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さよならの距離は

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「世界が終わる?」

 ミニードゥ・アルマは聞き返した。

「ええ」
「どういうことなのです?」
「私にも詳しいことはわかりませんが、ご説明しますと……」

 オリジンは難しい顔をしながら話し始める。

 ここはとある飛空艇の茶室。仲間でおしゃべりをする場なのだけれど、漫画を持ち込んで読みふけっているアルマもいる。そのため、今は思い思いのことをして過ごす場所として使われていた。

「頭の中に謎の単語が聞こえてきたんです。ガンホー、ヘッドロック、ECO、サービス終了といった単語です。どこかの国で使われている言葉だと推測しますが、詳しいことはわかりません」
「このミニーの頭脳によって謎は解けました! つまり、エコちゃんが何かのサービス終了するということです! ガンホーとヘッドロックというのはノイズです!」
「…………。話を続けると、それらの単語の意味自体はわかりませんが、何か不穏なものを感じるんです」
「無視されたっ!?」
「世界の終わりが近づいていると感じるんです。それは言葉として頭に入ってくるものではなく、例えば嗅覚で感じ取るようなものを言えばわかりやすいでしょうか」
「全然わかりやすくないですけど……世界が終わるってどうやってなのです? そんなのミニーは信じられないですよぅ」
「それもわかりません。隕石が落ちるのか、疫病なのか、ハスターのような悪しき存在によるものなのか、想いの力の暴走なのか……。何もわかりませんが、ただ感じるんです」

 オリジンは紅茶を一口すすった。ミニーは顔に似合わず紅茶を淹れるのがうまく、上品な味わいを楽しめる。
 しかし、今の話題は上品さとは程遠いものだった。

「何もわからないんじゃ対処のしようがないですよぅ」
「ええ。今の時点では何もできません。座して終末を待つしかないですね」
「そんなっ! 冷たいですよぅ!」

 そこで話を聞いていたベイヤール・アルマが顔を上げた。

「あの、世界の終わりって気持ちいいんですか? だとしたら終わりを受け止める役はわたしにください!!」

 重たい話題とは裏腹に、危機感のない人たちだった。


                 2

 ティーポットが空っぽになったのでミニードゥが紅茶を淹れ直した。甘みを帯びた香りが蒸気とともに立ち上っている。

「ミニーさんは並行世界とか他世界解釈というものをご存知ですか?」
「え? え? それは……もちろんわかりますよぅ、あれですよね、あれ。もちろんわかってます」
「わからないならはっきり仰ってください。つまり、私たちが住んでいる世界のほかに複数の世界が存在しているということですね」
「神魔さんたちがいた世界みたいなものです? ワルキューレさんは元々ヴァルハラという世界にいたって言ってましたけど」
「ええ、それと同じようなものです。しかし。次元断層のひずみによって世界がくっついたら、それは並行ではありません。決して交わることがないのが平行なのです。ですので、私たちと関わりと持つ前の神魔たちの世界とでも言いましょうか」

 ミニードゥは首をかしげる。

「うーん……なんとなくわかったような……? それがどうかしたんです?」
「例えば、私たちには観測できない世界があったとします。そこではエミルもタイタニアもドミニオンもDEMもなく、エミル種族に似た人間という存在がいるとします。地球という場所の日本という国ということに仮にしておきましょうか。そこの世界の人たちが私たちを作り、操っているとしたらどうでしょう」
「操る……?」
「ええ、例えば漫画は作者が登場人物を作り、操った結果のものです。それと同じように私たちも漫画のようなものの登場人物だとしたらどうでしょう」
「そんなわけないですよぅ」
「さて、それはどうでしょうか。私たちは自分の意思で動いているつもりですが、気付かないうちに誰かに操られているという可能性もあります。ですが、それには気付いてませんし、気付くことはできません」
「ううー、話が難しくてミニーは頭が爆発しそうですよぅ!」

 話を聞いていたベイヤール・アルマが顔を上げた。

「頭が爆発すると気持ちよさそうなので、その役目はこのわたしにお任せを!」

                3

 次の日、アップタウンに人だかりができていた。ギルド元宮前や東可動橋にもたくさんにも人がいたが、一番多かったのはタイニーがタイニーアイランドへの道案内をしている広場だった。

 ミニードゥの目からは人しか見えず、何が起きるのかわからなかった。すぐ近くにいるドミニオン種族に尋ねてみた。

「あのう、何かあるんですか? イベントとか……」
「いや、オレもわからないんだ。なんか人がたくさん集まってたからなんかあんのかなーってここにいるんだけど、何なのかはわからない」
「う、うーん。そうなのですか。ありがとうございました」

 タイニーが何かをやるのかなとミニーは思ったけれど、だとしたら東可動橋のところにまで人が集まることはない。まったく見当がつかなかった。

 エミル種族など他にも色んな人に聞いてみたけれど、異口同音に「わからない」という答えが返ってきただけだった。

 こんなことは始めてで、今まで体験したことのないことが起きるような気がした。お祭りごとが好きなミニードゥはしばらくその場で待ってみることにした。

 五分、十分、と時間が経過した。

 何も起こらないし、起きる気配もない。
 なんでもカウンターのお仕事があるからそそろそ行こう……と踵を返したその時だった。

──エミル・クロニクル・オンライン運営チームです。
──十二年間のご愛顧していただき、感謝の念は尽きません。
──23:59をもってサービスを終了させていただきます。
──たくさんの思い出をありがとうございました。

──二分後にサーバーがシャットダウンします。

 頭の中に直接響いてくる声。機械的で何の感情も含まれていない音声だった。

「な、なんなのです?」

 運営? 思い出? シャットダウン? ミニードゥには意味のわからない単語ばかりだった。けれど、何か重大なことが起ころうとしていることだけはわかった。二分後に何があるのか、胸中は不安でいっぱいだった。
 心臓が早鐘を打つ。嫌な汗が頬を伝う。自然と呼吸が荒くなる。

 しかし──

 二分経っても何も起こらなかった。
 いや、「起こらなかった」が起こったのかもしれない。

 ミニードゥは胸に手を当て、ぎゅっと目を閉じた。

「なにか……なにか大切なものを失ったような気がするのです。すごくすごく大切なもの……。ミニーたちを守ってきてくれていた、もの……?」

 今まで感じたことのない悲しさに包まれ、ミニードゥは泣きそうになった。
 しかし、湧き上がる感情の正体がわからず、とまどうばかりだった。デジャブの感じるこの気持ちはなんなのか、記憶の糸をたどると見つけることができた。

「お父さんとお母さんだ……」
作品名:さよならの距離は 作家名:みなと