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天衣創聖ストライクガールズ 第二章:ターニャ・ナッツ

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第二章:ターニャ・ナッツ

第一話 神様仏様エクスタシオ様!
「海ーーーーーーーーーっ!」
ここはとある海水浴場。その砂浜に足を踏み入れたセフィーナは歓喜の叫び声を上げた。
話は遡る事数日前。

「世間は夏休みか・・・」
テレビのニュースを見ながら龍之介はぼそっと呟いた。画面内には楽しそうに海水浴を楽しむ人々が映し出されていた。
「素振りして来る!」
そう言い残して龍之介は竹刀を手に部屋を後にした。その背中をセフィーナは心配そうに見送った。
「マスター、可哀想・・・相当ストレス溜まってるみたい。」
その様子を見ていたキリスも
「ですよね。もう一ヶ月以上この部屋に軟禁状態な訳ですからね・・・」
その後龍之介はヴィーン・ボウとの無用な接触を避けるべく、どうしても必要という場合を除き外出を控えていた。だが遊びたい盛りの大学生、ストレスが溜まらない訳が無い。

「元気無いな・・・大丈夫か?」
屋上では素振りをする龍之介に様子を見にやって来ていたセラも気遣いの声を掛けていた。
「元気無い?・・・馬鹿言え・・・元気無くて・・・こんな力強い素振り・・・できねって!」
竹刀を振り下ろしつつ龍之介は吐き捨てた。
「いや、フィジカルではなくメンタルの話なんだが。」
それを聞いた龍之介は素振りの手を止めた。
「・・・いや、言いたい事は分るよ。でもしょうがねえじゃん。俺が襲われるって事は君らも危険に晒されるって事なんだからさ。いいんだよ。俺さえ我慢出来れば。それで今の所平和なんだし。」
「そうか。でもな・・・」
そう言うとセラは龍之介の空いていた左手を取り、呼びかけた。
「聞こえるか?エクスタシオ。」
(聞こえますー。なんですか?セラさん。)
その後セラは乙女たちの中で唯一エクスタシオとコンタクトを取れるようになっていた。龍之介に触れる事でエクスタシオと会話が出来る事に気付いたのである。それは彼女が霊能者ゆえの事だった。
「彼、結構参ってると思うんだが、どうだ?」
(そうですねー。最近ちょっと居心地悪いですー。)
龍之介の心が彼女の住処。それがストレスで圧迫されれば彼女も気持ち良くは無いのだ。
「だ、そうだ。彼女のためにもどうにかしないとな。」
「んな事言われても・・・」
困り顔でそう言う龍之介にセラはウインクしてみせると、
「私に考えがある。エクスタシオも起きている事だし、ひとつここで天衣創聖をしてみてくれないか?」
「え?なんで?」
「いいから。但し、水着を念じてやってくれ。」
その後龍之介はある程度天衣創聖のコツのような物を掴んでいた。天衣の大雑把な種類を念じる事によって、そこそこの確率でその系統の天衣を召喚できる事に気がついたのだ。
「水着?水着か・・・水着水着・・・よし!天衣創聖!」
ピンク色の光が溢れた。どうやら成功である。そして光が収まるとそこには思惑通りに水着姿のセラが立っていた。
「よし、これでだな・・・ってうわっ!なんだこの布面積の小さい水着は!」
召喚された天衣を確認したセラは狼狽した。
「あ、それシルクさん家で見た事ある・・・しょうぶのみずぎって奴だ。しかし実際に着たのを見ると、凄いなそれ・・・」
「ななななななな!何だこの水着は!ほとんど裸も同然じゃないか!」
そうやって狼狽しながら胸やお尻を何とか隠そうとするセラだったが、やがて龍之介の視線に気付くと、
「あんまり見るな!バカ!」
そう悪態を突き、膝を抱え込むようにしゃがみ込んでしまった。

・・・・・・・・

セラの考えは、水着天衣ならそのままボディーガードしつつ海水浴が出来る、というものだった。いつぞやの、街中を天衣で歩くという行為よりはずっと現実的で普通、何より恥ずかしくないのでセフィーナも賛成した。
「マスター、私も協力しますから、たまには息抜きしましょう!」
そう言うセフィーナだったがその本音は少々違う物だった。
(マスターと海・・・!行きたい!ここは絶対に説得してやるんだから!)
もともと彼女は龍之介に対して初対面から好印象を持っていたが、セラとの一戦で見せた彼の行動に胸を打たれ、淡い恋心に近いものを抱くに至っていた。そのセフィーナの考えをエクスタシオは敏感に読み取った。
ここで思い出して欲しい。セラとの決戦でエクスタシオが彼女の心を読み取った事を。エクスタシオはウィザーディアの天衣乙女の強い気持ちを感じ取る事が出来るのである。そして彼女は
(ははあ・・・セフィーナさんもいつの間にかこんなにマスターラブになってましたですかー。では、ここはひとつこのエクスタシオ、一肌脱いじゃいましょうかねー。)
龍之介に聞こえないよう、そんな事を考えていた。

そして意外と自制心の強かった龍之介だったが女性陣に、特にセフィーナに説得されたというか言いくるめられたと言うか、本人も遊びたい気持ちはあったのでその案に乗る事にした。そして乙女たち全員を集めて水着の召喚を試みる事になった。

何度かの天衣創聖の結果、キリスには夏待ちビキニ、シルクにはサマービューティ、ミントにはなまあしマーメイドと、見た目と強さを兼ね備えた天衣が召喚されたがセフィーナだけにはまだ召喚されずにいた。そんな状態で果たしてエクスタシオが音を上げた。
(もう駄目です~。あと一回で勘弁してください~。)
「えーと、あと一回だって。」
「そ、そんな!」
エクスタシオの伝言を聞いたセフィーナの顔が蒼白になる。
「じゃ、泣いても笑ってもラス1。行くぜ!天衣創聖!」
(神様仏様エクスタシオ様!お願いします!)
セフィーナが祈る中、部屋はピンク色の光に満たされた。
果たして天衣はセフィーナに召喚された。それもようやく水着が。その水着は紺色のワンピース。世に言うスクール水着という物だった。
「・・・水着、ですね。」
「・・・水着、だな。」
そして二人が絶句する中、
(私はこれで寝ますー。お休みなさいー。)
そう言ってエクスタシオは眠りについた。



第二話 エクスタシオ、ウチにくれへん?
「マスター、早く早く!」
一行の先頭をセフィーナが小走りで先導する。電車を降り、海岸まで数百メートルの坂を彼女はもどかしげに駆け下りた。そして周囲の建物の隙間から海が覗くとセフィーナはそこで振り向き、
「見えましたよ!マスター!海です!」
そう言って笑顔で海を指差す。
「こらこら、人前でマスターとか言わないの・・・でもあんなに喜ぶなんて、来て良かったな。」
セフィーナのはしゃぎっぷりに龍之介も目を細めた。そう、今回一番はしゃいでいたのは彼女だった。

そして場面は前回冒頭に戻る。

「海ーーーーーーーーーっ!」
砂浜に足を踏み入れた彼女はそのまま波打ち際まで走っていく。
「セフィーナ!もう、はしゃぎ過ぎよ。今回はマスターのストレス解消のためなのに。」
シルクはそう言って諌めようとするが、
「まあまあ、いいって。皆が楽しければ俺だって楽しいし。みんなもそうだろ?」
龍之介はそう言って一同に振り向いた。
「そうですね。でもあんなセフィーナお姉さまも珍しいです。普段はあんなに感情をストレートに表す方じゃないんですよ。」