BRING BACK LATER 12
胸を張って言った凛に、アーチャーは呆れたように片眉を上げた。
「まったく君は……、本当に最強で、最高のマスターだ。もっと長く君といたいと思ってしまう……」
自嘲の笑みを浮かべてアーチャーは目を伏せた。
「いたっていいわよ。再々契約くらいしてあげるわ」
軽口を叩く凛に、アーチャーは小さく首を振る。
「いいや。私はもう、ここにはいられない。ここにいる意味も、目的も見出せない。理由がなければ、私は動けない性質でね」
「そんなこと……知ってるわよ」
凛は少し辛そうに笑っている。
「それに、士郎との日々が詰まったこの世界に存在することは……、私にはやはり苦しいだけだ……」
「ええ、そうね」
「頑張っていくよ、私は、私の選んだ道を……」
「……頑張らなくっていいわよ、適当に息抜きしながらで。でないと、シロウみたいになっちゃうわよ?」
少し目を瞠ったアーチャーは笑う。
「ああ、そうだな……、あれは酷かった……」
薄れていくアーチャーは笑っている。
『凛、達者でな……』
透けていくアーチャーが浮かべた笑顔は、泣き顔にも見えた。
「アーチャー……」
凛のサーヴァントは日を置かず、二体とも消えた。
あとには、切なさと、悔しさと、諦めだけが残っていた。
「私、あんたたちが笑い合うのを見てるのが、とっても好きだったの……」
俯いて呟き、凛は顔を上げる。
茜色の空に、もう太陽はなかった。
BRING BACK LATER 12 了(2017/5/1)
作品名:BRING BACK LATER 12 作家名:さやけ