二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

景琰と林殊

INDEX|1ページ/6ページ|

次のページ
 
「来た!!!」
簫景琰は立ち上がり、シ羅宮の外へ駆け出した。
ずっとシ羅宮の門の下で、しゃがんで待っていたのだ。
「小殊──────。」
シ羅宮から見て、だいぶ向こうに数人の女性と、小さな子供が歩いて来る。
景琰は、この御一行を心待ちにしていたのだ。
皇宮に到着したのは聞いていた。
そこから太皇太后に挨拶をしたり、皇太后に挨拶をしたり、皇后に挨拶をしたり、、、、、、。
シ羅宮の静嬪と景琰の元に来るまでは、なんとも煩わしい手順があるのだ。
━━━真っ直ぐここへ来れば良いのに。━━━
皇宮の暮らしは無駄が一杯だ。
だが、どれも外せない大事な事なのだと、母親の静嬪から諌められた。
「、、、けーい、えーん、、」
林殊も気が付いて、こちらに駆けてくる。
小さな身体で、一心にコチラに駆けてくるのが見えた。
そんな姿が、物凄く可愛らしい。
小さな従兄弟。
景琰の父と林殊の母は血の繋がった兄妹なのだ。王族の兄妹である。
景琰の父はこの大梁国の皇帝である。
林殊の母はその妹で、梁を守る『赤焔軍』の主帥 林燮に嫁ぎ、林殊を生んだ。
まだ四つ、やんちゃ盛りで目が離せない。
後ろから林殊の乳母が息を切らして付いて来る。林殊は乳母が付いてくるのが嫌なようで、力一杯、転がるように駆けてくるのだ。
「、、、あっ、、、、。」
転んでしまった、思い切り。
「、、、、ぅぇ──────、、、。」
景琰の声が漏れる。林殊は転んだまま泣いてしまった。
景琰が、乳母より先に林殊の元に着く。
「いたい───。」
泣く林殊を抱き起こして、衣服の汚れを払ってやるが、まだ泣き止まらない。
「ほら、大丈夫、大丈夫。どこも擦りむいてないよ。」
だいぶ、派手に転んだので、本当に痛かったのだろう。ふっくらした頬に涙が流れてる。
「遊びに行こう、小殊。庭園の池に、鯉が沢山いたよ。見に行こう。」
「こい!!!。」
林殊の顔がぱっと変わり、大きな目をくりくりと見開いた明るい顔になる。
「みたいみたい!!はやくいこう!!」
この大きな瞳に見つめられてしまうと、何でもしてやりたくなってしまうのだ。
林殊は、誰にでもこんな顔をする訳では無い。
景琰の兄、祁王と自分には特別懐き、駄々をこねても来る、この真ん丸な瞳を向けて。
表情も動きも愛らしくて、周りの者を虜にしてしまうのだ。
景琰は、林殊が弟のようで嬉しくて堪らないのだ。可愛い林殊を何処へでも連れて行きたい。周囲に自慢してやりたいのだ。
「いこう!はやく〜〜!。」
林殊が景琰の手を引っぱって、庭園の方に行こうとする。
景琰は林殊の頬に残る涙の筋を、掌で拭いてやるが、林殊はもう、待ってはいられない様子だ。
景琰は、ようやくここに着いた林殊の母、晋陽に挨拶をする。
「叔母様、小殊と遊んで来て良い??。」
晋陽はニッコリと微笑み。
「良いですよ。」
「あまり、無茶をしてはいけませんよ。」
林殊に言含める。
怪我をするのも、泣き出すのも、大概林殊が悪いのだ。
景琰が、林殊と一緒に遊んでくれるのならば、安心だ。
景琰はこの国の皇帝の息子、皇子の立場なのだが、母親の身分が低い。
元は医女で、何か後ろ盾がある訳でも無い。
晋陽は、だからという訳では無いのだが、景琰と景琰の母 静嬪には、遜る気になれないのだ。
晋陽だけが、特別にそう感じる訳ではなく、この皇宮中に静嬪に対しては、そんな空気が漂っている。
だが、静嬪も景琰も、人柄が善良なのは知っていた。
色々な立場を棚に上げての、大人の、母親としての付き合いなのだ。
晋陽も静嬪も、ただ、互いの子が健やかに育ってくれれはそれで良い。ただその想いだけだった。

