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Lovin' you after CCA5〈前編〉

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Lovin you after CCA 5


「アムロさん、おはようございます。お加減は如何ですか?体温と血圧を測りますね。」
看護師がアムロの指にセンサーを着けて計測処置をしつつアムロの顔色やバイタルを確認する。
「…おはよう、ハンナ」
双子を出産した翌日、アムロは出産と心臓に負担を掛けた事による疲労でベッドから起き上がれずにいた。
「少し熱がありますね。血圧も低めです。今日は安静にしていて下さいね。あとで体を拭いて着替えをしましょう。」
「ありがとう、ハンナ。」
アムロの担当であるハンナと呼ばれた看護師はアムロよりも少し若いけれどしっかりした女性だった。
「そろそろ胸が張ってきましたか?」
胸を押さえながら返事をするアムロにハンナが優しく問い掛ける。
「うん…。そうだね。授乳出来るかな?」
「そうですね…、一度ドクターに確認します。出来ればお乳をあげたいですものね。」
優しく微笑むハンナに、つられてアムロも笑顔になる。
「うん。ありがとう。」
アムロはふぅと息を吐き胸に手をあてる…。
正直、無事に出産出来る自信は無かった。
けれど、シャアや子供達を残して死ぬ事は絶対に出来ないと自分を奮い立たせて出産に臨んだ。
結果、心肺停止の状況に陥ったものの、セイラの心臓マッサージやカミーユとシャアが生と死の狭間にいた自分を迎えに来てくれたお陰で命をとり止めることが出来た。
そして、双子も無事出産する事が出来た。
ただ、双子ということもあり、体重がそれぞれ2000g弱だった為、今はMICUの保育器に入っている。
ギリギリまで側にいてくれたシャアはかなり駄々を捏ねていたが、執務の為ナナイに総帥府へと連行…いや、連れて行かれてしまった。
最近テロ事件が頻発していて、先週からその対応に追われていたのだ。

「総帥が仕事に行ってしまって寂しいですか?」
点滴を換えながらハンナが問うのをアムロは顔を真っ赤に染めて否定する。
「そ、そんな事!…」
しかし、アムロの瞳を覗き込みながら微笑むハンナにふうっと溜め息を吐くと降参する。
「…ちょっと…だけね。まだ…自分が生きてるのが信じられなくて…あの人に生きているって実感を感じさせて欲しいのかも…。」
アムロのその言葉に一瞬ハンナが辛そうな目をする。
「そうですね…。」
「ハンナ?」
「さぁ、点滴の交換も終わりましたし先生に授乳の件を確認して来ますね。」
ハンナは笑顔を見せるとアムロに向き合う。
「あ、うん。よろしく。」
ハンナが一瞬見せた表情が少し心に引っかかったが直ぐにいつもの笑顔に戻ったのでアムロもハンナに笑顔を返した。

