しい。それが無意識のものではなく、真冬が戸惑ったりうろたえる様子を見て愉しむためなのだから尚更タチが悪い。どれだけ抗議しても罵っても、どこ吹く風といった態で鷹臣は改める気はさらさらないようだった。
けれど、次の瞬間襲ってきたのは鋭い痛みで。予想もしていなかった感覚に、反射的に束縛から逃れようと鷹臣の胸を押す。けれど、拘束は固く離れることはかなわない。せめて奪われた声の代わりにと拳を握り、出鱈目に叩きつける。――ふいに、口の中に鉄さびた嫌な味が広がった。
唇が切れたんだ――そう察した時、鷹臣の顔が離れた。ようやく解放された唇で深く息をつき、薄く笑う鷹臣を思い切り睨みつける。
「痛いよ、なにすんのさ」
刺々しい声をぶつけても、鷹臣は一向に動じる気配はない。ただ、何処か面白そうに双眸を細め、手を伸ばして指で真冬の唇をなぞった。真新しい傷を広げるように撫でられて、再び染み込むように痛みが走った。とっさに触れる鷹臣の腕を振り払う。
「痛いってば」
「……お前、化粧とかしねえの?」
まるで脈絡のない言葉に、真冬は怪訝そうに眉をひそめた。
ふいに湿った暖かさに、唇を探るようにちろりと舐められる。いつもの、舌をねじ込まれる前の合図。この先に待っている息迄貪るような蹂躙を予感して、知らず真冬の体が震えた。それを感じ取ったのか、逃がさないとばかりに硬い腕が乱暴な手つきで真冬の体を抱き寄せる。……鷹臣の行為は、いつだって荒々しくて激しい。それが無意識のものではなく、真冬が戸惑ったりうろたえる様子を見て愉しむためなのだから尚更タチが悪い。どれだけ抗議しても罵っても、どこ吹く風といった態で鷹臣は改める気はさらさらないようだった。
けれど、次の瞬間襲ってきたのは鋭い痛みで。予想もしていなかった感覚に、反射的に束縛から逃れようと鷹臣の胸を押す。けれど、拘束は固く離れることはかなわない。せめて奪われた声の代わりにと拳を握り、出鱈目に叩きつける。――ふいに、口の中に鉄さびた嫌な味が広がった。
唇が切れたんだ――そう察した時、鷹臣の顔が離れた。ようやく解放された唇で深く息をつき、薄く笑う鷹臣を思い切り睨みつける。
「痛いよ、なにすんのさ」
刺々しい声をぶつけても、鷹臣は一向に動じる気配はない。ただ、何処か面白そうに双眸を細め、手を伸ばして指で真冬の唇をなぞった。真新しい傷を広げるように撫でられて、再び染み込むように痛みが走った。とっさに触れる鷹臣の腕を振り払う。
「痛いってば」
「……お前、化粧とかしねえの?」
まるで脈絡のない言葉に、真冬は怪訝そうに眉をひそめた。
作品名:パラヴェート・ラスト 作家名:緋之元