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代打の代打
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はじまりのあの日3 怪我とリボン

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かん高い、萌えボイスが耳に付く。BGMがわりに点けていた、TVを見やる。写し出される、新しいアニメの告知。彼氏の膝の上、乗っている彼女さん。またも、記憶図書館の扉が開け放たれる。贖わず(あがなわず)わたしは入場を決意する―

「初めてだね、よろしくがっくん」
「リンと一緒。気合い入れて行こうじゃない」

あの事変の後。わたしと彼のレコーディングは現実のものとなった。歌う。歌う。恋の歌。昔々を舞台にした。少し悲しい、恋の歌。精一杯に背伸びして、気持ちを込めて。彼の声から、いつも以上の本気が伝わってきたのが嬉しかった

こぎつけた、PV収録。撮影に使ったのは彼の家。その場所で、彼の膝の上、歌えるのが嬉しかった。その合間。休憩時間。わたしは彼に言ってみた。ぴろっと舌をだして。おどけたふりをして、半分は、本気で

「わたしはがっくんになら、買われても、飼われてもいいな」
「やめろ。大切に思ってるひとを、売り買いなんざしたくない。こんなところにやりたかない」

けっこう、まじめに怒られた。彼は言った。吉原を舞台にしたこの歌と、この設定が、実は好みでないと『わたしと』でなければ歌わなかったと。その言葉が嬉しすぎて。帰宅後、部屋で一人、ジタバタした。今もメンバー全員に秘密だ。それ以来、わたしと彼のデュエットは少しずつではあったけど。確実に増えていった

「今度は、この曲。ふたりに歌って貰おうかな」
「これは、カバーじゃねーぞ~」

アップテンポ。ノリのいい曲を収録。そのPVの撮影。彼と踊れるのが嬉しくて。慣れない、高めのヒールを履いたことも相まって。ダンスの動きが激しかったのも手伝って。結構ひどめに足首をひねった。挙げ句、転んで、膝を擦り剥いってしまった事がある

「~う~っ」

打った痛みで、息が止まる。擦り傷がビリビリする

「大丈夫かリン」

彼の問に答えられない。それでも顔をあげ、泣き笑う。大丈夫だと、口だけで言う。声は出ない

「無理するな。おい、救急箱もってこいっ、何突っ立てるっ」

いつになく、大声をあげる彼。まごつく、撮影スタッフに檄を飛ばす

「痛むぞ、染みるぞ、我慢しろ」

消毒薬を傷口に。必死こいて我慢。彼が直々に手当をしてくれる。ガーゼ、包帯を巻かれる。膏薬を足首に貼る。同じように、包帯

「すまなかった。俺が下手くそなばかりに」

言って、頭を撫でてくれる。それだけで、痛みが紛れたことを覚えてる。断じて彼のせいではない。わたしが、調子に乗って、うわついて。自爆しただけなのに。彼は、念のためと病院へ連れて行ったくれた。診断の結果、骨に異常は無かった。ただ、靱帯が少し伸びたということで、全治一週間と告げられた。病院から戻ってその日、一日中

「俺のタイミングが悪かったから。今日は一日、リンの召使い」

と、お風呂、お手洗い以外。どこへ行くにも抱いて、運んでくれた。それも嬉しかったのだけど。本当に嬉しかったのは三日後の、あの出来事―