【APH】間際の恋
「…ったく、あんまり面倒掛けさせないでくれ。本田にも迷惑だろう」
ルートヴィッヒは溜息を吐くと畳の上に落ちたカーディガンをギルベルトに羽織らせる。何気ないその動作の言葉にならない想いが溢れている。…それが兄を想う弟の優しさではないことを知っているのは私だけでしょうねぇ…と本田は思う。そして、ルートヴィッヒも本田がギルベルトをどう思っているのかを知っている。
「ありがとな。ルッツ」
にへらと締まりのない顔でギルベルトは笑う。そんな顔をギルベルトが向けるのは、最愛の弟であるルートヴィッヒの前だけだ。
「どういたしまして」
それを嬉しく思いつつも、弟と言う枠から抜け出すことが出来ずにいるルートヴィッヒのジレンマも手に取るように本田には解る。…分はまだこちらにあるが、ルートヴィッヒが動いてしまったら、ギルベルトの気持ちは葛藤の末、容易にルートヴィッヒの元へと落ちてしまうのだろう。
師匠とっての特別はいつまで経っても彼であり、自分のことよりも優先されるは彼のことなのだ。
切っても切れない絆。…そんなもの、叩き斬れるものなら叩き斬ってやりたいと思う。でも、それはしたくないとも思う。
…私も丸くなりましたねぇ。
欲しいなら奪えばいいとか、そんな手段で手に入るならばそうしている。でも、そんな手を使ったところで、実際は何一つ、この手には欲しかったものは指の間を擦り抜けていってしまう。
あァ、本当に老いらくの身でどうしようもない恋をしている。
本田はひっそりと溜息を吐いた。
オワレ