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Lovin 'you ~If~ 前編

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「"同志になれ”そう言って、差し出された手を…アムロさんと共感した時に見ました。アムロさんは研究所での辛い日々を、その手を支えに耐えていました。」
それを聞き、セイラがカシャンとフォークを落とす。
「セイラ?」
「カミーユ…それは…本当なの?」
「はい。多分、男の人の手でした。そう…赤い男…。けれど…、それと同時にその男の人に対して罪悪感の様なものを感じているようでした。そうだ…アムロさんが心を失う直前に、その人に言われた言葉がアムロさんの脳裏に響いて…ギリギリで支えていた心を壊してしまった。僅かな希望を消し去ってしまったんです。」
それを聞き、セイラが顔を手で覆い、泣き崩れる。
「セイラ!?」
ミライが駆け寄り、セイラを支える。
「セイラ?どうしたの!」
「まさか…アムロが支えにしていたなんて!」
「セイラ?心当たりがあるの?」
「…兄さんなの…あの時、ア・バオア・クーで、アムロに“同志になれ”と言ったのは兄さんなの!」
「兄さんって…赤い彗星が?」
セイラはあの時の情景を思い出す。
ア・バオア・クーで剣を交えていた二人、兄とアムロは本気で戦っていた。
そう、兄は本気でアムロを殺そうとしていた。
『貴様がララァを殺した!私からララァを奪ったのだ!』
『アムロ!貴様は危険な人間だ!だから私は貴様をここで殺す!』
けれど、互いに剣を受けて相討ちとなった後、確かに兄は言った。
『同志になれ』と、そして、こうも言っていた。『貴様はニュータイプのあり様を見せすぎたんだ!』
兄はアムロが連邦にいたら、こうなる事を分かっていたのだ。
セイラは意を決すると、ブライトへと視線を向ける。
「ブライト、クワトロ・バジーナ大尉という人物を知っていて?」
「あ、ああ」
「その人物がシャア・アズナブルである事も?」
「セイラ…」
ブライトは…いや、エゥーゴの主要メンバーはクワトロ大尉がシャア・アズナブルである事を知っていた。今日、セイラに会うに当たって、クワトロの事を告げるべきか迷っていた。
「今日…私が調査依頼をしていた者から、兄の消息についての報告があったの。兄は今、エゥーゴにいると…クワトロ・バジーナと名乗り、ブライトが艦長を務める戦艦に乗っていると…。」
自身に答えを求めるセイラに、ブライトは小さく溜息をつくと。セイラに向き合う。
「ああ、間違いない。クワトロ・バジーナ大尉は俺が艦長を務めるアーガマに居る。エゥーゴのパイロットだ。」
セイラはブライトの答えを唇を噛み締めながらも受け止める。
そして、カミーユとファも驚愕の表情を浮かべる。
『クワトロ大尉がシャア・アズナブル!?そして…セイラさんの…お兄さん?』
セイラを見ながらカミーユは思う。
『そうだ、初めて会った時、何処かで見たことがあると思った。クワトロ大尉に似てたんだ』
セイラは涙を拭うとブライトに向き合う。
「賭けかもしれないけれど…アムロに兄を会わせましょう。」
「セイラ!?しかし、それは!ようやく少し落ち着いてきたアムロをまた追い込む事にならないか!?」
「そうかもしれない…でも、多分兄は…アムロをもう憎んではいないと思うの…。いえ、むしろ兄は…アムロを求めている…」
セイラの真剣な瞳に、ブライトが息を飲む。
「…クワトロ大尉がアムロを求めているというのは…本当か?」
「ええ、おそらく…」
「しかし…信じられん」
「そうね、確かに二人の間には、ララァというニュータイプの少女を巡って遺恨がある…。けれど…あの日、ア・バオア・クーで剣を交えていた二人は…互いの剣を受けて相討ちとなった瞬間にニュータイプ同士、共感し合い、心を通わせた…。」
「セイラ、君はその場にいたのか?」
ブライトの問いにセイラがコクリと頷く。
「ええ、二人が要塞の最深部に向かうのを感じて…追いかけたの。私が追いついた時、二人はモビルスーツを捨て、生身の身体で直接剣を交えて戦っていたわ。兄は…本気でアムロを殺そうとしていた。」
その言葉にカミーユが目を見開く。
『あの赤い男はクワトロ大尉だ!』
「けれど、心を通じ合わせた時…二人の中で何かが変わった様に感じたわ。そして、兄は同志になれと、アムロに手を差し出た。そして、こうも言っていた。アムロは…ニュータイプの有りざまを見せ過ぎたと、危険な存在だと。」
「ニュータイプの有りざま…確かにな。終戦間際、完全に覚醒していたアムロは…正直、我々ですら恐怖する程凄まじかった。あいつは単騎で一個戦隊を殲滅出来るほどの力を持っていた。」
「単騎で!?」
カミーユが驚きの声を上げる。
「ああ。事実、サイド6からの出航時、ジオン軍に待ち伏せされ、絶体絶命の状況下で我々が生き延びられたのは、アムロがリックドム十二機と戦艦二隻を撃墜して退けてくれたからだ。」
「凄い…」
「だが、その戦闘能力は、連邦にとっても脅威に映ったんだろう。戦後、ニュータイプ研究所でその能力が科学的に明らかになると、政府の奴らは元々正規の軍人では無いアムロが連邦に刃を向ける事を恐れた。」
「それで…幽閉ですか…」
「ああ」
ブライトは只の一軍人である自分にはどうにも出来なかった。と、悔しげに唇を噛み締める。
「あの時…我々の元になど帰って来ずに、シャアの手を取っていれば、こんな事にはならなかったかもしれないな。きっとこうなる事を彼は予測していたのだろう。」
「ブライト…今更言っても仕方がないわ」
自分を責めるブライトをミライが優しく慰める。
「今の大尉がアムロさんをどう思っているかは分かりませんが…、俺も会わせてみるべきだと思います。」
「カミーユ…」
カミーユがブライトへと強い視線を向ける。
「確かに…危険な賭けかもしれない。でも、このままじゃアムロさんは一生あのままだ!それに、俺たちだって…大尉だって次にいつ地球に降りられるか分からない。今しかチャンスは無いかもしれない。」
カミーユの言葉のブライトは意を決すると。コクリと頷く。
「…そうだな…。分かった。大尉に連絡をとって明日にでもこちらに来てもらおう。」
「艦長!」
ホッとした様子のカミーユの頭をブライトがくしゃりと撫ぜる。
「カミーユ、もしもの時は…フォローを頼むぞ!」
「はい!」
その様子を見ながら、セイラは自身の心の準備も整えなければと思う。自分を捨て、復讐に生きた兄と向き合う覚悟を…。

to be continued...
作品名:Lovin 'you ~If~ 前編 作家名:koyuho