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【APH】Solo!【SCC19サンプル】

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◆露普

「何してんだ」
 たった一時間、黙って歩いていただけだというのに、ひどく久しぶりに男の声を聞いた気がしてイヴァンは笑う。寒さのせいか僅かに不機嫌そうなギルベルトの声は普段よりトーンが低い。寒いのが嫌いなら散歩をしなければいいのに、と思うが男はそうは思わないらしい。
 問いかけに答えずイヴァンが笑ったからか、ギルベルトは眉間に皺を寄せたが、すぐに表情を緩めるとすい、と一軒の店を指す。
「寒くなって来た」
 そう言ったきり、ひとりですたすたと店の方へ向かってしまう。どうやらその店は小さなレストランらしい。行こう、とも帰れ、とも言わないという事は好きにしろということなのだろう。今更一時間以上もかけて、仕事をしにひとりでこの道をぽつぽつと戻るという選択肢はない。それに、寒くなって来たというギルベルトの意見にはイヴァンも賛同する。気になってふらりと付いて来たせいで体を暖めるためのウォトカすら持っていないのだ。
 先に店内に入ってしまったギルベルトの後に続き、店に入る。途端にふわりと暖かな空気に体を包まれ、イヴァンはほう、と息を吐き出す。店内は少しばかり薄暗いが、アンティーク系の家具やカップなどが並べられていることから雰囲気を合わせるためなのだろう、と察せられる。
 店の奥にある暖炉の中の薪がパチン、と爆ぜて、店主らしき年老いた男がこちらを振り返る。案内されないことを考えれば席は自由に座っても構わないのだろう。イヴァンはまっすぐに暖炉の近くに陣取っているギルベルトのところへ向かい、正面に座る。
 雪の勢いこそ治まったようだが、気温自体は下がっている。それも当然だろう。今は日が沈みかけている時間帯だ。帰りはお互いおそらく歩く気は無くしているだろうから、店主に電話を借りようと考え、イヴァンはメニューに視線を移す。少しばかり小腹も空いているし、と思っていると店主の連れ添いらしき年配の夫人がウォトカを運んでくる。礼を言ってぐい、と流し込めば、じわ、と喉や胃を焼く熱が心地いい。