二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

You can change your destiny.

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

「アムロも元気そうで良かった…」
「ええ、セイラさんも…。ああ、見えないのが悔しいな。きっと益々綺麗になってるんだろうなぁ。」
「おお、益々なんてもんじゃ無いぞ!」
「ええええ!やっぱり!?」
カイの言葉に心底羨ましそうにアムロが叫ぶ。
「アムロったら。」
「でも、こうしてセイラさんが無事で生きていてくれて良かった。セイラさんに何かあったらきっとあの人が心を痛めるから…。」
「…あなたが…守ってくれたんでしょう?」
「俺だけじゃ無いです。あの時、アクシズを押し返そうとしたみんなの心が地球を守ったんですよ。俺のはただの私情だったから。」
そう、ただシャアに大罪を犯させたくなかった。もちろん地球にいるセイラやあの子を救いたい気持ちもあったが、一番の理由はあの人の為だった。
「私情ね…」
カイが小さく呟き溜め息を吐く。
「カイ…」
それをセイラが諌める。
「ところで、本当にどうして此処に?」
「まぁ、本当の目的はお前に会う為だが、一応表向きは独立記念式典に向けてネオ・ジオン総帥に取材をしに来たんだよ。そうしたら、
取材場所に此処を指定された。」
「…そうですか…」
「あいつも俺らの目的がお前だって分かった上で此処を指定してきたんだろ?」
「そうでしょうね」
アムロが少し浮かない顔をする。
「それよりもアムロ、身体の方はもう良いの?大怪我をしたと聞いたけれど…。」
「ええ、もうすっかり。まだ左足はちょっと引きずるけど、リハビリをもう少し頑張ればもっとスムーズに歩けるようになるそうなので。」
「…目の方は?」
セイラがそっとアムロの頬に手を添え、心配気に瞳に見入る。
「目は…、おそらくはこのまま…。ただ、視神経や眼球自体には損傷が無いらしいのでもしかしたら突然見えるようになるかもしれないそうです。」
優しく微笑みながら答えるアムロにセイラが眉を寄せる。
「兄のせいで…ごめんなさい…。貴方にこんな…」
アムロは小さく首を横に振り、頬に当てられたセイラの手に己の掌を重ねる。
「俺が自分の意思でやった事です。あの人やセイラさんが気に病む事はありません。」
「でも…」
「それに目が見えなくなってニュータイプ能力が上がったのか、人の気配とか周囲の状況とかは大体解るんです。まぁ、さっきはちょっとヘマしましたけど。だからそんなに不自由はしていないんですよ。」
それに人々の思惟も以前よりも鮮明に感じる様になった。油断するとその思惟に飲み込まれそうになる程に…。
なるべく能力をセーブする様にしているが、強い感情はダイレクトに脳に響いてしまう事があり、実はアムロを少し悩ませている。
きっと、昔のカミーユがこの状態だったのだろう。彼の精神が不安定だった理由を今、身を以て痛感している。
「そういえばアムロ、お前が生きている事をベルトーチカは知っているのか?」
カイのその問いにアムロは少し驚いた表情を浮かべるが、直ぐに目を伏せ横に首を振る。
「いえ…。知りません。多分その方が彼女やあの子の為ですから。」
「彼女が再婚…いや、お前とは籍を入れてないから初婚か、結婚したのを知っているのか?」
「はい。去年、ブライトに会うためにグラナダへ行った時に宙港で偶然あの子に会ったんです。その時に新しいお父さんが出来ると聞いたので。」
その言葉にカイが眉をしかめる。
「あの子はお前が生きてるって知ってるのか?」
「いえ、俺が父親だって気付かなかったので知らないと思います。知らせるつもりもありません。それにあの子が俺と血が繋がってると連邦にバレたらきっと碌な事になりませんし。」
「まぁ、お前と別れた時、あの子はまだ1歳かそこらだったろうから覚えていないか…。それに…ニュータイプ研究所か…」
「はい。あの子を俺みたいにモルモットにする訳にはいきません。」
「…そうだな」
アムロは1年戦争後、ニュータイプ研究所で被験体としてあらゆる実験を強要された。
そして、その挙句に危険因子として7年もの間シャイアンに幽閉されたのだ。
自分と血の繋がりがある子供の存在が知れたら、同じ様に被験体にされてしまうかもしれない。
あんな非道な体験を大切なあの子にさせたくは無い。
「それでベルトーチカとは籍を入れなかったのか?」
「まぁ、それも理由の一つではありますね。」
「一番の理由は…?っと、何となく分かるから言わなくてもいい。」
溜め息混じりにカイが呟く。
カイはアムロのシャアに対する気持ちに薄々気が付いていた。
ーーーライバルという以上の感情をシャアに持っていた事を…。
それは、グリプス戦役時、カラバで行動を共にしていた時に強く感じた。
アムロはシャアに対して反発した態度を取りながらもずっとシャアを意識していた、そしてシャアもそんなアムロをいつも見つめていた。
二人は反発しあいながらもお互いを求めていたのだろう。
そして、シャアが行方不明になった事を知ったアムロがあんなにも恐れていた宇宙に上がり、必死にシャアを探していた時にそれを確信した。
「ねぇ、アムロ…。私たちと地球に帰る気はない?ここは…ジオンは貴方にとって住みやすい所では無いでしょう?」
セイラの問いにアムロは少し困った表情を浮かべる。
「セイラさん…ありがとうございます…。」
「では、アムロ、私たちと一緒に?」
「いえ…。俺はここに残ります。確かにここには俺を恨んでる人が沢山います…。でも、認めてくれる人も少しですがいるんです。それに…あの人の傍にいると約束したので…。俺はこれからもここで生きていきます。」
アムロの答えにセイラは大きく溜め息を吐く。
「だそうよ、兄さん。安心した?」
突然、背後にシャアの気配を感じてアムロが振り返る。
「シャア!?」
「アムロが私たちと行ってしまうのではないかと心配だったのでしょう?」
「…アルテイシア…」
「アムロも兄さんが貴方を手放すつもりではないかと心配だったのではなくて?」
「あ、え…と。」
アムロはセイラに図星を刺されて言い淀む。
セイラは立ち上がるとシャアに歩み寄る。
「お久しぶりね、キャスバル兄さん。」
「アルテイシア…」
シャアはそれ以上言葉を紡ぐ事が出来ず、ただセイラを見つめた。
「アムロ、ごめんなさいね」
「え?」
セイラのその言葉と同時にパシンっという音が部屋に響き渡る。
「セイラさん!?」
それはセイラがシャアの頬を打った音だった。
「これはあんなバカな事をした事に対して」
そしてもう一度パシンと音がする。
「…これは…アムロを…こんな風にしてしまった事に対して…よ…!」
「セイラさん…」
セイラの言葉にアムロの瞳に涙が滲む。
そして、そのセイラの平手を甘んじて受け入れたシャアが目を開けると目の前に涙に濡れたセイラの瞳があった。
「アルテイシア!すまない…」
シャアは思わずセイラをその胸に抱きしめる。
「兄さん…!本当は…もう二度と会わないつもりだった。でも…、アムロが兄さんの元にいると聞いて…どうしても確かめたかったの…」
「確かめる?」
セイラは顔を上げるとシャアの瞳を覗き込む。
そして、ホッとした様に微笑んだ。
作品名:You can change your destiny. 作家名:koyuho