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代打の代打
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はじまりのあの日1 始めましたの六人

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エントランスで待っている、と、階段をおりる音がする。家族ではない足音。今から、家族になる、人の音。サムライだったあのひとは、黒のシャツと薄いベージュのパンツを、格好良く着こなして。サムライポニーだった髪は、後ろ結いに変えて。わたしの前に現れた。駆け寄って

「早いね、がっくん」
「がっくん」

自分を指さして、疑問符を浮かべる彼にたたみかける

「リンがっくんて呼ぶことにする」
「ありがとう、リン。いいあだ名つけるじゃない。早いったって、後輩の俺が、先輩待たせるワケにはいかないじゃない」
「そうなの、う~んわかんないや。ところでがっくん、リボン結べるかな」
「ああよし、やろうじゃない」

廊下、鏡の前。上手に結んでくれる彼

「わ~うま~い。何で出来るの、がっくん」
「俺、妹が三人いてさ。そいつらの世話、焼いてるうちに。遠く離れちゃったけどな。はいできあがり」
「ありがとう~」

わたしの頭を、二度ぽんぽん。遠くに離れた。少し寂しそうな声だった。鏡のなかの彼、淋しそうな顔だった

「あら、神威君。リ~ン、さっそく仲良しさんね~」
「なつかれたね、神威サン」
「ミクとも仲良くしてねがくさ~ん」

そこへやって来る家族達。がっしりしがみつくミク姉

「ああ、どうもそうらしい。もちろんじゃない、ミク。仲良くしよう」
「リン、がっくんともう仲良さん~」
「さ~あ、行きましょうか、神威さん」

カイ兄、年の近い歌い手の出現に、嬉しそうだ。わたしは彼の手を取り、家族とワイワイ歩き出す

「めー姉~、カイ兄~ぼくも、ぼくも~」

遅れてきたレンが、猛追してくる。六人、団子になって、雑談しながら歩く。そうしてリビングの扉の前、立ち止まる一団。不思議そうな、彼の顔

「神威君」
「神威サン」
「がくさんは、ここでちょっとまってて~」
「楽しみにしてて、がく兄」

彼の前、一本指を立て、めー姉。微笑みのカイ兄と、イタズラっぽく笑うレン。彼の前に回って、後ろ手に腕組みしながらミク姉

「なにか企(たくら)んでるんじゃな~い」

腕組みしながら、薄笑いの彼

「ま、クワダテテはいるわね。リンは、神威君のお相手してて」
「わ~い」

めー姉が、ウインク。家族が入ったあと、閉ざされるリビングの扉。部屋の外、わたしは彼に質問をする。矢継ぎ早、興味津々に

「あの刀って切れるの~」
「いや、アレ楽器。クリスタルみたいな音色が出る。切れたらあぶないじゃない。今度聴かせてやるよ」
「格闘家って何するの~」
「喧嘩。して金稼ぐ。嫌になってさ。自分の生活のために、人殴るの」
「今夜、うたう~」
「歌う歌う。そのために来たんだから」
「どうやったら、そんなに大きくなれるの~」
「好き嫌い無く、な~んでも食べて、良く運動することかな」
「これから―」
「「「「入って~二人とも~」」」」

扉が閉まっているため、くぐもった、家族の声