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BLUE MOON 後編

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 それから、忘れられたくないという想いは、神や人だけではなく、物や植物にもあるらしいと、そんなことも知った。
 だとしたら、飛び梅はあながちフィクションではないかもしれない。
(何か根拠があって……?)
 そんなことを考えはじめて、何やら可笑しくなってきた。
「アーチャー?」
「……くくっ…………」
「なに? どうしたんだよ?」
「ああ、想いというのは、一筋縄ではいかないものだとな」
「ん? なんだ、それ?」
「お前をはじめとして、な」
 士郎はますます意味がわからない、と首を捻る。
「……だけど、なんか、アーチャー、ご機嫌だな?」
「ああ」
 この磐座に士郎とともにいて不機嫌になることなどないだろう。
 あの日のように青い空の下でも、温もりを分かち合える。消えていく士郎になんの手も打てなかった自身を嘆いた日々も、今となっては懐かしい。
 再びオレの胸に頭を預けた士郎の髪を撫で、また青い空を見上げた。
 水音が、時折、耳に届く。
 穏やかな磐座で安穏と過ごす幸福を満喫する。
 愛しい者を胸に抱き、懐かしい者たちの面影を浮かべて、寝息をたてる士郎に倣い、オレも瞼をそっと下ろした。



***

「……相変わらずじゃのう」
「ええ、お幸せそうです」
「しかし、我は本殿へ来いと阿に伝えたはずじゃが……」
「阿には、一度きつく言うて聞かせねばなりませぬな」
「……まあ、よい」
「よろしいのでございますか?」
「うむ。たいした用でもない。姉上がまたしても、あやつらを寄越せと仰せなだけじゃ」
「天照大神は、まこと……」
「まったく、あやつらは我の神使であるというのに……」
「さようでございますね」
「啼沢女、何やら楽しそうであるな?」
「ええ、はい。大神のお気持ちもわからぬでもありませぬゆえ……」
「そうか……。そうじゃな、あやつらは、まこと我ら神々を魅了する、人の子よ……」
 素戔嗚尊は笑み、やがて午睡を貪る二人に声をかけることなく、本殿へと戻っていった。


 想イハ、
 風ニ乗リ、
 花ニ乗リ、
 疾ク、
 想ウ者ヘト
 辿リ着ク……。


BLUE MOON 後編 了(2017/11/6)
作品名:BLUE MOON 後編 作家名:さやけ