二人が駆けてゆくのを、晋陽は微笑んで見送っていた。

庭園は林府のものより、はるかに広大だ。
大きな池があり、池に架かる橋もあり、登るのにちょうど良い樹木もあり、まだ小さい林殊にも魅力的なのだ。
そして何より、二つ上の景琰が、軽々と木に登ったり、大きな庭石から飛び降りたり、、、。
景琰の一番上の兄、祁王 景ウはもっと大きな木に登ったり、池に滝のように水を落とす、ちょっとした岩山のような高い所からも、軽々と飛び降りるのだ。
林殊には、景ウは雲の上の憧れの存在でしかないが、年の近い景琰は、好敵手なのだ。
景琰が出来るならば、林殊は自分にも出来ると思っていて、相当な無茶をする。怪我も幾度もあった。
痛い目に遭った林殊は、その度に大泣きして太監に抱えられ、侍医の治療を受ける。
始めのうちは静嬪は、ちゃんと面倒を見る様にと、一緒にいた景琰を注意していたが、度重なるうちにどうやら、我が子景琰の注意が足りない訳では無い事に気が付いた。
太監と侍医が係わると、どうしても騒ぎが大きくなりがちだ。
騒ぎになると林殊の父親の耳にも入り、母親が叱られたり、林殊が叱られたり。
ただ、祁王や景琰の真似をしたかっただけなのだ。まだ身体が小さく力もないので、真似を失敗すれば、林殊が痛いだけなのだ。
母親の言うことなどは聞かぬのだろう、林殊はまた騒ぎを繰り返すのだ。
だが周囲の者達は、あの人懐っこい瞳で見られて、最後まで叱り続けることなど出来ない。
もう少し、物事が分かる年になったら、林殊とて騒がぬようになるだろうと周囲は思っていた。
、、、林殊の瞳に屈せぬ者も、幾らかはいたが。

二人は池に着き、池の側で縁りを叩いたり、水面を木の枝で叩いたりしていた。
幾らか二人に寄って来る鯉もいた。
景琰は、やっと追い付いたシ羅宮の官女に、この魚達にやる餌を取りに行かせた。
そして林殊の乳母はあちこち池の周りを探し回り、ようやく林殊を探しあてたようだった。
乳母は息を切らしている。
林殊と景琰は構わず遊んでいた。
早く官女が餌をもってくればいいのに、待ちきれない二人だった。

「靖王殿下、林殊様、、。」
夢中で水面を叩いて遊んでいる二人に、乳母がひそりと声をかけた。
景琰が振り返ると、後ろに兄の献王 簫景宣が、太監と官女を大勢引連れて立っていた。
「あ、、。」
景琰は急いで立ち上がり、兄、献王に挨拶をする。
だが、林殊は献王が来たことに気付かぬようで、林殊は夢中で水を叩いて遊んでいる。
「小殊、献王に挨拶するんだよ。立って。」
小殊は遊びを止めようとはせず、立とうとはしなかった。
「ほら、小殊。」
景琰は無理に遊びを止めさせて、立たせようとするが景琰の手を振りほどき、また遊びたすのだ。
景琰は困ってしまう。
兄、献王は景琰や林殊よりも遥かに立場も勢力も上なのだ。母親の越妃が寵愛を受けているせいなのだが。
「景琰、林殊一人、言うことを聞かせられないのか?。」
献王がせせら笑う。後ろにいる献王付きの太監と官女も、くすくすと笑い出している。
「お前の家来だろ、先が思いやられるな。」
嫌な奴だった。こうして弱い者をからかって、楽しんでいるのだ。
林殊も小さいながら、献王の嫌な部分を感じている様で、この年で嫌いな者には挨拶もしない。
大概はまだ小さいからと勘弁してくれるが、それが悪いのか。
母親が公主という立場のせいか、誰もその事を指摘出来ないのだ。
特に景琰は、主従の立場が逆になっていると、陰で笑われているのだ。
作品名:景琰と林殊 作家名:古槍ノ標