誓いのキスを
それでも、菊は笑った。目を細めた所為で、また新しい雫が垂れる。それを親指で追ってみても、次から次から滴るのだからとても間に合わない。
「アーサーさん」
菊の手が伸びる。白魚のような指が俺の目を拭う。少し視界がよくなった。
「お慕いしています」
笑うような泣くような顔をして菊はそう言った。それはいつも俺が思い出していた笑顔と同じ色を帯びていた。
隙間なんて無くなるように、より強く抱き締めてキスをした。何度も何度も、飽きず繰り返す。
そのまま力を抜くと、菊ごと敷き布団の上に落ちた。菊の頭に引っ掛けたままだったシーツがずれて俺にもかかる。白く狭い世界、二人きり。
無くしたパーツが埋まるような気がした。傷付いて直らないものは補えば良い。そうして新しいより強固なものを作れば良い。二人分の積み木で、二人分のてのひらで。