はじまりのあの日4 摩天楼とむらさ・きいろ
スポーツのニュース。コメントを述べるのは、彼(か)の地で活躍した野球選手。引退した、偉大な日本人スラッガー。そうだ、あの日は冬だったから、観ることは叶わなかったけれど。わたし達は行ったのだ。彼が喝采を浴び、活躍していたあの土地へ。記憶があの地へ飛んでゆく。わたし達も、喝采を浴びたあの時へ―
「「「「「「「「「入浴」」」」」」」」」」
疑問符を浮かべるわたし達に、プロデューサー三人が告げる
「いや、New York。みんなでボケかまさないでよ」
「俺もビビッたけどさ。ミュージカルの聖地で公演してくれって」
「あたしも腰ぬかしたもん。そりゃ混乱するかもね~」
プロデューサー、三人の言葉。私が10歳、十二月初旬のお話。新たに加わった、三人目のプロデューサーは若い女の人。メンバーが増えて、仕事が捌(さば)ききれないから。手を貸してと、二人のプロデューサーに促され活動に参入した。わたしたち、そして、神威組のプロデューサーの後輩だという。二人は言う。感性と才能はオレ達より上だろうと。メンバー多数参加型の曲が得意。事実、彼女の評価は右肩上がり。膝に乗っているわたしと、乗せてくれている紫の彼。見るなり彼女は
「うふふ~あたしは押すよ、二人とも。バンバンきっかけ作っちゃうからねっ」
言った。そして、わたしと彼をよくデュエットさせてくれた。それが、やたらと嬉しかったけど、まだ、外見は少女といっても、差し支えないその人は
「気付かないの、気付こうよ二人とも」
とよく悪態をついた。その意味、あの頃は分からなかった
三人目のプロデュサーと共に、メンバーに加わった歌い手もいる
「初めまして、氷山キヨテルと申します。今、24歳です『識高の歌人(しきこうのうたびと)』というコンセプトを頂いてます。塾の講師から、歌い手へ転身させていただきました。ロックバンド活動でスカウトしていただきまして」
自己紹介したキヨテル先生。彼女の秘蔵っ子だという。宿題など、わからないことを聞けば、やさしく丁寧に教えてくれる。まさに、PROJECTの先生。今は、神威の家に居候(いそうろう)先生の歓迎会。髪を上げ、ロックモードで歌う姿を見て、リリ姉は目を煌めかせていた。それ以来、よく、リリ姉、カル姉の勉強の面倒を見ているという。特に、リリ姉からは、ことある事に質問攻めだとか
「それにしても、NYか。まさか、びっくり、サプライズじゃない。海外に、行ったことあるヤツ、お手上げ」
「ボクだ、かむい。英語できね~けど」
「ワタシもですわ。神威さん。イギリス英語なので多少差異はありますが話せます」
「私もです。英会話ならできますよ。書くのは苦手ですが」
「四人か。俺含めて、会話できるのは三人だな」
海外に行ったことがあるのは、派遣されたこともある、テト姉。留学経験のある、ルカ姉。ロックフェスタで滞在したキヨテル先生。そして、格闘技の大会でNYを訪れたことがある、紫の彼だけだ。その他のメンバーは海外遠征など初めての事
「「「PROJECTが世界に認められた」」」
プロデューサーは泣いていた。わたし達は、パスポートの作成、衣装の選択、送付。滞在計画などに、きりきり舞い
「でも、楽しみだわ~NY」
「楽しいとこだメイコ。だだし、気はぬくんじゃない」
「子供達から、目を離してはいけませんよ。防寒対策もしっかりしないといけませんね、神威さん」
「殿もテルさんも、少し過敏じゃないかな」
「いや、カイト」
「カイトさん」
「「なめたらいかん」」
「はい」
キヨテル先生と紫の彼。出発前から言っていた。出発当日、朝。たちどころにその日。国内の空港。ここからすでに、声を掛けられて。写真撮影を求められ、とても嬉しかった。大きな荷物ケースを押し、歓談する大人組。めぐ姉、リリ姉、カル姉、ミク姉も、ころころバッグを横に華やいで。わたしとレンは無邪気にはしゃぐ。浮き足立たないように、搭乗手続きを前に、キヨテル先生が告げる
「みなさん、NYは人が多く、街も広いです。一人で行動してはいけません。必ず、大人と一緒に動いてくださいね」
「いざとなったら、護ってやる。ゲキタイしてやるぜっ」
気遣ってくれるキヨテル先生。ジャブを打つテト姉
「「「「「わかりました~」」」」」
応えるチビ組
「それから、寒さも厳しいです。風邪をひかないように。必ず寒さ対策をしてくださいね」
「「「「「は~い」」」」」
