天に昇る気持ち(コレットは死ぬことにした)
「ハデス様...」
「コレット…その…この間はすまなかった。」
ハデスはコレットを抱きしめながら謝罪した。
「? 何のことですか?」
「.....海で...その...なんだ、
くちづけを///しそうになったことを
詫びなければと思っていた。」
しどろもどろで話すハデスを愛しく思い、
コレットは嬉しさをごまかすつもりで、
つい意地悪なことを言ってしまう。
「私...あのキスはハデス様、
誰にでもするのかなとか、
やっぱりゼウス様のお兄さんだし、
一緒なのかなとか・・・」
そんなことは一度も思ったことはないが、
ちょっとかまをかけてみる。
「なっ、私の気持ちをゼウスと一緒にするな。」
「でも、謝るってことはしまったと思ってるってことで
私の存在ってそういう欲望をぶつけるだけの
存在なのかなとか・・・」
「よくぼっ////・・・何を言っている!
や...でもお前があんまりかわいいことを言うから、
ついしそうになったという意味では
確かに欲望なのだが、いやでも決して
誰でもいいってわけではなくてだな…」
再びしどろもどろ、困り果てた顔で
言い訳をするハデスが愛おしい。
コレットは笑顔を浮かべ、うんと背伸びして、
ハデスの頬にキスをした。
「わかりました。
こういう気持ちですね///」
「おまっ…!!!///」
ハデスは頬に手をやった。
「ハデス様が可愛いから思わずしちゃいました。」
ニッコリ笑うコレットと目を合わせ、
ハデスは優しい笑みを浮かべた。
「可愛いって・・・お前は初めて会った時から
私に屈辱を与え続けているな。」
「嫌でしたか?その割には顔色がいいようですけど?」
「ふ・・・お前にはこの冥王も適わぬな。」
ハデスは思わず声をあげて笑いそうになった。
そして少しかがみ、
コレットの顎に手を添えて
ゆっくりとキスをするところまできて、
「今度はしてもよいのだな?」
本当はしてほしかった。
嫌どころか、未遂で残念、
そういう気持ちが自然とあったのは確かだった。
今は至近距離でささやかれて、どうにかなりそうだ。
「嫌と言われても、お前が先にしたのだから止められぬぞ?」
「・・・はい///。」
コレットの頬は蒸気し、うるんだ眼で返事をした。
ハデスとコレットは、ふわっと、軽く唇を合わせた。
ビリッと心地よく甘い痺れが二人の中に走る。
そっと唇を離し、またハデスはコレットを抱き寄せた。
「今日は気絶せぬな。」
前に胸元に唇を寄せた時は、
目をぐるぐる回したのだ。
「///妄想で何度もしましたので…」
「は?」
「いいえっなんでもないです!」
「じゃあ、もう少ししても問題ないな?」
ちゅ、ちゅ・・・と頭の上から、少しずつ下がり、
唇も何度か合わせる。
それは愛しいものをいつくしむように、優しく、甘く、
そのたびにビリビリと快感が走り、立っていられなくなる。
「ちょ、ハデッ・・・も、むっ、無理です///!!」
「もう終わりか? なんだ、残念だな。」
残念?! コレットはまた目を回しそうだった。
自分の想像以上の気持ちよさと甘さに酔っていた。
これが神様のキス?!
こんなの何回もしたら本当に死んでしまう!
ハデスはハデスで、会えない切なさのあとでの
この愛しきものをいつくしむ喜びは
何物にも代えがたかった。
「ハデス様...会えて嬉しい。」
ハデスの腕の中で身を任せ、コレットはつぶやいた。
「私もだ。」
「.....」
好きだ。
そう伝えたい気持ちは、お互い抑えた。
神と人間、生きる時間が違いすぎる。
いつか来る別れを思うと、
好きと伝える分だけ別れが辛くなる。
そんな気がしていた。
会えて嬉しい反面、
永遠ではないこの時間への思いも募る。
でもそのために離れるということもできない。
今だけ...そう思いながらも
溢れる愛しさを隠し通すこともできず、
またどちらからともなく唇を重ねた。
作品名:天に昇る気持ち(コレットは死ぬことにした) 作家名:りんりん