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Lovin 'you after CCA 6

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大きく溜め息を吐くとポケットから記憶媒体を取り出しシャアに手渡す。
「これは?」
「カイルとライラの小さい頃のアルバムデータです。貴方の事だから二人の小さい頃も側にいたかったとかウダウダ考えてるんだろうなと思って持って来たんですよ。」
「アルフレッド…。」
驚きに目を見開く大の男が少し可愛いと思うなんて僕も馬鹿だな。
「それで我慢して下さい。それじゃ、アムロ、退院について相談しに行ってくるよ。」
「あ、うん。ありがとう、アル。」
愛しいアムロに微笑んで病室を後にする。
少し歩いた先の廊下のベンチにフゥッと溜め息をついて座り込む。

「“好きでしょうがない 好きでもしょうがない”…か、これ何て曲の歌詞だっけ…。」
昔、この曲を聴いた時、まるで自分の事の様だと思った。
「“永遠のもう少し”という曲です。」
いつの間に現れたのかナナイ大尉が目の前に立っていた。
「ナナイ大尉!?」
「隣に座っても?」
「え、あ、はい。どうぞ」
ナナイはベンチに座ると小さく溜め息を吐く。
「そういえばあのハンナという看護師はどうしたんですか?」
「え?ああ、ハンナなら先週付けで退職しました。」
「退職?」
「はい。あ、彼女を咎めないでくれてありがとうございます。彼女も事件に加担していたのに…。」
シャア・アズナブルを恨み、テロに乗じてアムロと双子を連邦のニュータイプ研究所へと拐おうとした女性。
しかし、婚約者の死の真相を知り、双子を返して欲しいと懇願するライラに、涙を流しながら双子を返してくれた。
婚約者に対するその一途な想いがアムロと重なって、彼女を守りたいと思った。
しかし、彼女は婚約者をまだ忘れられないと…、彼の生きた証を自分の目で確かめたいと地球へと旅立って行ってしまった。
婚約者を想う心と…大きな悲しみを乗り越えようとする彼女の強い心が眩しくて、引き止める事は出来なかった。
正直、そんな彼女が少し羨ましかった。
「事件に加担していたとはいえ、彼女の婚約者の死に我々は無関係ではありませんから。それに彼女はお子様達を返してくれました。」
「そうだね…。」
悲しげに微笑むアルにナナイが疑問をぶつける。
「Dr.ウォレスは彼女とお付き合いをすると思っていました。」
「ええ!ナナイ大尉、どうして?!」
「彼女はどこかアムロ大尉と似ていますし、貴方が彼女を支えようとしているように見えましたので。」
鋭い指摘に言葉が詰まる。
「…、流石はネオ・ジオンのNo.2。素晴らしい観察眼ですね。」
「ありがとうございます。それで?違うのですか?」
「ははは、残念ながら振られてしまいました。まだ婚約者の彼が忘れられないそうです。」
「…そうですか…。」
しばらくの沈黙の後、ナナイが口を開く。
「今日の勤務は何時までですか?」
「え?あ、あと一時間程です。アムロの退院の日程を決めたら上がろうかと…。」
「それでは一緒に食事でも如何ですか?私も今日はもう何も予定がありませんので。」
「え!?」
「お嫌でしたら結構です。」
「とんでもない!!こんな美女のお誘い断るわけ無いでしょう!?」
淡々とした表情だった彼女が少し安堵した様な笑みを浮かべる。
そんな仕草にドキリとする。
意外と彼女は不器用なのかもしれない。そんな考えが脳裏を過ぎる。
「それじゃ、一時間後にロビーのラウンジで待ち合わせしましょう。良いですか?」
「はい。」
微笑むナナイに、応える様にアルも微笑む。
「ところであの曲ですけど…」
二人はベンチを立つとゆっくりと歩き出す。
お互いに、愛する人に“もう少し”という所で手が届かなかった。そして、それはきっと永遠に変わらない。
けれど、ゆっくりと新たな未来(幸せ)に向けて歩き出していく。


end




病室ではアルから手渡されたアルバムデータを端末に挿入してシャアとアムロが見ていた。
「ふふ、そうそう!この時、ピクニックでライラがサンドイッチを地面に落としちゃって大泣きだったんだ。それを見かねたカイルが自分のを半分こしてライラにあげたんだけど、ライラってば一個全部食べたいって言って結局カイルの全部食べちゃったんだ。」
「カイルはどうしたんだ?」
「後でこっそりアルのを貰ってた。」
「彼は良い父親をしていたんだな。」
「うん、そうだね。」
そして、アムロがカイルに授乳している映像を見つめてシャアが呟く。
「彼は本当に君のことが好きなんだな…。この映像から彼の気持ちが溢れ出ている…。」
シャアの言葉にアムロが目を伏せる。
「…、私はきっと…アルに酷いことをしてるよね…。彼の気持ちを知っていながら…それに応えることも出来ずに…長い間ずっと彼を縛ってる…。頼ってばっかりで何も返せずに…。」
「そうかもしれんな…。だが、それは彼が望んだ事だ。彼も君から離れる事が出来なかったのだろう…。」
「シャア…」
「しかし、彼には悪いが君を手放す事は出来ない。君は私にとって命も同じだ。」
シャアはそっとアムロを抱き締める。
「私は君と…子供達と未来を生きたい。アムロ、一緒に生きてくれるか?」
「シャア!バカ!当たり前だろ!」
ギュッと大きな背中を抱き締め返すアムロをシャアも優しく抱き返す。
「ダカールで君に手を振り払われてから、君にはずっと手が届かないと思っていた…。けれど今、この腕の中に君がいる…。この奇跡に心から感謝したい。」
「そうだね…」
二人が視線を合わせ、唇を寄せ合ったその瞬間、双子達が揃って大泣きを始める。
「あ…、まずは頑張って子育てかな。」
「…そうだな。」
「新米パパ頑張って!」
「私を誰だと思っている!私に出来ない事はない!」
「はいはい。それじゃ手始めにオムツ変えようか?」
「何!?いきなりハードルが高くないか!?」
「何言ってるの?赤ちゃんのお世話なんてミルクとオムツがメインだよ!ほら!教えてあげるから!」

双子の大泣きに、二人の様子を見に来た看護師がそっと扉を閉める。
「総帥がオムツ替えしてる!みんなに教えなくっちゃ!」
こっそり隠し撮りしたその光景を同僚達に見せるとあっという間に病院中に広まった。

それはまるで平和の象徴の様な光景だった。
まだまだ各地で戦争や紛争は後を絶たない。
けれど、赤い彗星と白い悪魔。壮絶な戦いを繰り広げた二人が今、当たり前の幸せを噛み締めている。
それは、長く続いた連邦とジオンの戦いに終止符を打った様な、そんな瞬間だった。


end

作品名:Lovin 'you after CCA 6 作家名:koyuho