東方『神身伝』
今は霊夢のおかげで、食住は何とかなるかもしれない。だが、何時までもそれに甘える事もできない、生活環境を整えるにしてもお金すら持っていないし、まともに知り合いすらいない状況だ。
なら先ずは、そのお金を手に入れなければならない、そうかんがえたのだ。
「そうね、働かざるもの食うべからずとはよく言った物だしね。」
霊夢はそう言いながら、何故か冷ややかな視線を萃香に向ける。
萃香は何やら罰が悪そうに、その視線から目をそらして、明後日の方向を見つめる。
冬馬は、霊夢が萃香に何を言いたいのか、何となく読み取ったが、それを口にするのはやめとく事にした。
「そ、それなら、先ずは此方の連中に顔を知ってもらうのがいいんじゃないかい?」
萃香は、無理矢理話題を戻し、提案する。
「はぁ〜、あんたねぇ〜。まぁでも、あんたの言う事にも一利有るわね、なら、良い方法が有るわ。」
そんな萃香に対して、ため息をつきながらも、提案には賛成らしく、方法にも心当たりが有る様で、湯飲みを床に置いて立ち上がる。
「やるかい?」
萃香は、霊夢が何を考えているのか解っている様で、同じ様に立ち上がると、霊夢の方を見つめて解り切った答えを再確認する様に質問する。
霊夢は、萃香の問に黙ってうなずくと、時間を確かめる様に太陽の位置を確認して、今からでも、十分間に合うわ。と呟く。
完全に、置いてけぼりに成っている冬馬は、訳が解らないと言った表情を2人に向ける。
それに気がついた霊夢と萃香の2人は、意味ありげな笑みを冬馬に返す。
「まぁ、期待して待ってなさい。」
「そうそう、私達に任せときな。」
2人は、そう言うと、ふたたび視線を合わせると、とても楽しそうな笑顔を向け合った。
冬馬は、最後まで置いてけぼり状態で、その頭の上には、終始クエスチョンマークが浮かんでいた。