Lovin 'you after CCA 5 〈後編〉
そして、人質に紛れていたテロリストまでも取り押さえられているのを見てリーダーの男、ケインズ中尉が驚きに目を見開く。
「いつの間に特殊部隊を!?それに何故だ?何故人質に仲間が混じっていると分かった?!」
その声にシャアがふふんと笑う。
「君が相手にしていたのは幾多の死線を潜り抜けたニュータイプの戦士達とニュータイプの卵だ。」
アムロにジュドー、そしてカミーユとライラがシャアの隣に並ぶ。
そこに、総帥府から駆け付けたカイルが駆け寄った。
「お父さん!ミッション完了です。」
にっこり笑うカイルの頭をシャアが撫ぜる。
「紹介しよう。我々の優秀なブレインだ。」
「そんな子供が!?」
驚愕の表情を浮かべ、カイルを見つめる。
と、そこに拘束されたブラウン大佐が連行されて来た。
「やはりあの時の子供か!まさかシャイアンを脱走した後、出産していたとはな!」
アムロを見てブラウンが嫌な笑みを浮かべる。
「もしもあのまま研究所で子供を出産したら、それはかつて殺し合いをしたシャア・アズナブルとの子供だと伝えて、お前が絶望する姿を眺めるつもりだった。それがどうした?まさかその宿敵と出来るとはな!」
高笑いをするブラウンをアムロが睨み付ける。
「しかし、ニュータイプはゴキブリ並みの生命力だな。実験で何度も心臓に負荷を掛けて鼓動を止めても直ぐに鼓動を始めて生き返る。しかし、それで大分心臓が弱っていたから双子の出産など絶対に無理だと思っていたが、またもや命を取り止めた。それにお前の戦績!まさに連邦の白い悪魔だ!こんな化け物を相手にして普通の人間が敵う訳がない。」
悪態をつくブラウンにアムロが拳を握り締める。
しかし、それを押し留め、代わりにカミーユとジュドーがブラウンを殴りつけた。
「黙れ!!お前達みたいな奴がいるから戦争は終わらない!!ニュータイプだって人間だ!痛みだって感じるし涙も流す!アムロさんをどれだけ苦しめたら気が済むんだ!!」
カミーユが肩で息をしながら叫ぶ。
ジュドーはそんなカミーユの肩を叩いて落ち着かせる。
「総帥はお前たち連邦がメチャメチャにした世界を正そうとしているんだ!連邦とかジオンとかニュータイプとかオールドタイプだとか関係ない。みんなが幸せになれる世界だ。」
ジュドーの言葉を聞き、シャアはアムロの肩を抱き寄せ、カメラに向かって話し出す。
「この映像を見ている全ての人々に聞いてもらいたい。私はかつて、地球の引力に引かれる人々を粛清し、地球の汚染を食い止める為だとアクシズを地球に落とそうとした。今思えば人が人を粛清するなど、なんとおこがましい事だったのだろう。そんな愚かな私を、アムロは身体を張り…命を懸けて止めてくれた。」
隣に立つアムロを見つめ、肩を抱く腕に力を込める。そんなシャアをアムロも優しく見つめ返す。
「ラサに5thルナを落とし、多くの犠牲を出した事を心から詫びたい。被害者の遺族にしてみればこんな言葉は何の慰めにもならない事は分かっている。」
そっと、二階にいるハンナを見上げる。そんなシャアをハンナも見つめ返す。
「私の命で償えと言われるかもしれない。しかし、それでは何も変わらない。だから、私はこの命を懸け、隣にいるアムロと共に人々が全て幸せに生きられるように尽力したい。」
この配信はスウィート・ウォーターのみならず、各コロニーにも配信されるよう、総帥府に残るナナイが指示をしていた。
「しかし、私たちの手だけでは難しい。だから、この配信を聞いた全ての人々にお願いしたい。私たちに手を貸して欲しい。そして、私たちと共に平和な世界を創り出していこう。」
その、シャアの演説に皆言葉を失う。
しかし、パチパチと手を叩く音が二階から聞こえてきた。
ハンナだ。ハンナは涙を流しながら手を叩く。そして、シャアとアムロに向かい深く頭を下げる。
それを見てアムロがハンナの元に駆け寄ろうとするのをシャアが留める。
よく見るとアルがハンナの肩を抱いていた。
その拍手につられるように次々と拍手が広がる。
それはその場にいない各コロニーにも広がっていった。
全てが片付くと、張り詰めていた緊張の糸が切れたのかアムロがシャアの胸に倒れこんだ。
「アムロ!!」
シャアの胸に身体を預けつつもカイルとライラを抱き寄せる。
そして、ハンナを見つめ双子達にも手を差し伸べる。それを見たハンナとアルが双子をそれぞれ腕に抱き、アムロの元へと連れて行く。
アムロはシャアの手を借り、両手で二人を抱き締めると、ポロポロと涙を流して頬をすり寄せた。
「よかった…。みんな…無事で良かった!」
「アムロ、よく頑張った。もう休め。」
アムロを労うシャアを見上げ、アムロは微笑むとそのまま意識を手放した。
次に目を覚ますと、そこはベッドの上だった。そして、その傍らにはアムロの手を握るシャアが居た。
「シャア…」
「気が付いたか?大丈夫か?気分はどうだ?」
心配気に見つめるシャアにそっと微笑む。
「大丈夫だよ…。気分も悪くない。」
「そうか…、良かった。」
身体を起すアムロをシャアがギュッと抱きしめる。
「あの時は…本当に肝が冷えた。ジュドー・アーシタとカミーユに感謝しなくてはな。」
いつの事かと思考を巡らし、ブラウンの部下が自分に銃を放った時だと思い出す。
「…ああ。うん。」
「あれ程無理はするなと言っただろう!」
グッとアムロの身体を引き離し、目を見て怒る。
「だって!あいつが貴方を傷付けようとしたから!!」
言い返すアムロにシャアから溜め息が漏れる。
「しかしだな…」
と、言い返したところで病室内にライラが飛び込んで来る。
「お父さん!お母さん!双子達の名前考えた?」
無邪気なライラを見つめ、シャアとアムロが視線を合わせる。
二人はクスリと笑い、ライラの頭を撫ぜる。
「今回の一番の功労者はライラだな。」
「うん、そうだね。」
笑う二人にライラがキョトンとした表情を浮かべる。
そんなライラに微笑み、シャアが口を開く。
「ライラ…、双子の名前は…」
end
その後、ライラが今度は「カミーユと結婚する!」と言い出したとか言わないとか。
アルとハンナがくっついたとか…。
双子の名前はまだ考えてません!希望とか未来とかそんな意味を込めた名前にしたいけど思いつかない…。誰か考えて下さい!
作品名:Lovin 'you after CCA 5 〈後編〉 作家名:koyuho