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ギルマシュー小説その1

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大人しい奴ほど身のうちに溜め込んでいた想いというのは凄まじいようで。



「僕、ギルベルトさんのことが好きです」
「………、はっ?」

今この事実を身をもって体感していた。



突然の、本当に前触れも感じさせないくらい突然に、目の前にいるまだあどけなさが残る、こちらににこにこと笑顔を振りまいている男に告白を受けた。ちょいと衝撃が強すぎて思わず頬張っていたホットケーキが口端からすり抜けていってしまった。落ちた切れ端は皿へと着地し、べちょりとシロップまみれになる。…俺様ともあろうものがこんなことぐらいで不意打ち食らって面食らってるだなんて、情けねぇ…!!


でも仕方がないじゃねーか!目の前にいるこいつは、まるで「今日もいい天気ですね」と気軽に挨拶するぐらい自然な動作でとんでもないことを言ってのだから!反応が遅れたのは俺のせいじゃない!!…はずだっ!!!




「な、急に何言ってんだよお前は…っ!!」

手にしていたナイフとフォークを雑に机に置き、慌てて言い返した。つい乱暴な声になってしまったのは仕方ない。

「えと、僕変なこと言いました…?」

不思議そうに小首を傾げるのはこいつのクセだと思う。そう長くはないが、ここ最近こいつの家に通いづめてその度目の前の相手と顔を合わせているうちにわかってきたことだ。

「変…っつーか、いや、ぶっちゃけありえねえっつーか」

なんで俺なんだよ、とか。こいつに好かれる理由がわかんねえ。そんなに親しくしてるわけではないし…と思う。

「ありえなくなんかありませんよ。

  …僕貴方のことが好きなんです」

さっきまでのほわほわした顔は隠れてしまい、今こちらを見つめる目は真摯なものそのものだ。矢車草の深い蒼の瞳が真っ直ぐにこちらを射抜く。
これはぶっちゃけ…

「じょ、冗談だろ…?」

「冗談でも嘘でも、誰かの悪戯、作為、悪意でもありません」

きっぱりと言い切る姿に、だろうな…とがっくり肩をおとした。
どう見ても目の前の人物はちゃかしている様子など全く見えない。それどころか本気であることがわかった。

真剣に気持ちを伝えるマシューに俺はまだ余裕ある顔を伏せた。
ふーっと一つため息をつき、顔を引き締める。相手がこう真面目にくるなら、こちらもそれ相応の対応で臨まないと筋じゃねえだろ。




「なあマシュー」

「はい」





「俺はさ、――…フェリちゃんが好きなんだよ」



――…言ってしまった、誰にも告げたことのない俺の本当の気持ち。



ああ、そうなんだ。俺は弟の恋人であるフェリシアーノ・ヴァルガスが好きなんだ。友愛とか親愛とか、そんな生ぬるい気持ちではなく。勿論深い意味で…、だ。俗っぽく言やぁ、抱きたいという気持ちで。そのまま俺のモノにしたいと情念をもつくらいに。
しかし、先ほど前置きしたとおり、その俺の想い人は…、まぎれもなく弟の恋人である。この時点で俺の気持ちは色々アウトだ。だってそうだろ?切望している相手は既に弟のもの。それを奪おうとするなんて許されないし、第一に俺が俺を許さないだろう。
そりゃあはじめは結構葛藤したぜ…。どんな手を使ってでも欲しいものは手に入れた俺が、どうあっても手をつけてはいけないもの。何故か…?俺は二人とも愛してるからな。どちらかを選んでも、その先には破滅があるって気づいていたんだよ。今までの関係が壊れて、失くすのは…はっきりいってキツい。
だからこの想いは外に出していねえ。これからもするつもりはねえ。…多分な。よくつるんでいるアイツら二人は多分感づいているだろうが、特に口だししてこない。それには、…正直感謝している。

隠し通せる自信はあった。ただ、想い続けるのは罪ではないと…自己弁護をしてるけどな。
報われないことくらいわかってる。だけど、どうにも気持ちに嘘はつけない。それだけ俺はあの子に惚れているんだ、どうしようもなく。




だから、お前の気持ちには応えられない…と続けようとすると、




「知ってます」







………………、いまこいつなんっつった…?


「貴方がフェリシアーノさんが好きってことは、僕ちゃんと知ってます」












………あ~、マシュー…。

はい?

俺様思考の許容量超えそうだわ。

ガックリ白塗りのテーブルに肘をつけ掌で自身の顔を覆う。情報量が半端なくて、マジ思考力がパンクしそうである。


ぶつぶつ考えを翻していると、軽やかで小さくて、鈴のような繊細な声が。


「僕、フェリシアーノさんが好きなギルベルトさんが好きなんです」

あまりの言葉に勢いよく顔を上げる。そこには眦を柔らかく細め、唇を優しく横に引いて嬉しそうにはにかむマシューの姿があった。




「――フェリシアーノさんを想っているギルベルトさん、とてもカッコよくてとてもユニークで…。でも一生懸命で…。時折切なそうに彼の後姿と貴方の弟さんであるルートヴィッヒさんを見つめる姿に…、僕、とても惹かれてしまったんです」

はじめは、そうですね、貴方が僕のメイプルシロップを褒めてくれたことから始まったんです。

たまたま…なんですよね?僕の家近くを歩いていたギルベルトさんと会って、その時貴方はなんだかやさぐれてる様子で。そんな姿で遭遇した貴方に僕はなんとかしてあげたい、って衝動的に思ったんです。――正直に言うと、あの時は同情してたんです。やたら空回っている姿に、一人やけっぱちに高笑いしている姿に。
…僕も似たような経験があるから…。ちゃんと自己主張しようと思っているのにうまくいかなくて、一人落ち込んでいたりして。僕の片割れであるアルばかりが目立っていて、誰も僕のことを見てくれなくて…。今ここで言っちゃうんですけど、辛かった。


それからギルベルトさんのブログで僕のメイプルシロップが美味しいって、幸せになった!!って公開されて。…あ、ギルベルトさんのブログ、読者の方が多いんですね!分けてほしいって、いろんな人が訪ねてくるんですよ!僕嬉しくて!!その節ではありがとうございます!!

深々と頭を下げるさすがに恐縮しちまうじゃねえか…!!

あれから定期的にメイプルシロップをもらいにくる貴方がいて。ある日偶然僕が焼いていたホットケーキを食べた貴方は「それも美味ェな!!」って絶賛してくれて…。

それから貴方からもらった『栄誉賞』がとても誇りに思えて…。






――…気がついたらいつも貴方を目で追ってる僕がいました。




近くにギルベルトさんがいるんだ!ってわかった時は身体が変調をおこしたみたいに胸が高鳴ったし、貴方のそのクリムゾンレッドの瞳に僕が映るってだけで嬉しく思いました。僕を見て、言葉を交わして。手渡したメイプルシロップ片手に「ありがとなッ!」って笑った貴方の顔に見惚れて、顔が赤くなった時はしばらく熱がひかないくて。アルに「風邪でもひいてるのかいっ?!」って彼らしくなく心配されちゃいましたよ。


些細な仕種を見るたび記憶していって、あんなクセもあるんだ、って意外に思ったりして…。




そしてそのうち、