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GOAL

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これは、意外と大変だなぁ……

 目まぐるしい忙しさと頭脳労働のおかげで、今の今まで幸いにも忘れていたが、いざ意識すると、思い出したかのように痛みだす。昨日被疑者と対峙し、そして撃たれた左腕。
 痛みはまだいい。痛み止めを飲んで少し……そう、少し我慢すれば、なんとかなる。時間さえ経てば治るのだから、待つしかない。問題は、大袈裟に腕を固定されてしまったことで、一人ではできない物事が多く発生してしまったということ。

 たとえば、今。
 徹夜仕事のお供に、缶コーヒーでも買って目を覚まそうとしたわけだが……カフェスペースの自販機前で、私は今こうして立ち往生している。
 カバンを床に置き、財布を取り出したところまではよかったが、その先、小銭を取り出すことが、片手ではどうしてもできなかった。

 どうしたものかと、右手で掴んだ財布を四方から眺めて格闘していると、後ろから荒々しく割り込むように、小銭投入口に手が伸びてくる。
「あ、すみません」
 私も好きじゃないな。買うものが決まってもいないのに、ずっと自販機の前を占領している人。私は別に決まっていないわけではないが……
 一旦その場を退こうとカバンを抱え、振り返ると——
「梶山……!」
 すぐ鼻先に、ついさっき解散号令をかけた管理官がいた。

 ……謝って損した。
 そもそも人が並んでいるのだから、少しくらい待つなり、声をかけるなりすればいいのに。こういうところ、絶妙に気が利かないよなぁ、昔から。

 梶山は無言で悠々とコーヒーなんかを買っている。こいつも徹夜か。
 みんなには仮眠を取れと言い残して真っ先に取調控室を出ていくくせに、自分はいつも寝ずに仕事をしている。隠しているつもりなのかもしれないが、そんなこと、みんな知っている。明け方に寝起きの目をこすりながら控室に戻ると、自然を装うかのようにぶっきらぼうに、円卓に資料が山積みになっているから。

「ほら」
「は?」

 目の前に、GOALが突き付けられる。
 ——GOAL
 私が今しがた買おうとして財布と戦っていた缶コーヒーだ。

「そんな腕じゃ、ろくに飲み物も買えないだろう」

 ……まさか見ていたのか。趣味悪いな。
 それにしても、どうしてこいつは、こちらが素直に感謝したくなるような言動を取れないのだろうか。いつだって梶山の親切は身勝手だ。「何が飲みたい?」と一言聞いてくれれば、私だって「ありがとう」と言えるのに、乱暴に割り込んだ上、コーヒーだって勝手に決めてしまう。それだけでは飽き足らず、嫌味の一言まで付け加えてくる。
 私に気を使わせないためなのか、なんなのか。別に今更梶山相手に気後れも遠慮もないのだから、いちいちそんなことをしてくれなくてもいいのに。

 梶山はもう1本同じ缶コーヒーを買うと、カフェの座席へ向かい、当然のように私にも促す。一人で考えたいことがあったのに。でもこれで、一人で悩まなくて済む。

作品名:GOAL 作家名:みやこ