おろしがねの錬金術師
普段は組むことのない二人の仲を、世界の均衡を守るジ・オーダー・グランデの加護の編成により、崩されることとなった。
「オレ様が世界一かわいいに決まってんだろ?」
「クラリスちゃん最カワっ☆」
勝ち名乗りを上げたあと、二人の目線の間で激しく火花が散った。
「世界一ってのはなぁ、二人いちゃいけねえんだ。同列一位なんてオレ様は認めねぇ!」
「最カワを名乗れるのはこのクラリスちゃんだけだって宇宙創成から決まってるんだよっ☆ いぇいっ☆」
「なんならどっちがかわいいのか決めようじゃねえか!」
「のぞむところっ! いいよね、グラン?」
「……まあいいんだけど。まだ敵残ってるんだよな」
グランサイファーに戻ったあと、三人で夕食を食べる。普段、一緒に食事をすることはないのだけれど、カリオストロに「話とかがある」と言われたのだ。とかってなんだ。
「グランはオレ様と小娘のどっちがかわいいと思うんだ?」
「可愛いって言っても好みは人それぞれだし。まあ僕はジータが一番可愛いと思うけど」
「ああ?」
「カリオストロが一番かわいいですからウロボロス出さないで!」
夕食を食べている僕が危うくウロボロスの夕食になるところだった。食物連鎖。
「こんな野蛮な女はかわいくないよね。というわけでウチの勝ちっ☆ 審査員クラリスちゃんによりは最カワはクラリスちゃんで決まりっ☆」
「なんだとコラ!」
食卓は賑やかな方がご飯はおいしいというが、賑やかすぎると味を感じなくなるんだなと思った。
「というかさ、勝負して決めるんじゃないのか?」
このままでは二人の言い合いが終わらない。
「ああそうだな。片方の存在が消えれば必然的にもう片方が一番かわいいってことになるよな」
「そういうガチな勝負じゃないんだけど」
というより、世界中の女を殺せば一番かわいくなれるという理論は間違ってないけど、一番ブサイクでもあるような。
「穏便に勝負してくれよ」
「といっても何で勝負すりゃいいんだよ。グランサイファーのやつらに聞いて回って多数決か?」
「いや、グランサイファーの内部で決めても世界一かわいいってことにはならない」
というのは建前だ。過去にグランサイファー杯かわいいコンテストをやった結果、女装させられたヴァイト君が優勝した。今回もそうなれば話がややこしい方向に向かうので避けたかった。
「じゃあどーするの? やっぱり不戦勝でラリスちゃんが一番かわいいってことにする?」
不戦勝の意味わかってるのか?
「うーん。料理勝負なんてどうだ?」
「料理だぁ?」「料理ー?」
二人は異口同音に聞き返す。
「ああ。かわいさっていうのは外見的なものじゃない。人それぞれ好みが違いすぎるからな。けど、料理をする女の子をかわいく思うってのは男なら万国共通、年齢貧富種族関係なくみんな感じることだと思うんだ。どうだ?」
「料理か……。作ったことねぇけど最強の錬金術師のオレ様に不可能はない」
「どっかーん☆ってやればいいんでしょ? らくしょーらくしょー」
料理と錬金術はどちらも作るという作業のせいか、二人は納得した。
「で、オレ様の手料理を食える幸せな審査員はどうするんだ?」
「それが候補がいなくてな」
「ああ? この挺にゃ料理詳しいやつがたくさんいんじゃねーか」
「それがダメなんだ」
グランは悩ましげに首を振った。
「ローアインは?」
「惚れ薬使えばキャタリナさんが俺にメロメロスイカメロンじゃね? とか言ってガンダゴウザに薬入りのご飯をつまみ食いされてた」
「ヴィーラは?」
「私ったら砂糖と青酸カリを間違えてしまいましたわって言ってた」
「イッパツは?」
「ラーメン以外は口にする気が起きないらしい」
「チャーハンのヤイアは?」
「キッズ舌だし」
「煎餅のロジーナばあさんは?」
「入れ歯洗浄中」
「食べることなら大得意のルリアは?」
「つよばはっておいしいのかなって言ってた」
「カタリナは……聞くまでもねえか」
「だから候補がいないんだよ」
今度はカリオストロが頭を抱えた。
「あああ、この挺にはまともなやつがオレ様しかいねえのか!」
「君、よく人のこととやかく言えるね」
「ああ?」
「なんでもないです今日もいい天気ですね」
カリオストロはやれやれとばかりに椅子に深く腰掛けた。
「ま、この際だからグランでいいんじゃねーの」
「僕は料理のこと詳しくないし」
「平気だろ。お前、アサシンとか賢者とかレスラーとかスーパースターとかガンスリンガーとかひよこ鑑定士とかやってんだから、コックとか栄養士とかやるんじゃねーの」
「ひよこ鑑定士はやってないぞ……」
「とにかくやれ! 団長命令だ!」
「団長は僕だ!」
