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電撃FCI The episode of SEGA 3

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 コインが再び美琴の手元に落ちてきた。美琴は前方にコインを弾き出す。
「ふんっ!」
 美琴の親指に打ち出され、強力な磁界の中に入った瞬間、コインはローレンツ力を受けて爆発的に加速した。
 加速したコインは、瞬時に速度が音速の三倍に達し、空気抵抗の摩擦によって強烈な熱量を持つ、鋼鉄をも簡単に撃ち抜く弾丸と化した。
 超高速で撃ち出されたコインは、プラズマを伴い、高熱を示す真っ赤な光を放って一気にサヤを貫いた。
 美琴の二つ名にして、代名詞とも言える彼女の能力最大の技、超電磁砲(レールガン)が見事に炸裂した。
 通常の物理法則であれば、音速の三倍ものスピードで撃ち出されたコインに、生身で当たろうものならば体が木っ端微塵になっていてもおかしくないが、サヤは生き延びていた。
 美琴の超電磁砲(レールガン)が通った後は、かなりの熱量を持ち、熱光線を放つ弾丸となったコインが通って行ったことを如実に表すように、抉れて焦げ、煙が上がっている。
 その煙の先に、サヤは倒れていた。
 服が汚れていたが、怪我どころか、かすり傷一つすらも負っておらず、五体に以上はない。
 しかし、美琴の最強技を受けただけあって、大きくダメージを受けているのが、体力のバロメーターを見るまでもなく感じとることができた。
「ふふん、どうよ……!」
 美琴は倒れ込むサヤに不敵な笑みを向ける。
「まだまだ、ね……」
 サヤは体を震わせながらも立ち上がる。
「ムリしてるのが見え見えね。まあ、私の超電磁砲(レールガン)を受けてまだ立ち上がれるなんて、この世界のルールとは言え大したものね」
「ふふ、あまり私をなめないでもらえるかしら? 私は帝竜との戦いでこの身をもってドラゴンのレールガンを受けたことがあるのよ。あなたの超電磁砲(レールガン)なんか比べ物にならないくらい、とんでもないやつをね……!」
 サヤはばさっ、と髪をかき上げた。そして左に編み込んだ髪を纏める紫のリボンに触れた。
「美琴、あなたと戦っていると、あの日を思い出してしょうがないわ。たくさんの犠牲を出して、大切な人を失った、あの悲しい作戦行動を……」
 それは、サヤがムラクモ十三班に配属され、サヤにとって作戦の始まりから行動した、初めての帝竜討伐作戦であった。
 電気を操り、レールガンを使って東京の一部を爆破させるほどの帝竜、ジゴワットとの激しい戦いである。
 自衛隊を捨て駒としか見ていない、人権を完全に無視したムラクモ機関の総長、日暈ナツメの人間性も明らかとなった、サヤにとっては忌むべき記憶だ。
 ムラクモ機関のベテランで、サヤにとって大先輩であった十班班長、ガトウが、この作戦の開始直後に死んでいった。
 彼はムラクモ機関に配属され、右も左も分からないようなサヤに、機関の人間とはなんたるものかを教わった。そして同時に、ナツメの作戦指揮に疑念を持っていたサヤに、戦争とはどういうものかも教えてくれた。
 始めはサヤは、ガトウもナツメと同じ考え方をするのか、と彼を少し軽蔑していた。上官の命令に従い、時には自ら死んでいく事も迷ってはいけない、という言葉に納得することなどできるはずもなかった。
 しかし、ガトウの最期は、ナツメに洗脳されたものではなかった。
 特効していく自衛隊を止めようと、でしゃばってしまった部下を救うべく、自らを犠牲にして死んでいった。
 ガトウは死の直前、サヤに一言告げていった。自分の意志を持って、後悔しない道を選べ、と。
 死にゆくガトウに後悔の念はなかった。上官の命令に従うのではなく、自らの意志で死んでいく事に、彼は喜びすらも感じていた。
 そして最期の言葉を残すと、残された力を振り絞ってサヤに愛用のバンダナを託した。サヤの頭で揺らめくリボンは、彼の意志を継ぎ、決意を込めて加工したものだった。
「……私達ムラクモ機関のしてきたことは、許されてはいけないものだとは思ってる。でも、私には私の意志がある。ガトウさんが教えてくれた大切な思いがある……!」
 サヤは刀を構え直す。
「私は、絶対に負けない! 美琴、私の意志、あなたに知らしめてあげるわ!」
「サヤ……」
 サヤの話を聞き、美琴に哀れみの感情が浮かぶ。
 しかし、サヤの言う意志、は美琴にもある。
 幼い子供で、疑うことを知らなかったとは言え、汚い大人の言うがままに自らのDNAマップを提供してしまった。
 そのせいで美琴のクローンである妹達(シスターズ)が造られ、絶対能力化計画(レベルシフト)が行われ、一万人以上のクローンが虐殺されることになった。
 美琴もまた、命を救われた身である。
 これ以上の妹達(シスターズ)が殺されないよう、オリジナルである美琴自身が死ぬことで計画を阻止しようとしたとき、ある少年に助けられた。
 自己を犠牲にして全てを終わらせようとしていた美琴にとって、彼の言葉はとても温かかった。
 そして、絶対能力化計画(レベルシフト)は無になり、実験にて殺害されるはずだった妹達(シスターズ)は生き延びた。
 以降、美琴は妹達(シスターズ)を文字通り自らの妹と考え、彼女らを傷つけることを決して許さないようになった。
 これが、美琴の意志である。
「私にもあんたの言うような意志があるのよ! だから負けられない!」
 美琴は強い闘志を持ち、まっすぐにサヤを見据えた。
「おしゃべりはこの辺にしておきましょう。私が必ず勝って見せる!」
 美琴は決意を新たにすると、全身にバチバチ弾ける電気を帯電させた。
「望むところ! あの人のためにも私は絶対に負けないわよ!」
 サヤは構えたまま、いつでも動けるように体勢を整える。
「行くわよ!」
 二人が最後の戦いの決着をつけようと、互いに動いたその時だった。
作品名:電撃FCI The episode of SEGA 3 作家名:綾田宗