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雋娘と童路

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次々と自分の配下が離れていくのが、自分の無能させいだとは思っていないのね。

般弱は早々に、妙音房を封鎖しに兵を出したけれど、妙音房はもぬけの殻だったと言うわ。
童路が裏切ったか、囚われて拷問にかけられ口を割ったと、もう感づいていたのね。
決して般弱の動きは遅くなかった、なのに、もう妙音房の動きはその先をいっていた、、、。
相手の組織は周到よ。こんな連中相手に、般弱が太刀打できるのかしら。

そしてきっと、今後ここを抜け出せたとしても、童路は仲間たちからは受け入れられないわ。
こちらも、もう何も掴めないでしょう。
ならば、ここで生かす意味もない。
般弱は童路をすぐにでも、殺してしまうかもしれないわ。

滑族から身を隠したあの日、私は人を傷つけて生きる道を捨てたのよ。
なのにこんな事になってしまった。
童路、、、、、私はあなたにそれ程の情がある訳では無いけれど、、この無骨で、正直に生きるあなたを、ムザムザと殺させたくはない、、、。
妹を死なせたと、涙ぐむあなた、私の具合が良いと、嬉しそうに目を細めるあなた、、、、。
童路の無防備な優しい言葉や表情が、私の生き方に刺さるようだわ、、、。

童路を死なさぬ為に、一計を講じた。
、、、上手く般弱が引っ掛ってくれれば良いと願い。

そしてまんまと、般弱は引っ掛かった。
私は、いかにも童路に恋情を持ったように装い、逃がして欲しいと懇願した。
般弱はせせら笑い、「あの男の使い道が出来た」と、ほくそ笑んだ。

これで童路は無事でいられるわ。

けれども私は、般弱の思うままに動かなくてはいけなくなってしまった、、。
漸く離れた筈のうんざりな滑族に戻り、、、、滑族、、と言うよりも、般弱の為に動かなくてはならなくなった。

誉王府の官女として、皇宮の仲間との連絡役になる。
皇宮には顔見知りの仲間が幾人かおり、連絡の為ではあったけれど、静かに再会をし、懐かしんだわ。
小さい頃の面倒を見た顔もあった。
まだ小さいと思っていたのに、、、皇宮に潜り込んで般弱の手先になっているのね。
私はもう、引き返すことは出来ぬけれど、、この子達ならば、、、、。この子達は、まだその手を汚さずに済んでいる。
深みにハマれば、もう引き返せなくなる。
程々に、、、あまり熱心には動かぬようにと、一言だけ言い残した。
この子達に、私が出来るのはこの様な事だけよ。
けれどこの子達は皆、意気揚々、滑族の復活を信じているのよ。
私の言葉など、どれ程の歯止めになるだろう、、、。

そして、私は夏江と般弱の連絡役をも任される、、、。
もう、会う事なと無いと思っていたのに、、、師匠の情夫などとは。
私は、あの当時も師匠とこの男の連絡役だった、、。
いけ好かない男、、、、相変わらずだわ。
自分が至上だと思っている。
誰も彼もを皆、思い通りに動かせると思っている。
身分にかかわらず、人を皆、見下しているわ、恐らく皇族でさえも。私など、人だとすら思われていない。
そして、この男は自分だけが大事。

般弱、誉王、夏江、、、、。
どこか似ている3人だわ。
一見、互いの為に動いているように見えて、実は自分の事だけよ。
自分の中の、何かを満たすためだけなのだわ。
利害で固く結ばれている関係の様でいて、実は何も繋がってはいない、、。