しょうがない。一人だと責任重大だからジータとビィを呼んで道連れを増やそう。
グランサイファーのキッチンは広い。というのも、大人数の食事を作るからなのだけれど、最近は人数が増えすぎてザンクティンゼルの人口を超えた。
「よっし、錬金術の神髄見せてやるぜ!」
「クラリスちゃんのハイパー錬金術をとくとご覧あれっ☆」
グランはテーブルに肘枕をついていた。
「……あのさあクラリス、前から思ってたんだけど。君が探してる錬金術師の開祖って隣にいるカリオストロじゃないのか?」
「違うよ」
「なんでだ?」
「だって、錬金術師の開祖って白いあごひげとか生やしてローブ目深にかぶってフォフォフォとか笑いそうな人だし。イメージ的に!」
「いや、開祖はオレ様なんだが」
「アレーディアって名乗ってるおじーさんが怪しいと思ってるんだよねー。フォフォフォとか笑いそうだし! イメージ的に!」
「いや、開祖はオレ様」
「はー。早く見つけないと実家に怒られちゃうなー」
「人の話聞けよ!」
グランが割って入ってたしなめる。
「まあまあ。とりあえず始めよう。終わらないし」
~十分後~
着替えてきた二人が現れた。
「そんじゃ美少女錬金術師の名はダテじゃないってところを見せてやるぜ!」
「……。それはいいんだけど。…………なんで裸エプロンなんだ?」
「だって~料理は愛情っていうもんっ☆ おいしくなーれって愛の魔法を使うにはね、かわいい恰好かじゃないといけないんだよぉ☆ オレ様の綺麗なケツに見とれちまうだろ? カリオストロったらかわいすぎてこまっちゃう~☆」
「キャラ作るのか作らないのか統一してくれ」
料理する時に油や熱湯が跳ねることもあるって知らないのではないか。本人がいいならいいか。
対するクラリスはきちんとエプロンをつけている。包丁を二刀流しているのは見なかったことにしておこう。
カリオストロとクラリスはお互いの恰好を見て、勝ったなという確信に満ちた表情をしていた。普通の人から見たら裸エプロンも二刀流も料理をする時の装備ではない。
「よし、やるぞ!」
カリオストロは自分に気合を入れるかのように声を張り上げた。
そしてはぁッ! という掛け声とともに、食材を宙に放り投げた。
……さすがは錬金術師の開祖。何かを作ることに関しては超一流ということか!
「オレ様が世界一かわいいに決まってんだろ?」
「クラリスちゃん最カワっ☆」
勝ち名乗りを上げたあと、二人の目線の間で激しく火花が散った。
「世界一ってのはなぁ、二人いちゃいけねえんだ。同列一位なんてオレ様は認めねぇ!」
「最カワを名乗れるのはこのクラリスちゃんだけだって宇宙創成から決まってるんだよっ☆ いぇいっ☆」
「なんならどっちがかわいいのか決めようじゃねえか!」
「のぞむところっ! いいよね、グラン?」
「……まあいいんだけど。まだ敵残ってるんだよな」
グランサイファーに戻ったあと、三人で夕食を食べる。普段、一緒に食事をすることはないのだけれど、カリオストロに「話とかがある」と言われたのだ。とかってなんだ。
「グランはオレ様と小娘のどっちがかわいいと思うんだ?」
「可愛いって言っても好みは人それぞれだし。まあ僕はジータが一番可愛いと思うけど」
「ああ?」
「カリオストロが一番かわいいですからウロボロス出さないで!」
夕食を食べている僕が危うくウロボロスの夕食になるところだった。食物連鎖。
「こんな野蛮な女はかわいくないよね。というわけでウチの勝ちっ☆ 審査員クラリスちゃんによりは最カワはクラリスちゃんで決まりっ☆」
「なんだとコラ!」
食卓は賑やかな方がご飯はおいしいというが、賑やかすぎると味を感じなくなるんだなと思った。
「というかさ、勝負して決めるんじゃないのか?」
このままでは二人の言い合いが終わらない。
「ああそうだな。片方の存在が消えれば必然的にもう片方が一番かわいいってことになるよな」
「そういうガチな勝負じゃないんだけど」
というより、世界中の女を殺せば一番かわいくなれるという理論は間違ってないけど、一番ブサイクでもあるような。
「穏便に勝負してくれよ」
「といっても何で勝負すりゃいいんだよ。グランサイファーのやつらに聞いて回って多数決か?」
「いや、グランサイファーの内部で決めても世界一かわいいってことにはならない」
というのは建前だ。過去にグランサイファー杯かわいいコンテストをやった結果、女装させられたヴァイト君が優勝した。今回もそうなれば話がややこしい方向に向かうので避けたかった。
「じゃあどーするの? やっぱり不戦勝でラリスちゃんが一番かわいいってことにする?」
不戦勝の意味わかってるのか?
