二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Lovin 'you ~If~ 前編

INDEX|1ページ/6ページ|

次のページ
 
Lovin you ~If~

もしも、アムロがシャイアンから脱走出来ずにそこでカイルを出産していたら…というIfストーリー。


~ if ~

もしも少しでもあの瞬間がズレてたら
二人は違った運命を辿ってしまってた。
貴方と同じ未来をずっと一緒に見ていたい
同じ星を同じ場所で見つめていようよ
貴方の描く未来に私はいるのかな?
同じ宇宙を同じ想いで見上げていたいよ


もしもあの時、ガンダムに乗らなかったら。もしも、ア・バオア・クーで「同志になれ」というシャアの手を取っていたら…。
もしも、フラウと共にシャイアンを脱出できていたら…自分にはもっと違う未来があったのかもしれない…。
研究所内の独房で、大きくなったお腹をさすりながら、アムロの脳裏にそんな"If"ばかりが思い浮かぶ。


あの日、アムロはフラウ達と共にシャイアンからの脱走を試みた。
フラウ達の見送りにと向かった空港で、輸送機を奪取してハヤトの元に向かう計画だった。
しかし、貧血による目眩に襲われたアムロは、輸送機まであと一歩というところで、監視員に取り押さえられてしまい、計画は失敗に終わってしまった。
なんとか一緒にいたカツを逃す事が出来たが、結局、アムロはまた、あの地獄のような研究所に連れ戻されてしまったのだ。


「アムロ・レイ大尉、君は自分が何をしたか分かっているのかね?脱走罪は重罪だぞ!」
手錠を掛けられ、両腕を左右に立つ監視員によって拘束されているアムロに向かい、ニュータイプ研究所管理官、ブラウン大佐が冷たい視線を向けて叫ぶ。
アムロはブラウン大佐に一瞬視線を向けるが、直ぐに反らして小さな溜め息を吐く。
「アムロ・レイ!聞いているのか!?」
ブラウン大佐の怒鳴り声と共にバシンと頬を打つ音が響く。
アムロの頬は真っ赤に染まり、唇の端からは血が流れ落ちる。
「…聞いています」
それでも視線を合わせずにいるアムロにブラウンがカッとなる。
「貴様!その態度はなんだ!」
アムロの髪を鷲掴みにして上向かせると、もう一度思い切りアムロの頬を打ち付けた。
「ブラウン大佐、アムロ・レイは身重です。それ以上の暴力は母体と胎児に危険が及びます。」
ブラウン大佐は、暴力の手止めるよう進言するフラナガン博士に舌打ちをすると、アムロから手を離してもう一度アムロを睨みつけた。
「独房に放り込んでおけ!」
アムロは兵士に腕を掴まれ、独房へと連行される。
ガシャリと独房の扉が閉められ、薄暗い独房が更に暗くなる。
「…痛っ」
腫れた頬に手を当て、溜め息をつく。
「上手くいかないな…」
フラフラと備え付けの簡易ベッドに倒れこむと、そのまま目を閉じる。
『カツは…フラウ達は無事に日本に着けただろうか…。折角、危険を冒してまで助けに来てくれたのに…その苦労を無駄にしてしまった…。』
「ごめん、フラウ」
そして、自身の腹部に手を当てる。
「ごめん。逃してあげられなくて…。でも諦めないから…お前を私みたいにモルモットになんてさせないから…」
フラナガン博士達が進める研究の為、見知らぬニュータイプの男性との子供を妊娠させられ、絶望の淵にいたアムロを、フラウの言葉が救ってくれた。
経緯はどうあれ、血を分けた子供を愛してあげられないかと…その子は自分の家族になってくれる存在なのだと言ってくれた。
その言葉のお陰で、この子を大切に思う事が出来る様になった…。そして、守りたいと思う様になった。これは、子を守ろうとする母親の本能なのかもしれないが…。

