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はろ☆どき
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ハニーマスタード&パンプキン

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「ちわー! ……おっと?」
エドワードがいつものごとく、勢いよくドアを開けて司令室へ足を踏み入れ――かけたところで、何かに躓きそうになり急停止した。
「こんにちは。うわっ、どうしたんですか、これ?」
 入口で立ち止まってしまったエドワードの後ろから司令室を覗き込んだアルフォンスも、思わず驚きの声(呆れ声かもしれない)をあげた。司令室に入ってすぐの一角に、大量のオレンジ色の丸い物体がごろごろと積み上がっていたのだ。
「やあ、エドワード君、アルフォンス君。いらっしゃい」
「久しぶりだな、大将。アルも」
「二人とも、そんなとこに突っ立ってないで入って来いや」
「お久しぶりです、皆さん。ええと、これはカボチャ……ですよね」
 顔馴染みの面々に声をかけられて、先に気を取直したらしいアルフォンスが気になる物体について確認をする。
「ウリ科カボチャ属に属する蔓性植物の果菜で、原産地は南方と言われていますが、現在は北から南までの各地で栽培されており、カロチンやビタミンを豊富に含むいわゆる緑黄色野菜であるところのカボチャですね」
「それは見ればわかるけどさ……。何でカボチャがこんなところに、こんなに沢山積み上げられてんの?」
 ファルマンの薀蓄を聞かされ、我に返ったエドワードもようやく中に入ってきて、積み上げられたカボチャ達を検分し始める。よく見るとオレンジだけでなく黄色や緑のもの、形も丸っこいものからウリのように細長いものもあり、大小様々だった。
「それな……」
 誰かが口を開きかけたところで、奥の扉からトレイを持ったホークアイが入ってきた。
「あら、いらっしゃい。二人とも元気そうね」
「「はい!」」
 二人が声を揃えて元気よく返事をしたので、『よろしい』とばかりに彼女は微笑んだ。ちょっとブラハを教育している時の様子に似ている――なんてことは誰にも突っ込めない。
「ちょうどよかったわ。今、皆で休憩をとるところだったの。エドワード君、カボチャは好きかしら?」
「うん、好きだけど。もしかして、ここにあるやつ?」
エドワードが目の前のカボチャの山を指差す。
「それを少しもらってカボチャのパイを焼いてみたの。よかったら食べていって」
「わ、中尉のお手製? もちろん、いただきます!」
「じゃあ、エドワード君にも飲み物を用意するわね。紅茶がいいかしら」
「ありがとう!」
 ホークアイは他の者にはコーヒーのカップを置くと、再び給湯室へと姿を消す。
「紅茶は中尉の私物なんだぜ。お気に入りのやつ。いいなあ、エドは」
「まあ、我々は紅茶なんて淹れてもらっても良さがわかりませんし……」
「大将も中尉のお気に入りだからな」
「まあまあ、皆さん。パイをご相伴に預かれるだけでもありがたいじゃないですか」
 口々に言いたいことを言いながら、休憩用のテーブルを囲む。テーブルには各自のコーヒーカップと、切り分けられたパイが置いてあった。
「それで結局、このカボチャはどうしたんだ?」
「それがですね。先日、大佐が街でとあるご婦人をトラブルから救ったそうなのですが」
「そのご婦人の実家が東部の田舎で農家を営んでいるとかで、お礼に大量のカボチャを差し入れてくださったんです。皆さんでどうぞと」
「なんでも、今年は大豊作なんだと」
「それにしても多くねえ? しかも大きさとか形とかばらばらだし」
「時期ものだし、司令部にいるやつ全員に一個ずつ行き渡るようにってことらしいんだが」
「家庭のある奴はまだしも、独りもんとか単身者は生で一個もらっても消費できなくてな」
「ここの食堂で料理してもらえば?」
 それならある意味、皆に行き渡るのではなかろうかとエドワードは思った。
「大半は提供したのよ。それでここ数日、カボチャのメニューが続いているの。今日のメニューもカボチャのシチューだったから、後で食べに行くといいわ」
 紅茶を淹れて戻ってきたホークアイが、エドワードの前にカップを置いて言った。
「お、カボチャのシチューいいな。美味しそう~」
「煮込みとかカレーにも使っていてどれも美味しいのだけど、作る方はメニューのやりくりに困っているようよ」
「食堂で、カボチャを使った料理のアイデアを募集してたよな」
「へえ。中尉のパイも美味しいよ!」
「ありがとう」
 そこへがちゃりと司令室のドアが開き、ロイが入ってきた。何処かから戻ってきたらしいが、手には紙袋を持っている。
「おや、来ていたのか、鋼の。アルフォンスも」
「こんにちは、大佐。ついさっき着いたところです」
「よお、大佐。なんかまた女の人にいい顔したんだって?」
「人聞きの悪い……ああ、そのカボチャの話を聞いたのか」
 ロイは苦笑しながらカボチャの山を見やる。
「心遣いは嬉しい限りなのだがね」
「大佐もよろしければパイをいかがですか? お口に合うかわかりませんが」
「中尉のお手製かね。是非いただこう。悪いが執務室へ持って来てもらってもよいかね?」
「承知いたしました。コーヒーと一緒にお持ちします」
「頼むよ。鋼のは報告書があるんだろう? パイを食べ終わってからでいいから、執務室へ来たまえ」
「うん。もう食べ終わったからすぐ行くよ。中尉、ご馳走さま! 美味しかった」
「どういたしまして」
 エドワードは紅茶を飲み干して合掌すると、ロイの後を追って執務室へ入った。ロイはロー テーブルに持っていた紙袋を置くと、エドワードにソファーに座るよう勧め、自分も対面に腰掛けた。このまま休憩を取るつもりのようだ。
「実はカボチャをくださったご婦人に、話の流れで粒マスタードが好きだと言ったら、これまた大量にいただいてしまってね。こちらは彼女のお手製だそうで、さすがに司令部中へ配るほどではないのだが、私一人では消費するのに何年もかかりそうな量なんだよ」
「随分人が良いんだなあ」
「それで、ついでにマスタードに合うカボチャ料理はないか聞いてみたのだがね。そうしたら、これを教えてくれたんだ」
 ロイはそう言って、紙袋の口を広げてみせた。エドワードが中を覗くと、小分けの容器が幾つか入っており中身は黄色いポテトサラダのようなものに見えた。
「カボチャのサラダ?」
 見たままを言ってみる。
「食べてみるかね?」
 ロイは紙袋から容器を一つ取り出した。
「いいのか?」
「ああ、どうぞ」
 蓋を開けて木のフォークまで差し出されては、食べないわけにはいくまい。フォークを受け取ると少し掬って口に入れた。
「んっ……」
 カボチャの自然な甘みに、マスタードと胡椒がけっこうピリッと効いている。見た目よりパンチのある食感だ。
 それから……。
「粒マスタードとマヨネーズに粗びき胡椒。それとこの甘みは……蜂蜜?」
「正解だ。すごいな、一口食べただけで調味料の種類がわかるとは」
「美味い。カボチャのホクホク感に粒マスタードぷちぷちした感じとか、調味料の辛みと甘みがよく合ってる」
「『カボチャのハニーマスタード和え』だそうだ」
「へえ。大佐が作ったの?」
「まさか。レシピをもらったのだがね。自分では無理だから、ここの食堂にマスタードを提供して作ってもらったんだよ」
「調味料の量とかわかってるんなら、和えればいいだけじゃん」