「うーん。料理勝負なんてどうだ?」
「料理だぁ?」「料理ー?」
二人は異口同音に聞き返す。
「ああ。かわいさっていうのは外見的なものじゃない。人それぞれ好みが違いすぎるからな。けど、料理をする女の子をかわいく思うってのは男なら万国共通、年齢貧富種族関係なくみんな感じることだと思うんだ。どうだ?」
「料理か……。作ったことねぇけど最強の錬金術師のオレ様に不可能はない」
「どっかーん☆ってやればいいんでしょ? らくしょーらくしょー」
料理と錬金術はどちらも作るという作業のせいか、二人は納得した。
「で、オレ様の手料理を食える幸せな審査員はどうするんだ?」
「それが候補がいなくてな」
「ああ? この挺にゃ料理詳しいやつがたくさんいんじゃねーか」
「それがダメなんだ」
グランは悩ましげに首を振った。
「ローアインは?」
「惚れ薬使えばキャタリナさんが俺にメロメロスイカメロンじゃね? とか言ってガンダゴウザに薬入りのご飯をつまみ食いされてた」
「ヴィーラは?」
「私ったら砂糖と青酸カリを間違えてしまいましたわって言ってた」
「イッパツは?」
「ラーメン以外は口にする気が起きないらしい」
「チャーハンのヤイアは?」
「キッズ舌だし」
「煎餅のロジーナばあさんは?」
「入れ歯洗浄中」
「食べることなら大得意のルリアは?」
「つよばはっておいしいのかなって言ってた」
「カタリナは……聞くまでもねえか」
「だから候補がいないんだよ」
今度はカリオストロが頭を抱えた。
「あああ、この挺にはまともなやつがオレ様しかいねえのか!」
「君、よく人のこととやかく言えるね」
「ああ?」
「なんでもないです今日もいい天気ですね」
カリオストロはやれやれとばかりに椅子に深く腰掛けた。
「ま、この際だからグランでいいんじゃねーの」
「僕は料理のこと詳しくないし」
「平気だろ。お前、アサシンとか賢者とかレスラーとかスーパースターとかガンスリンガーとかひよこ鑑定士とかやってんだから、コックとか栄養士とかやるんじゃねーの」
「ひよこ鑑定士はやってないぞ……」
「とにかくやれ! 団長命令だ!」
「団長は僕だ!」
しょうがない。一人だと責任重大だからジータとビィを呼んで道連れを増やそう。
グランサイファーのキッチンは広い。というのも、大人数の食事を作るからなのだけれど、最近は人数が増えすぎてザンクティンゼルの人口を超えた。
「よっし、錬金術の神髄見せてやるぜ!」
「クラリスちゃんのハイパー錬金術をとくとご覧あれっ☆」
グランはテーブルに肘枕をついていた。
「……あのさあクラリス、前から思ってたんだけど。君が探してる錬金術師の開祖って隣にいるカリオストロじゃないのか?」
「違うよ」
「なんでだ?」
「だって、錬金術師の開祖って白いあごひげとか生やしてローブ目深にかぶってフォフォフォとか笑いそうな人だし。イメージ的に!」
「いや、開祖はオレ様なんだが」
「アレーディアって名乗ってるおじーさんが怪しいと思ってるんだよねー。フォフォフォとか笑いそうだし! イメージ的に!」
「いや、開祖はオレ様」
「はー。早く見つけないと実家に怒られちゃうなー」
「人の話聞けよ!」
グランが割って入ってたしなめる。
「まあまあ。とりあえず始めよう。終わらないし」
~十分後~
着替えてきた二人が現れた。
「そんじゃ美少女錬金術師の名はダテじゃないってところを見せてやるぜ!」
「……。それはいいんだけど。…………なんで裸エプロンなんだ?」
「だって~料理は愛情っていうもんっ☆ おいしくなーれって愛の魔法を使うにはね、かわいい恰好かじゃないといけないんだよぉ☆ オレ様の綺麗なケツに見とれちまうだろ? カリオストロったらかわいすぎてこまっちゃう~☆」
「キャラ作るのか作らないのか統一してくれ」
料理する時に油や熱湯が跳ねることもあるって知らないのではないか。本人がいいならいいか。
対するクラリスはきちんとエプロンをつけている。包丁を二刀流しているのは見なかったことにしておこう。
カリオストロとクラリスはお互いの恰好を見て、勝ったなという確信に満ちた表情をしていた。普通の人から見たら裸エプロンも二刀流も料理をする時の装備ではない。
「よし、やるぞ!」
カリオストロは自分に気合を入れるかのように声を張り上げた。
そしてはぁッ! という掛け声とともに、食材を宙に放り投げた。
……さすがは錬金術師の開祖。何かを作ることに関しては超一流ということか!
作品名:おろしがねの錬金術師 作家名:みなと