蒼龍な二人
「まさか、力を貸していただけることになるなんて」
旅支度を整えたカタリナは微笑んでみせた。
ゼルナム族を倒し魔王の鎧を手に入れたところで、再び西に戻ることにしたのだが、バイメイニャンが共に力を貸してくれることになったのだった。あとで分かったことだが、彼女の術士としての威力はハーマンを遥かに凌ぐものであり、この先四魔貴族と戦うカタリナたちによって、強力な術士が仲間になってくれることは願ってもないことだった。
「アビスの脅威に立ち向かうために、あたしの力が必要だと思ったまでじゃよ。術に関してならまだまだ教えられることもあるじゃろうし。なぁ、ハーマン」
ハーマンは黙って肩をすくめた。曖昧な笑みを浮かべながらカタリナは言った。
「二人で一緒にいた間に、随分仲良くなったと思ったのだけど……?」
「やめてくれよ全く」
「素直じゃない奴じゃ」
「どういう意味だよ」
「用意はできましたかな?」
外で待っていたティベリウスがハーマンたちを呼びに来た。
「トラックスさんもレオニードさんもお待ちですよ」
「ごめんなさい、もう行きます」
「いやいや、再び乾いた大河とナジュ砂漠を越えるのですからね。準備を万全にしておくのは当然ですから」
外に出ると、玄城からヤンファンが見送りに来てくれていた。ツィーリンもその隣に控えている。
「老師、くれぐれもお気をつけて。カタリナさん、他の皆様方、老師をどうぞよろしくお願い致します」
「老師、無事のお帰りをお待ちしております」
「分かっておる。二人とも達者でな。あたしが戻ってくるまでツァオガオに好きにさせるでないぞ」
一行が旅立っていくのを、ヤンファンとツィーリンは長い間見送っていた。
気落ちしている風のツィーリンに、ヤンファンはやさしく言う。
「あの方たちが戻ってこられるまで弓矢の腕を磨いていれば、いつかお前も西へ行けるさ」
「……ええ、そうですわね。でも、私が気にしているのは、老師はもちろんこのままあの方たちを本当に行かせてよいのかどうかということで……」
「それは……確かにな……」
冒険者というにはあまりに平均年齢の高い一行を、二人はいつまでも見送っていた。
――終――