キヨテル先生は、前々から、寒さ対策を考慮。プロデューサーと相談。現在、女性、男性。違ってお揃い。女性は、空飛ぶ蒸気機関車のヒロイン。白くした感じの格好。男性は、白のロングコート。赤くして、拳銃持ったらある漫画のパクリ。帽子、マフラーはおもいおもいの色形。そんな出で立ちの、目立つ集団
「ありがとうなテル。子供達、大切にしてくれて」
「とんでもない。子は鎹(かすがい)宝物ですからね」
「今、テルも言ったように、必ず誰かと手をつなげ。はぐれるんじゃない」
「ぽ兄ちゃんが言ったように。何かあったら、大きな声だしてね。絶対助けに行くからね」
「「「「「わかった~」」」」」
同様に彼、めぐ姉
「じゃあ、リンはがっくんと手をつなぐ」
「いいじゃな~い」
「ミクさん、レンくん。つなぎませんか」
「いいよ、ルカ姉」
「ミクも~」
両手に花のルカ姉
「ウチは、もうおっとな~。だれとつなぐかな~」
「いけませんよ。リリィさん。ご自分を大切に。大人の人とつないでください」
「なら、センセつないでくれんの~」
「いいですよ」
軽口のつもりだったのか。うつむいて、まっ赤になるリリ姉。手を差し出す先生
「あ~じゃあ、つないだげる。センセが迷子んならないよ~に」
「はい、よろしく」
早口で言って、がっしり腕組み。勢いでめがねがずれる先生。荷物ケースの上。腰掛けている黄色いの。押してくれてる、紫の。いつだったかも押されていたな。初めての飛行機、海外。ひたすら楽しみで、足をぱたつかせながら
「にゅ~よ~く初めてっ。た~の~し~み~」
「迷子にだけはなるんじゃないぞ」
わたしの頭に顎をのせ、真剣モードで告げる彼。きっと彼は、滞在中。誰よりもメンバーを気にかけていたのだろう。登場開始を告げるアナウンス。乗り込む機内。一角を貸し切り。よくここまで来たモノだと思った。バス一台、借りるのに、四苦八苦していたわたしたちが。いま、ジャンボジェットを。一区画とは言え貸し切る。本当にありがたい
「マナーは護って。でも、好きな順ですわってね~」
同行する、プロデューサーの言葉。わたしは、当然のように彼の隣に座る。と
「リン、窓側がいいんじゃない。景色見えて」
「ありがとがっくん。リンそうする~」
優しい彼の気遣い。ただ、怖いもの知らずだった頃なのに離陸の時、初めての感覚。エンジンの轟音。急に怖くなってしまって。隣に座る、彼の大きな手を強くにぎる
「大丈夫。大丈夫」
言って、両手でさすってくれる。優しい彼。飛び立ってからは、幸いにも機体は安定。初めての空の上。どこまでも青かった
「「「「「「「「「入浴」」」」」」」」」」
疑問符を浮かべるわたし達に、プロデューサー三人が告げる
「いや、New York。みんなでボケかまさないでよ」
「俺もビビッたけどさ。ミュージカルの聖地で公演してくれって」
「あたしも腰ぬかしたもん。そりゃ混乱するかもね~」
プロデューサー、三人の言葉。私が10歳、十二月初旬のお話。新たに加わった、三人目のプロデューサーは若い女の人。メンバーが増えて、仕事が捌(さば)ききれないから。手を貸してと、二人のプロデューサーに促され活動に参入した。わたしたち、そして、神威組のプロデューサーの後輩だという。二人は言う。感性と才能はオレ達より上だろうと。メンバー多数参加型の曲が得意。事実、彼女の評価は右肩上がり。膝に乗っているわたしと、乗せてくれている紫の彼。見るなり彼女は
「うふふ~あたしは押すよ、二人とも。バンバンきっかけ作っちゃうからねっ」
言った。そして、わたしと彼をよくデュエットさせてくれた。それが、やたらと嬉しかったけど、まだ、外見は少女といっても、差し支えないその人は
「気付かないの、気付こうよ二人とも」
とよく悪態をついた。その意味、あの頃は分からなかった
三人目のプロデュサーと共に、メンバーに加わった歌い手もいる
「初めまして、氷山キヨテルと申します。今、24歳です『識高の歌人(しきこうのうたびと)』というコンセプトを頂いてます。塾の講師から、歌い手へ転身させていただきました。ロックバンド活動でスカウトしていただきまして」
自己紹介したキヨテル先生。彼女の秘蔵っ子だという。宿題など、わからないことを聞けば、やさしく丁寧に教えてくれる。まさに、PROJECTの先生。今は、神威の家に居候(いそうろう)先生の歓迎会。髪を上げ、ロックモードで歌う姿を見て、リリ姉は目を煌めかせていた。それ以来、よく、リリ姉、カル姉の勉強の面倒を見ているという。特に、リリ姉からは、ことある事に質問攻めだとか
「それにしても、NYか。まさか、びっくり、サプライズじゃない。海外に、行ったことあるヤツ、お手上げ」
