甘い水の中で3
「酷いな…。」
「だからこそギュネイは今の世の中に不満を持ち、それを何とかしようとしている。」
「……」
「君が見てきた強化人間達は皆、悲しい最期を遂げたかもしれない…。しかし、ギュネイや若い者たちは未来の為にニュータイプ能力を強化している。」
「…でも…、戦争に使うんだろ?」
「納得いかないか?」
シャアから視線を逸らしシーツを握る。
「昔…貴方に、俺はニュータイプの有様を見せ過ぎたと怒られた…。その時は貴方の言葉の意図が分からなくて、何が悪いんだと腹が立った…。だけど…。」
小さく溜め息を吐くと、寝返りをうってシャアに向き合う。
「ニュータイプを…戦争の道具たる存在だと世の中に知らしめてしまったのは間違いなく俺だ…。そんな俺に貴方を責める資格は無い。」
アムロはギュッとシャアしがみつく。
「アムロ…」
「俺に出来ることは…ギュネイや若いニュータイプ達が戦場で生き延びられるように教える事くらいかな…。」
シャアはそんなアムロを抱き締め返し、その耳元で囁く。
「それだけじゃ無い。君には私をずっと側で支えて欲しい。そして、私が誤った方向へ行かない様に導いてくれ。私には君が必要だ。」
言葉と共に、触れた肌からアムロを切望するシャアの思惟が伝わって来る。
「…前に言っただろう?貴方のものになっても良いって。貴方が求める限り俺はずっとそばにいるよ…。」
「ふふ…。ならば一生私のものだ。君を手放すつもりは毛頭無い。」
アムロの頬を両手で包み込み、丸みを帯びた唇に己のものを重ねる。
「それじゃ、この監禁ごっこももう終わりで良いんだよな?」
「……」
「おいっ」
結局、シャアから「yes」の回答は貰えないままギュネイの指導日が訪れた。
「おい!シャア!俺の服はどうした!?」
シャアから渡された服を着てアムロが叫ぶ。
「なかなか似合うじゃないか。」
アムロのそれはネオ・ジオンの黒い制服。
シャアの側にずっといるとは言ったが、やはりジオンの制服を着るのは抵抗がある。
鏡に映る姿を見ながら、アムロは盛大に溜め息を吐く。
しかし、あまりにも嬉しそうなシャアにそれ以上は何も言えなくなってしまった。
「はぁ、ブライトになんて言おう…。」
行方不明になった自分を心配しているだろう戦友の顔を思い浮かべ、更に溜め息が出る。
「ああ。今度、連邦の高官と会う予定がある。ブライトも呼んである。君にも同席して貰うからその時に報告すれば良い。」
「げっ」
苦労性な戦友が、その場で卒倒しない事を祈るアムロだった。
end