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天衣創聖ストライクガールズ 第一章:セラ・レイトン

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第一章:セラ・レイトン


第一話 うん、いい守護霊だな

「てんいいいいいいいいいい!そう!せえいっ!」
龍之介の叫び声が部屋に響き渡る。
「あの~、気合入れても多分結果には影響無いと思うんで・・・」
例の光が収まると苦笑いしながらそう言う、新しい天衣を身に纏ったセフィーナがそこにいた。
「あ、またRランクの天衣ですね、これ。ロゼットスカートっていう・・・でもこれカワイイです!」
あれから龍之介は何度も天衣創聖を試みていた。自分の命が危機に晒されているのだ。ボディガードたるセフィーナの強化を願うのは当然ではある。しかしエクスタシオが召喚する天衣は、実はまったくのランダム。先日のエンゲージ召喚は奇跡中の奇跡だった。
「くそっ!もう一回!」
龍之介はそう言うが、しかし、
(あ、あの~、もう駄目です~限界です~。)
エクスタシオが頭の中でくたびれた声で音を上げた。そう、エクスタシオが召喚出来る回数にも限りがあった。彼女には体力とでも言おうか、そういう物があってそれが尽きると召喚が出来なくなり、休眠状態に入ってしまうのだ。そして回復を待たねば次の召喚は出来ないのだ。
「そ、そこをなんとか!泣きの1回頼む!」
所でエクスタシオと会話している龍之介だが、その声は彼にしか聞こえない。その光景を傍から見ると独り言を言っているようにしか見えず、セフィーナとしてはその場では龍之介の言葉から内容を察するしかなかった。
(しょうがないですねえ・・・本当に次が最後ですよ?)
「サンキュ!じゃあラスト1回気合入れて行くぜ!」
「ですから、気合は・・・」
「天衣!創聖!」
セフィーナの言葉を無視して龍之介は叫ぶ。再び部屋は光で満たされた。ふと龍之介はその景色に違和感を覚えた。
「なんか赤っぽい?・・・確か最初の天衣創聖もこんな感じだったような・・・これはっ!来たよ!来ましたよ!」
(それじゃ、私は寝ますね。おやすみなさい~)
エクスタシオはそう告げ、眠りに入った。そして収まって行く光の中心には・・・
「ここ・・・どこ?」
セフィーナはいなかった。彼女は今光の中心に現れた人物―――可愛らしい女の子―――の向こうにいる。
「えーと、どなた様で・・・」
龍之介がそう訊ねかけた所でセフィーナが口を開いた。
「あ、天衣創聖にはこういう効果もあるんでした。向こうにいる仲間を天衣ごと召喚するって効果が・・・」
その声に、光の中から現れた女の子が反応して振り向き、驚嘆の声を上げた。
「セフィーナお姉さま!」
「キリスちゃん?」

・・・・・・・・・・・

光の中から現れた少女、彼女はウィザーディアでセフィーナと共に戦っていた仲間だった。
「ふーん、この人が新しいマスター、なんですか・・・私はキリス・ロバックといいます。よろしく~。」
彼女はあからさまに嫌そうにそう言い捨てると、
「セフィーナお姉さま!三年振りのご無沙汰です!お会いしたかったですう!」
そう言いながらセフィーナの腕に絡みついた。
「えーと・・・俺は安藤龍之介。よろ・・・」
「はいはいよろしく!それでですね、お姉さま、話したい事がいっぱいあるんですよ~!」
キリスは食い気味に龍之介の自己紹介に応えるとセフィーナと話を始めた。
そして数十分の後。
「おーい、その天衣ってどうなんだ?多分当たりだと思うんだが。」
放置されて痺れを切らした龍之介がセフィーナに向かって声を掛けた。
「あ、ああすみませんマスター。そうですね。当たりですこれ!ランクSSR、ヴァージンクロスと言って、エンゲージほどではないですけど、これも結構強い天衣ですよ。」
「そうか。良かった。これで戦力増強だな。」
「あの、私はあなたを守るなんて一言も・・・」
「キリスちゃん!」
憎まれ口を利こうとしたキリスをセフィーナがたしなめた。
「むー、お姉さまがそう言うなら仕方ありませんです、キリスも戦いますですよ。でも!勘違いしないでくださいね!キリスが戦うのはあなたを守るためじゃありませんですよ!お姉さまと、エクスタシオを守るためです!」
(なんか、嫌われるような事したか?俺。)
そう思いながら龍之介は
「ああ、それでいいわ。よろしく。」
そう言い残して一振りの竹刀を手に屋上へ向かった。

「もやもやした時はこれに限る。」
キリスの態度に釈然としないものを感じた龍之介は、そう言いながら竹刀で素振りを始めた。彼は高校で剣道を始め、今も趣味で続けていた。この素振りも日課のようなものだった。
そして十数分も経過した頃だろうか、彼は視界の隅に人の気配を感じ、素振りの手を止めた。
「見物かい?」
龍之介は気配の主に振り向きながら声を掛けた。
「ああ・・・見物だ。とは言っても君じゃなく、君の後ろの・・・まあいい。」
そこにいたのは見知らぬ少女だった。気配からセフィーナでもキリスでもないと感じていた龍之介は驚きはしなかったものの、不思議な雰囲気を持ったその少女にただならぬ物を感じた。
「なんだよ。気になるじゃないか。後ろって何だ?」
彼は何の警戒もしなかった。彼女からはその雰囲気から悪意も敵意も、その類の物は感じなかったからだ。
「・・・私は見える体質でな。見ていたのは君の後ろ、つまり守護霊だ。うん、いい守護霊だな。」
龍之介はぎょっとして後ろを振り向く。だが当然何も見える訳は無い。
「いや、俺には・・・あれ?」
少女の方を向き直った彼だったが、そこにはもう彼女の姿は無かった。



第二話 マスター、気を付けてくださいね

忽然と消えた少女。
(目を離した一瞬で屋上の出入り口から出ていった?いやいや、そんなに短時間に移動出来る立ち位置じゃなかったぞ、何者だ?あの娘。)
一人取り残された龍之介がそんな事を考えながら屋上のドアをぼーっと見ていると、そこからセフィーナがひょこり顔を出した。
「あの、今お邪魔じゃないですか?」
「あ、ああ。ちょっと休憩してた。構わないよ。」
その龍之介の返事にセフィーナはにっこり笑うと龍之介に歩み寄ってきた。
「あの、さっきはキリスがすみませんでした。あの娘、ちょっと人見知りが激しくて。特に男性相手だといつもあんな感じなんです。」
謝るセフィーナに、龍之介はちょっと意地悪してみたくなった。
「ふーん、それはいいけど、君だって随分楽しそうにお喋りしてるように見えたけど?」
「そ、それは・・・あの娘のペースについ巻き込まれちゃって・・・」
セフィーナは龍之介の思惑通り、律儀に困って見せた。
「ぷ・・・ははははは」
あまりにも素直な彼女に龍之介は耐えきれずに吹き出した。
「あ、からかいましたね。もう!」
そう言って頬を膨らませるセフィーナ。こんな風に二人はすっかり打ち解けていた。
「あ、そうそう。さっきちょっと不思議な事があってさ。」
龍之介はついでに、という軽い気持ちでさっきの出来事を話して見せた。彼はセフィーナも不思議ですね、という感想を述べるだろう、そう思っていたが彼女の反応は違うものだった。
「・・・その、女の子が立っていた場所ってどこですか?」
彼女は神妙な顔つきで龍之介に訊ねた。彼は思いもしなかった彼女の反応に戸惑いつつその質問に答えた。
「え、えーと、その辺。そう。その柵の辺り。」