損と嘘【スパコミ・サンプル】
「悪いんだけど、匿ってくれないかな」
その声色は一度聞いてしまえば、二度と忘れられぬモノだった。
その音色はまるで空気のように澄み、聞いた者を天上へと誘う旋律を持っていた。いくら楽器が優れていても奏者に技術が伴わなければ、その進化を発揮することはない。そういった意味では、この男は楽器としての声も、奏者として紡ぐ言葉も人を籠絡することに関しては優秀だった。
竜ヶ峰帝人はその忘れられない声が、自分の目前から降り注がれていることに驚いていた。一瞬、何が起こっているのか気付けず、ましてや、言葉の意味など理解できるはずもなかった。
彼の憧れる非日常へと連れていく声は、いつだってこの男の声をしている。
その内面とは不釣り合いな美しい男の声は、渇いた心に水のように浸透していく。彼の言葉が黒く棘があるほどに、その声色は美しく言葉を奏でる。
整っている顔立ちに、人好きする笑顔を浮かべながら、帝人の親友がこの男だけは近付くなと注意した男が玄関の前に立っていた。
あの事件の結末も始まりは、この自分の部屋からだった。その時訪れた一人は、彼、折原臨也だった。
その笑顔は安堵感よりも不安と、なにより好奇心を掻き立てられるモノだった。
その声色は一度聞いてしまえば、二度と忘れられぬモノだった。
その音色はまるで空気のように澄み、聞いた者を天上へと誘う旋律を持っていた。いくら楽器が優れていても奏者に技術が伴わなければ、その進化を発揮することはない。そういった意味では、この男は楽器としての声も、奏者として紡ぐ言葉も人を籠絡することに関しては優秀だった。
竜ヶ峰帝人はその忘れられない声が、自分の目前から降り注がれていることに驚いていた。一瞬、何が起こっているのか気付けず、ましてや、言葉の意味など理解できるはずもなかった。
彼の憧れる非日常へと連れていく声は、いつだってこの男の声をしている。
その内面とは不釣り合いな美しい男の声は、渇いた心に水のように浸透していく。彼の言葉が黒く棘があるほどに、その声色は美しく言葉を奏でる。
整っている顔立ちに、人好きする笑顔を浮かべながら、帝人の親友がこの男だけは近付くなと注意した男が玄関の前に立っていた。
あの事件の結末も始まりは、この自分の部屋からだった。その時訪れた一人は、彼、折原臨也だった。
その笑顔は安堵感よりも不安と、なにより好奇心を掻き立てられるモノだった。
作品名:損と嘘【スパコミ・サンプル】 作家名:かなや@金谷