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【APH】Solo!【SCC19サンプル】

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◆日普

 久しぶりに来たせいでギルベルトがうっかり頭をぶつけていたことを思い出し、菊はくすくすと忍び笑う。それほど身長の高くないアルフレッドでさえ頭をぶつけちゃうよ! と文句を言うくらいだ。長身の兄弟は気をつけて歩かなければ簡単に鴨居で打ってしまう。
 これが弟のルートヴィヒであれば大丈夫なのだが、このひとはちょっと油断した隙にごん、と鈍い音を響かせていたりする。瘤にはならないので、ぶつかる瞬間に気をつけてはいるのだろう。鈍いようで鋭く、鋭いようで鈍い人だ。百年以上付き合えば、この不思議とちぐはぐなこの生態にも慣れる。
「まあ、なんつーんだ。畳とか、緑茶とか、日本にしかないものってあるだろ。ワビサビ、っつーんだっけ。こういう雰囲気、結構好きだぜ」
 にっ、と笑うギルベルトに菊は嬉しくなる。嘘のつけないひとなのだ。好きなものは好きだというし、嫌いなものは嫌いだという。自分にはないものだからこそ、憧れる気持ちもあるのかもしれない。
 そもそもこういった慎ましさは彼の国が教えてくれた美徳の筈なのだが、不思議な事に今も昔も良い意味でも悪い意味でも、彼のひとにそれを感じ取ったことはない。敬虔なキリスト教という意味では慎ましいのだろうが、普段の行動だけを見ればなかなかそうとは思えない。実に損なひとだ、と菊は思う。
 が、その魅力を知っているのは自分だけでいいと思うのも確かだ。よけいな虫は少ないに限る。
「……しかしギルベルトさん、どうしてまたおひとりで我が家に?」
 ルートヴィヒがこちらに来るという話は聞いていないし、会議があるわけでもない。観光がてらに来た可能性はあるが、どうもそういった様子でもない。観光に来たのならば真っ先に案内しろ! と満面の笑みで命令するからだ。もちろん嫌ではないのでいつも笑顔で承諾してしまうからこそ、気軽にそういった命令をされるのだろうが。