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I belong to you.

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シャアは医務室へと足を運ぶと医師にアムロの状況を確認する。
医師はカルテを手にシャアへと経過を報告する。
「傷付いた内臓の方は順調に回復してきております。また、骨折についても同様です。ただ、頭部を強打した事により脳内出血を起こしていましたのでその影響で意識が戻らないかと…。それに、もし目覚めたとしても何らかの障害が残る可能性があります。」
「障害?」
「はい。四肢に何らかの麻痺が残るか、意識障害が残るか…。視力、聴力などの障害も考えられます。もしくはこのまま目覚めないか…。」
医師の言葉にシャアは呆然とする。
もう、彼の琥珀色の美しい瞳が見られないかもしれない。あの、激しくも偽りのないあの瞳が…。
「総帥?」
「ああ…、すまない。アムロには会えるか?」
「はい。ICUからは出て今はこちらの病室に移動しております。」
医師に案内され、アムロの病室へと入る。
そこには頭に包帯を巻き、肺を損傷した為、人工呼吸器を付け、幾つものコードや管に繋がれたアムロが眠っていた。
バイタルを計測するモニターには規則的な心拍の波が表示されている。
「生きているのだな…。」
シャアはアムロの元まで歩み寄ると、そっと頬に触れる。打撲で少し腫れ上がったそこを撫ぜると、アムロがピクリと反応する。
「アムロ?!」
その反応に医師が慌ててアムロの様子を伺う。
「アムロ!アムロ・レイ!私だ!シャア・アズナブルだ!」
シャアの叫びにアムロの瞼がフルリと震る。
薄っすらと瞼が開かれ、美しい琥珀色の瞳がその隙間から少し姿を現わした。
「なんと!今まで全く反応を見せなかったのに!」
驚く医師を他所にシャアが再びアムロの名を呼ぶ。
その声にアムロの口元がゆっくりと動く。
声にはならなかったが、その口の動きは間違いなく“シャア”と言っていた。
「アムロ!」
しかし、アムロの瞳は焦点を結んでおらず、ただ天井を向いていた。
そして、もう一度その口が“シャア”と名を呼ぶと、薄っすらと開いていた瞼がゆっくりと閉じていく。
「アムロ!?ドクター!アムロは?」
医師は脈やバイタルを確認し、ホッと息を吐く。
「大丈夫です。眠っただけの様です。」
その答えにシャアも肩をなで下ろす。
「一瞬でも意識が戻りましたから意識障害の方は大丈夫でしょう。その他についてはまた意識が戻った時に順次確認していきましょう。」

その後、アムロはまだ意識ははっきりとはしないものの、徐々に覚醒する回数が増え、手足も少しづつ動かす様になっていった。
そして数日後、シャアの元に医師から連絡が入る。
「お呼びだてして申し訳有りません。」
シャアは護衛のギュネイを伴い医師の元へと足を運んだ。
「いや、構わん。それでアムロの容体はどうだ?」
医師はシャアに椅子へ座る様に促し、幾つものレントゲン写真やCT画像をモニターに表示させるとシャアへと視線を戻す。
「この数日間、アムロ大尉の容体と後遺症について確認を致しました。骨折などの外的な損傷箇所については順調に回復してきております。肺の機能も大分回復し、呼吸器も外す事が出来ました。」
医師はレントゲンやCTの画像を指差しながら丁寧に説明していく。
「それで、後遺症の方はどうなのだ?」
その問いに、医師は一呼吸置くとゆっくりと話し出す。
「手足の麻痺については問題有りません。ただ、左足についてはかなり酷い複雑骨折でしたので多少足を引きずる様になるかもしれません。」
シャアは少し眉を顰めたが歩けない訳ではないと言う医師の言葉に少しホッとする。
「そうか…。視力や聴力についてはどうだ?」
「それが…」
医師は膝の上で手を組み、小さく深呼吸をする。その仕草にシャアの瞳に不安が過ぎる。
「ドクター?」
医師は問い詰めるシャアに視線を向けると、その重い口を開く。
「視力を…失っております。」
「視力!?」
「はい。視神経や眼球には異常は見受けられませんが、脳に受けた衝撃により、何らかの原因で視力を完全に失っております。おそらく、光の明暗すらも分からないかと…。」
医師のその言葉にシャアはショックを隠せない。
ーーあの美しい琥珀色の瞳はもう何も映さないのか?自分を見つめてくれる事は無いのか?
そして、彼はもう二度とモビルスーツに乗る事は出来ないのか?あの、美しい軌跡を描いて駆る白いガンダムに乗る姿は…。

シャアはその事実にただ呆然となる。
言葉を失い、しばらくは医師の言葉も耳に入らなかった。
何度目かに掛けられた医師からの声にようやく我を取り戻す。
「ああ…すまない。」
「総帥…。」
敵とはいえ、長年剣を交えた好敵手の状態に酷く狼狽えるその姿を目にした医師は二人の間にライバル心や憎しみだけでは無い、絆の様なものを感じた。
立場が違っていなければこの二人は同志として手を取り合っていたかもしれないと…。いや、実際にグリプス戦役時は志しを同じくして同胞として戦っていたという。何がこの二人を隔ててしまったのか…。
医師はそんな事を考えながら、今後のアムロの治療についてシャアに説明していく。
「意識は大分はっきりとしてきました、一日あたりの覚醒時間は少しずつ長くなっています。骨折の方も左足以外は大分回復してきましたのでそろそろリハビリを始めていきます。」
「…話は…できるか?」
シャアの問いに医師はそっと頷く。
「簡単な会話ならば…出来ます。ただ、記憶が少し混乱しているらしく、まだご自分がなぜここにいて、どういう状態なのかはっきりと分かっていない様子です。」
「そうか…。今から会いたいのだが大丈夫か?」
シャアの言葉に医師は分かったと頷くと病室の看護師へと連絡を入れる。
「今、ちょうど目が覚めているようです。」
医師は席を立つとシャアとギュネイをアムロの病室へと案内する。
コンコンとノックをすると中から返事をする声が聞こえてくる。
微かだったが、それは間違いなくアムロ・レイのものだった。
「失礼します。アムロ大尉、具合は如何ですかな?」
病室に入ると、ベッドを少し起こして枕に背を預けるアムロがゆっくりと医師の方へ顔を向ける。
「大…丈夫…です。」
医師の問いにアムロはゆっくりと答えるがその視線は焦点があっておらず、ただ瞳が揺れていた。
そして、視線は遠くを見たまま、ベッド脇の棚の辺りを何かを探す様に手を彷徨わせる。
「何かをお探しですかな?」
「あ…水を…。」
水差しを探すその仕草に、本当に目が見えないのだと、シャアはその事実を目の当たりにして少し動揺する。それは後ろに控えていたギュネイも同じだった。
医師は水差しを取り、アムロの口へと運ぶと、ゆっくりと口へ含ませる。
アムロの喉がゴクリと上下する様をシャアはじっと見つめる。
その仕草に、何やら不穏な心情が心を過ぎり、それを打ち消すため必死に拳を握り締めた。
「ありがと…ござい…ます…。」
ゆっくりと言葉を紡ぎながら少し笑顔を浮かべてお礼を告げるアムロに庇護欲の様なものが込み上げる。
そして、頭や身体中に巻かれた包帯が痛々しいが大分回復した姿にホッと息を吐く。
その気配を察したのかアムロがこちらへと顔を向ける。
「誰か…いるんで…すか?」
その言葉にドキリとすると、小さく息を吐き、足をアムロの元へと向ける。
作品名:I belong to you. 作家名:koyuho