二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

You can change your destiny.

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
You can change your destiny.


アクシズショックと呼ばれた出来事から約3年が経過した。
未だ各地で争いは絶えないが、シャア・アズナブル率いるネオ・ジオンは、地球連邦政府からの独立を成し遂げ、着実にスペースノイドの自治権獲得へと突き進んでいた。

コロニー「スウィート・ウォーター」。
ネオ・ジオンの本拠地であるこのコロニーでは独立記念日を祝う式典の準備でコロニー中が華やぎ、活気に満ち溢れていた。
また、その式典を取材する為、報道陣も数多くスウィート・ウォーターに入港し始め、更に賑わいを増していた。
そして、その中に、かつてホワイトベースでアムロと共に戦ったカイ・シデンの姿があった。

「ここがスウィート・ウォーターか…。難民収容用コロニーだって聞いてたが思った以上に整備されている。流石はネオ・ジオンの本拠地ですね。」
周りを見渡しながら感嘆の声をあげると、同行していた人物に視線を向ける。
カイに視線を向けられたその人物は、複雑な表情を浮かべ、一瞬カイを見て直ぐに視線を逸らしてしまった。
カイは小さく溜め息をつくと、予約していたホテルに向かう為荷物を持って歩き出す。
「とりあえず一旦荷物を置いて落ち着きましょうか?」
カイの言葉に同行者はコクリと頷くとカイの後をついて共に人混みの中に消えていった。


ーーーーー

「大佐、少し宜しいですか?」
総帥の執務室に側近であるナナイ・ミゲルが現れた。
「どうした?ナナイ」
端末から視線を上げ、ナナイを見上げると、いつもの毅然とした彼女とは異なり、迷いを含んだ視線をこちらに向けている。
シャアは仕事の手を止め、ナナイに向き合う。
「何か問題が?」
シャアの問いにナナイは小さく首を横に振る。
意を決した様に息を吐くと手にしたタブレット端末をシャアに差し出す。
「こちらをご覧下さい。」
差し出されたタブレット端末に表示されていたのは今朝の入港者の氏名一覧と顔写真データだった。
そして、そこにあった一人の名前と顔写真にシャアは一瞬息を飲む。
「…アルテイシア…!」
驚きに言葉を失うシャアに、ナナイは更に付け加える。
「同行者は元ホワイトベースクルーのカイ・シデンです。ジャーナリストとして式典の取材の為入港したそうです。」
「カイ・シデン…」
グリプス戦役時、ジャブロー攻略作戦で会った人物を思い出す。
元ホワイトベースのクルーでパイロット。戦績もアムロには及ばなかったとはいえ、まともな訓練を受けていないにも関わらずかなりのものだったと聞く。
そして、シャア・アズナブルである自分を快く思っていなかった。いや…あれは『ジオン』を快く思っていなかった様に思う。
ただ、あの時は同じ目的を持つものとして協力していた。
飄々とした態度をとっていたが、真実を見極める目を持つ男だと思った。
その男が、スウィート・ウォーターに妹を伴って現れたのだ。
「目的は…アムロか…」
「おそらく…。総帥に取材の申し込みが来ております。そして、その同行者としてアルテイシア様の名がありました。」
昨年、体調の安定したアムロを連れて月のグラナダに行き、ブライト・ノアに会った。
おそらく、ブライトから話を聞いて会いに来たのだろう。
「入港の多くなる式典に合わせ、取材を口実にアムロの様子を伺いに来たと言ったところか…。しかし、まさかアルテイシアが宇宙に上がってまで会いに来るとはな…。」
「大佐、取材の件はどうされますか?」
口元に握った手を当て少し思案した後、小さく頷く。
「取材は私の屋敷の方で受けよう。明日、10時に来る様伝えてくれ。」
シャアの答えにナナイが目を見開く。
「宜しいのですか?」
「何か問題でも?」
「いえ…、ただ…もしかしたらお二人はアムロ大尉を連れ戻しに来たのではないかと思いましたので…。」
「そうだな。そうかもしれん。しかし、アムロは私と約束してくれたのでな。」
「…約束?」
「ああ、ずっと傍で私を支えると約束してくれた。だから大丈夫だ。」
優しく微笑むシャアに、まだ不安気な視線を残しつつもナナイは頷き、手配の為執務室を出て行った。
閉まる扉を見つめ、シャアが大きく肩で息をする。
「アムロ…」
シャアは窓の外に拡がる景色に視線を移し、愛しい人物の名を呟く。
『大丈夫』だとは思っている。しかし、不安が無いとは言えない。
それにアルテイシア…。最後に会ったのは1年戦争でのア・バオア・クー。
復讐に身を投じた自分を…、アクシズを地球に落とそうとした自分を恨んでいるだろう…。
シャアは賑わいを見せる窓の外を見つめ、大きな溜め息を吐く。


翌日、カイとセイラは取材の為シャアの屋敷を訪れた。
その豪奢な建物を見てセイラは息を止める。
それはかつて自分たちが幼い頃に住んでいた屋敷にそっくりだったのだ。
白い外壁、母が好きだった花が庭に咲き乱れる庭園…。
「兄さん…」
二人は家令の紳士に案内され、ある一室に通される。
来客用の応対室であるその部屋は、明るく、南側の庭を見渡せるテラスがあった。
そして、屋敷に入った瞬間から感じている懐かしい気配達に、セイラは胸を押さえる。
『兄さん。アムロ…。』
そのセイラの様子をそっと見守りながら、カイはソファに座り、取材の準備を始める。
すると、コンコンと扉をノックする音が響く。
二人は扉を見つめ、息を飲むと「はい」と返事を返す。
ゆっくりと扉が開き、そこから現れた人物に二人は目を見開き思わずその名を叫ぶ。
「「アムロ!?」」
シャアが現れると思っていた二人は予想外の人物の登場に驚く。そして、慌てて来たのか、少し息の上がった懐かしい人の姿に二人は思わず立ち上がる。
「やっぱり…、セイラさんと…カイさん!」
アムロは少し左足を引きずりながら、二人の元に駆け寄る。
実際、二人の姿は見えていないがその懐かしい気配を頼りに近付いていく。
と、その途中、目の見えていないアムロはテーブルに足をぶつけてしまう。
「痛っ」
「アムロ!」
セイラは咄嗟に駆け寄り、ふらつくアムロを支える。
「あ…、すみません。」
その視線の定まらないアムロの瞳にセイラが悲しげな表情を浮かべる。
そして、それは傍らで見ていたカイも同様だった。ブライトからアムロの身体の状態の事は聞いていたが、実際に目の当たりにするとかなりの衝撃を受ける。
しかし、アムロはそんな二人の心情を気にする事もなく、セイラの肩に手を置いて微笑む。
「二人の気配がして…まさかと思って急いで来たので…テーブルの存在を失念してました。すみません、セイラさん。ありがとうございます。」
「兄から私たちの事は聞いていないの?」
「え?シャアは知って!?…と、そうか、そうですよね。あなた達がここに来たって事はシャアが招待したって事ですよね。」
「え、ええ…」
セイラは事も無げに兄の事を話すアムロに少し動揺する。
「アムロ…」
「でもどうしてここに?俺の事はブライトから?」
「…お前呑気だなぁ。自分の状況わかってんのか?」
呆れながら答えるカイに「ははは」と笑う。
アムロはセイラに介助されながらソファへと座り、改めてカイとセイラに向き合う。
「お久しぶりです。カイさん、セイラさん。」
作品名:You can change your destiny. 作家名:koyuho