けれど、そうこうしていると、ある事件を切っ掛けに、誉王は本当に落ちぶれた。

あの夏江が、天牢に繋がれてしまったという、、、、。
周到に用意した計画の様だったけれど、お正月を幾らか過ぎた、ある一日を境に、有様は一変してしまった。

大変な打撃を受けた様子で、暫くは般弱は誉王にかかりきりの様だった。
そして今度は般弱自身が、天牢の夏江に赴き、会っている様子だった。
私に般弱の信用はもう無く、お陰で、人を欺き陥れるような謀の片棒は担がなくでも良くなり、私は安堵した。
般弱達は、あの日まではまるで天下を手中にしたような、、、浮かれた状態だったけれど、、。
儚い夢は終わったのね、、、。
、、、ただ、童路だけが心配だった、、、、。


でも、、、、
寒い日々が幾らか緩んだあたりから、、何か画策をしている様子で、静かではあったけれど、また何かが進んでいる様子だったわ。

そして、あれからは般弱に会うことは無かったのだけれど、ある日誉王府に呼び出され般弱と会った。

般弱から、監禁している誉王府から童路を逃がすように命じられた。
敵の梅長蘇は、春猟に同行して金陵にはいない。
江左盟の宗主が留守中の、組織が緩んだ隙に、江左盟の隠家を探すと言うのよ。
童路は必ず仲間の元に行く筈だと、、、童路と共に逃げて、自分の仲間の隠れ家に行くように仕向けろと命じられた。

童路の前で、雋として振舞っていた時の服を纏い、枷の鍵を預けられて、童路が捕えられている小屋へと向かったわ。

金陵には幾人か、私の頼れる友がいる。
私が滑族から消える時にも助けてもらった。

私一人だけで無理かも知れないけれど、協力者がいれば童路をどこかに隠せるかも知れない。
逃げる途中に、私がどうにか友に接触して、あの日私が逃れたように手配してもらえれば、、、、なんとか、、、、。

童路を助けるには、この機会が最後かも知れない。
童路は歩けるの?。
どうか、どうか、、童路に逃げられるだけの力が残されている事だけを祈ったわ。

小屋に入れば、童路が座っていた。
だいぶ痛めつけられて、、、、まだ新しい傷もあちこちに、、。
ただ一人で、耐えていたのね。
「童路!!」
童路は私の姿を見て驚いていたわ。
そして私の心配をするのよ、、、騙したのは私なのに、、、。
なんとか、、、ここから出て、私の友の所に行かなくては、、、。
その後の事は、逃げられたら考えるわ!!!!
童路の仲間の所に行かせてはいけないわ!
「梅長蘇は死んだわ。」
「懸鏡司で毒を飲まされたの。」
咄嗟に嘘をついた。
こう言えば童路はきっと諦めるはず。
「嘘だ!」
「火寒の毒でも耐えたのに!!」
きっと江左盟の宗主が、拠り所だったのね。途端に悲しそうな顔になる。
そこへ小屋の扉が大きく開いて、般弱が入ってきた。
「火寒の毒ですって!!!」
童路は般弱と私の顔を、代わる代わるに見て、、、、
、、、、、そして全てを察した。
私と般弱が、仲間であると、、、自分が騙された事に、、気がづいたわ。

見る見る童路の顔が、絶望へと変わっていった、、、。
「童路、、、。」
私を、、、、、、、、私を、、、、そんな目で見ないで、、、、。
私はただ、あなたを助けたかっただけなのよ。
童路の瞳が、暗い暗い、闇の淵へと堕ちていくのがわかった。

童路の体からはがっくりと力が抜け、どこにも焦点が合わずに、、、その姿はまるで骸のようだわ。

般弱が、もう何を脅そうが痛めつけようが、童路は口を閉ざし、話す事はなかった。
般弱はそれ以上の情報を、童路から聞くことは出来なかったわ。

般弱は初めから、逃がす気などなかったのかしら、、。
なぜあの瞬間に入ってこれたの?。
、、、、童路を逃す道は、これで閉ざれてしまったわ。

あの、、、、、、あの、、私を見つめる童路の目、その表情が、、、
私の心に焼き付いて離れない、、、。
作品名:雋娘と童路 作家名:古槍ノ標