東方『神身伝』
萃香は最低限の上半身の移動で、冬馬の攻撃を見事にかわしていた。
そして、自分の目の前を通り過ぎる冬馬の体の中心を、思いっきり蹴り上げる。
「がは。」
苦痛に歪む顔、強制的に肺から出てくる息が、その威力を物語る。
「確かに速いよあんたは、でも目が慣れてくればどうって事無い、そこに少しの予測を加えてやれば、あんたなんて相手じゃ無いんだよ。」
その言葉と共に少し飛び上がると、下からの衝撃でへの字に曲がった冬馬の体に、上から肘打ちを浴びせて地面に沈める。
ドゴオオン。
「がはあ。」
勝負を決するには十分な威力だった、そのまま倒れこむ冬馬の傍にしゃがみ込み、髪を掴んで顔を強制的に此方に顔を向けさせる。
「解ったか?お前のそれは優しさのつもりかも知れない。でも、時には差別と言う言葉以外の何物でも無くなるんだよ。」
冬馬は、萃香のその言葉を聞くと同時に、意識を失った。
それを確認した萃香は、冬馬の体を背負い、霊夢の許に向かう。
最後まで黙って見ていた霊夢は、萃香の方をポンと叩き、ご苦労さんとだけ伝える。
そして、そのまま力いっぱい握り締める。
「いだだだだ、何するのさ霊夢う〜。」
「っで、これどうするのかしら?」
霊夢が指差すこれの先には、見るも無残に崩壊した境内が残っていた。