その後もアムロは何度か脱走を試みるが、更に警備の厳しくなった研究所からは脱走するどころか、自由に動き回る事すら出来なくなってしまった。
常に看守二人に付き添われ、殆ど死角のない監視カメラで監視される。入浴すらも監視された。
妊娠後期には、極度のストレスと以前に受けた実験の後遺症、そして妊娠による体調不良で起き上がる事もままならなくなってしまった。
薄暗い独房の中でうずくまるアムロの瞳から涙が溢れ出す。
「どうしよう…もう自力じゃ逃げ出せない…。誰か…助けて…。」
ふと、「同志になれ」と差し出されたシャアの手が脳裏に浮かぶ。
「シャア…私を…連れて行ってよ…。」
あの時、生身で剣を交えた時、初めてあの人の素顔を見た。
自身が傷付けた額の傷から血が流れていたけれど、セイラに似た整った顔に…アイスブルーの瞳が印象的で凄く綺麗だった。

と、あの時、ア・バオア・クーでの戦闘の中でシャアに言われた言葉も次々とフラッシュバックする。
『貴様がララァを殺した!私からララァを奪ったのだ!』
『アムロ!貴様は危険な人間だ!だから私は貴様をここで殺す!』
『貴様はニュータイプのあり様を見せすぎたんだ!』
そして、ララァの言葉も蘇る。
『あなたには故郷も守る人もいない、人も愛してもいない!それなのに戦うなんて不自然なのよ!』
『あなたを倒さないとシャアが死ぬ!』

「ああ、私は…なんて都合のいい事ばかり考えていたんだ…。そうだ、私はララァを殺してしまったんだ。シャアから愛する人を奪ってしまったんだ。そんな私を連れて行ってくれる筈なんて…助けてくれるわけなんてないのに…。バカだな…」
そして、ララァを殺してしまったあの時、シャアから伝わってきた"哀しい"、“辛い"そんな思念…。
『シャア…ごめんなさい…。貴方から…ララァを奪ってしまった……。きっとシャアは私を恨んでる。憎んでる。私は取り返しのつかない事をしてしまったのだから。その罪を…どうやって償ったらいいんだろう…。いっそ…私なんて死んでしまった方がいいのかもしれない…。この子と一緒に死んでしまおうか…。守れないのなら…一緒に死のうか…』

アムロはゆっくりと立ち上がると、まるで狂った様に身体や頭を独房の壁に打ち付け始める。
額が切れ、独房の壁に血が飛び散っても、その動きは止まらず、ひたすら身体を打ち付ける。
過去に自殺未遂をしているアムロが再び自殺をしない様にと、独房には紐や食器どころか、ペン一本すらない。その為、もう壁に身体を打ち付けるしか方法が無かったのだ。
『ごめん、ごめん、ごめん、産んであげられなくてごめん、一緒に死のう』
アムロのその行動に、慌てた看守が必死にアムロを抑えつける。
「離せ!死なせて!私は生きてちゃいけないんだ!私は!」
その時、アムロは激しい腹痛に襲われその場に崩れ落ちる。
「あっ痛つ…うううう」
そして、下肢から生暖かいものが流れて出てくるのを感じた。
駆けつけたドクターがアムロの様子に慌てて叫ぶ。
「まずい!破水した!直ぐに処置室に!」


「うっくううう」
フラフラになりながらも、分娩台に乗せられたアムロは激しい陣痛に苦しむ。
「や…だ……。ううう」
そして、人間の本能である出産は、アムロの心が拒否しようとも抑えることは出来ない。
そして、とうとうアムロは男児を出産した。
弱った身体は限界を超え、もはや意識は虚ろだ。
赤ん坊を取り上げた医師によって、子供を胸元に抱かせられる。
子供はアムロと同じ赤茶色の髪で、早産の為、身体は小さく弱々しいが、必死にアムロに縋り付く。
その小さな命にアムロの瞳から涙が溢れ出す。
『殺せない…』
作品名:Lovin 'you ~If~ 前編 作家名:koyuho