ドクターの許可を貰ったアムロはハンナに車椅子を押してもらいながらMICUの双子の元に行き、そっと小さな我が子を胸に抱く。
「ふふ、小ちゃいなぁ」
柔らかい頬を指でさすりながら優しい表情を浮かべる。
まず一人の口に乳首を含ませ授乳を始めた。
小さいながらも必死に母乳を飲む我が子に愛しさが込み上げる。
「無事に産まれて来てくれてありがとう…」
「そう言えばお名前はもう決められたんですか?」
ハンナがアムロの肩に上着を掛けてくれる。
「あ、ありがとう。名前は…実はまだなんだ。シャアが考えてくれてるみたいなんだけど…。」
「ふふ、素敵な名前を付けて貰えると良いですね。」
「そうだね。」
二人の授乳を終えた頃、アルとカミーユがアムロの元にやって来た。
「アムロ、体調はどう?ベビー達は元気そうだね。」
お腹が膨れて眠りにつく双子を見つめてアルが微笑む。
「うん。もう大丈夫だよ。ありがとう」
「アムロさん、まだお熱があるでしょう?ウソ言っちゃいけません。」
ハンナに指摘されてアムロが肩をすくめる。
そのアムロの首に手をあてアルが「うーん」と唸る。
「結構熱あるよ。今朝の検温時より上がってない?」
「え?そうかな。自分じゃ良くわかんないや。」
「赤ちゃん達と一緒にいたい気持ちは分かりますが、今はご自分の身体を第一にね。双子ちゃん達は私達が責任を持ってお預かりしますから!」
ハンナに言われ「は~い」と頷く。
「あれ?クワトロ大尉は?」
カミーユの問いにアムロが苦笑まじりに答える。
「ああ、さっきナナイ大尉に引きずられて総帥府に帰ったよ。」
「もう!こんな時くらい側にいたら良いのに!」
怒るカミーユにアムロが微笑む。
「ふふ、ありがとう。カミーユ。でも大変な時だから…。」
「ああ、例のテロ事件ですか?」
「うん。」
「でも、犯人達の要求とか言い分を聞いてると地球連邦政府こそが標的だと思うんですけど何でネオ・ジオンでテロなんて…」
彼らの訴えは弱者を虐げる組織に対する恨み。
「過去にジオン軍はコロニー落としとか毒ガス攻撃とかしてるからね。」
「でもそれはザビ家が支配してた頃とかハマーン・カーンが行なった事でしょう?」
「いや。ネオ・ジオンもラサに5thルナを落としてる。」
「でもあれはちゃんと事前に勧告して避難出来る時間を与えてたし、連邦政府がきちんと対応していれば民間人が巻き込まれる事は無かった!」
「それは言い訳だよ。連邦政府が自分たちだけとっとと逃げる事は想定出来た筈だ。それにあれを阻止できなかった私たちにも責任がある。」
「アムロさん!それだって、連邦軍がロンド・ベルに援軍をちゃんと出していれば!」
「今更言っても仕方がない。被害者が出た事に変わりがないよ。それはシャア自身も解ってる。だから真剣に向き合おうとしてるんだ。」
そこまで言ってアムロの身体がグラリと揺れる。
「アムロさん!」
咄嗟にカミーユがアムロを支える。
そして、その細い身体にドキリとする。
「さぁ、無理しないで。部屋に戻りましょう。」
ハンナに促され車椅子を押される。
「あ、ちょっと待って。」
アムロはハンナを止めると双子へと視線を戻す。
アムロの意図を感じ取ったハンナがアムロに一人ずつ抱かせると、アムロは優しく抱きしめ頬をすり寄せる。
「また後でね…。」
双子を保育器に戻すとアムロはMICUを後にした。
「…アルフレッドさん…、アムロさんの体調は大丈夫なんですか?」
その問いにアルが小さく溜め息吐く。
「正直あまり良くはないね。出産の疲れもあるけど実験の後遺症が思ったよりも酷くてね。今回のは本当に奇跡だよ。これから少しずつ体力を付けて心臓の負担を減らすようにしないと…」
「それから…、さっきの看護師は以前からここに?」
「え?ハンナの事?ああ、半年くらいかな。でも身元は確かだよ。彼女は元々連邦の軍事病院に居たんだ。アムロの看護を任せるのにジオンの人間だとやっぱり…ね。もしもの事があるといけないからその辺りは気をつけているよ。」
「…そうですか…」
カミーユが少し目を伏せて考え込む。
『さっき彼女から一瞬だが悪意のようなものを感じた。気の所為だろうか…。』
「何か気になる事が?」
「いえ、僕の気の所為かも。気にしないで下さい。」
そう言って考え込むカミーユをアルが見つめる。
その視線に気付いたカミーユがビクリと肩を揺らす。
「な、何ですか?アルフレッドさん」
「いや、そう言うところ何処と無くアムロと似てるなって思って。」
「そう言うところ?」
作品名:Lovin' you after CCA5〈前編〉 作家名:koyuho