「ボクだ、かむい。英語できね~けど」
「ワタシもですわ。神威さん。イギリス英語なので多少差異はありますが話せます」
「私もです。英会話ならできますよ。書くのは苦手ですが」
「四人か。俺含めて、会話できるのは三人だな」
海外に行ったことがあるのは、派遣されたこともある、テト姉。留学経験のある、ルカ姉。ロックフェスタで滞在したキヨテル先生。そして、格闘技の大会でNYを訪れたことがある、紫の彼だけだ。その他のメンバーは海外遠征など初めての事
「「「PROJECTが世界に認められた」」」
プロデューサーは泣いていた。わたし達は、パスポートの作成、衣装の選択、送付。滞在計画などに、きりきり舞い
「でも、楽しみだわ~NY」
「楽しいとこだメイコ。だだし、気はぬくんじゃない」
「子供達から、目を離してはいけませんよ。防寒対策もしっかりしないといけませんね、神威さん」
「殿もテルさんも、少し過敏じゃないかな」
「いや、カイト」
「カイトさん」
「「なめたらいかん」」
「はい」
キヨテル先生と紫の彼。出発前から言っていた。出発当日、朝。たちどころにその日。国内の空港。ここからすでに、声を掛けられて。写真撮影を求められ、とても嬉しかった。大きな荷物ケースを押し、歓談する大人組。めぐ姉、リリ姉、カル姉、ミク姉も、ころころバッグを横に華やいで。わたしとレンは無邪気にはしゃぐ。浮き足立たないように、搭乗手続きを前に、キヨテル先生が告げる
「みなさん、NYは人が多く、街も広いです。一人で行動してはいけません。必ず、大人と一緒に動いてくださいね」
「いざとなったら、護ってやる。ゲキタイしてやるぜっ」
気遣ってくれるキヨテル先生。ジャブを打つテト姉
「「「「「わかりました~」」」」」
応えるチビ組
「それから、寒さも厳しいです。風邪をひかないように。必ず寒さ対策をしてくださいね」
「「「「「は~い」」」」」
キヨテル先生は、前々から、寒さ対策を考慮。プロデューサーと相談。現在、女性、男性。違ってお揃い。女性は、空飛ぶ蒸気機関車のヒロイン。白くした感じの格好。男性は、白のロングコート。赤くして、拳銃持ったらある漫画のパクリ。帽子、マフラーはおもいおもいの色形。そんな出で立ちの、目立つ集団
「ありがとうなテル。子供達、大切にしてくれて」
「とんでもない。子は鎹(かすがい)宝物ですからね」
「今、テルも言ったように、必ず誰かと手をつなげ。はぐれるんじゃない」
「ぽ兄ちゃんが言ったように。何かあったら、大きな声だしてね。絶対助けに行くからね」
「「「「「わかった~」」」」」
同様に彼、めぐ姉
「じゃあ、リンはがっくんと手をつなぐ」
「いいじゃな~い」
「ミクさん、レンくん。つなぎませんか」
「いいよ、ルカ姉」
「ミクも~」
両手に花のルカ姉
「ウチは、もうおっとな~。だれとつなぐかな~」
「いけませんよ。リリィさん。ご自分を大切に。大人の人とつないでください」
「なら、センセつないでくれんの~」
「いいですよ」
軽口のつもりだったのか。うつむいて、まっ赤になるリリ姉。手を差し出す先生
「あ~じゃあ、つないだげる。センセが迷子んならないよ~に」
「はい、よろしく」
早口で言って、がっしり腕組み。勢いでめがねがずれる先生。荷物ケースの上。腰掛けている黄色いの。押してくれてる、紫の。いつだったかも押されていたな。初めての飛行機、海外。ひたすら楽しみで、足をぱたつかせながら
「にゅ~よ~く初めてっ。た~の~し~み~」
「迷子にだけはなるんじゃないぞ」
わたしの頭に顎をのせ、真剣モードで告げる彼。きっと彼は、滞在中。誰よりもメンバーを気にかけていたのだろう。登場開始を告げるアナウンス。乗り込む機内。一角を貸し切り。よくここまで来たモノだと思った。バス一台、借りるのに、四苦八苦していたわたしたちが。いま、ジャンボジェットを。一区画とは言え貸し切る。本当にありがたい
「マナーは護って。でも、好きな順ですわってね~」
同行する、プロデューサーの言葉。わたしは、当然のように彼の隣に座る。と
「リン、窓側がいいんじゃない。景色見えて」
「ありがとがっくん。リンそうする~」
優しい彼の気遣い。ただ、怖いもの知らずだった頃なのに離陸の時、初めての感覚。エンジンの轟音。急に怖くなってしまって。隣に座る、彼の大きな手を強くにぎる
「大丈夫。大丈夫」
言って、両手でさすってくれる。優しい彼。飛び立ってからは、幸いにも機体は安定。初めての空の上。どこまでも青かった
作品名:はじまりのあの日4 摩天楼とむらさ・きいろ 作家名:代打の代打