東方『神身伝』
今度こそ、敵の消滅を確認した狼は、力無く倒れている冬馬の許にヨロヨロとした足取りで近づいて行き、耳を口元に当てると微かに「ヒューヒュー。」と音がしているのを確認する。
「よか・・・・・・・った。」
息をしている事をを確認すると、冬馬に覆いかぶさるようにして立ち額と額を合わせる。
「こんな、状態で力を行使した私には、もうこの先を生きていく力は残っていません。
ですが双方の生命力を合わせることで、どちらか一方は生きることが出来るでしょう。
私が貴方と融合することで、貴方に重い使命を背負わせる事になるかも知れません。
巻き込んだ上に、身勝手な事この上ないですが、これ以外に方法が無いのです。
どうか、無力な私を許して下さい。」
言葉を告げながら、狼の体は強い光を放ち、冬馬と狼を包み込んでいった。