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パラヴェート・ラスト

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「強いて言うなら」

 一旦切られた言葉は、不安を誘う余韻を残す。嫌な予感がして、真冬は鷹臣から体を離そうと後ずさった。けれど、真冬の行動を見越したかのように腕を捉えられてその場に止められた。
 常人よりも遥かに強い力で指が肌に食い込んで、骨が軋みそうな程締め上げられる。うめき声が口の端から零れ落ちても、容赦のないその握力は緩むことはない。
 抗う事も許されず無理矢理に引き寄せられる。限りなく零に近い二人の距離。それはけして『教師と生徒』の距離感ではなく、『幼馴染』のものでもない。かと言って、その距離が相応しい関係性に、真冬と鷹臣は到底該当などしない。そんな甘く優しい繋がりなどない。あえて言葉で表現するのなら―――略奪者と、被略奪者。それが一番近いように思えた。
 けれど、そうだと結論付けるには、ひとつ大きな矛盾がある。

 鈍い痺れに似た痛みを堪え、眉間にしわを刻んだまま真冬は鷹臣の相貌を見直す。上げた目線と、向けられた鷹臣の双眸が真っ直ぐにぶつかり―――ぞわりと、得体の知れない戦慄が真冬の背筋を駆け抜けた。
 細めた鋭利な二つの瞳。その奥まで、苛烈な輝きを宿らせて、鷹臣は再び口を開く。


「ただ―――喰い殺してやりたくなっただけだ」


 耳元で響いた、何気ないことのように、当然の事とばかりに紡がれた言葉。抑揚のない、ともすれば優しげにすら聞こえる囁き声、けれどほんの薄い紗を取り払ったその奥には、きっと、瞳と同じ凶暴な感情が潜んでいる。そう、ささいなきっかけ一つで牙を剥いて、体の中心を穿ち食い破ってしまいそうな。
 その衝動の対象は、間違いなく自分だ。……望んでいるかと問われたならば、当然全力で真冬は否定する。だが、仮に本当にそんな窮地に追い込まれた時に、自分が最後まで抗うだろうかという自問。答えなど決まりきっている筈なのに、何故か完全には肯定しきれなかった。この矛盾の帰結が何処にあるのかは、真冬自身にもわからない。
 だから、私はいつか本当に鷹臣くんに殺されるのかもしれない、そうごく自然に真冬は思う。
 不思議と、恐怖は感じない。代わりに胸に湧き上がる、背を抜けるこの感情は何なのだろうか。
 胸をざわめかせるそれを、真冬は知っている。そんな気もする。……けれど、同時に、知ってはいけない気もした。


 ボタンの掛け違えを起こしたような錯綜する情動を持て余して、真冬は自らを貫く鷹臣の視線から目を背けた。

作品名:パラヴェート・ラスト 作家名:緋之元