鳥籠の子供達2〜Second〜
~Second~
地球のオーガスタ研究所から、ネオ・ジオンの拠点である『スウィート・ウォーター』に、アムロ・レイのクローンであるファースト、セカンド、サード、フォースの四人はやってきた。
アムロ・レイの記憶を移植され、アムロとして生きて来たファーストは、そのままアムロとしてロンド・ベルに所属し、他の三人は現在、ラー・カイラムのブライトの元に預けられている。
「すまんな。まだネオ・ジオンでのアムロの立場は微妙でな。君たちの身の安全を図る準備を整えるまでの間、ラー・カイラムで過ごしてくれないか?」
シャアからの指示に逆らえる訳もなく。
セカンド達は今、ラー・カイラムで過ごしている。
「セカンド!」
「どうした?サード」
「今からアストナージがモビルスーツを見せてくれるって言うんだ。セカンドも一緒に行こう!」
フリールームでブライトとコーヒーを飲んでいたセカンドの元にサードが飛び込んでくる。
三番目のクローンであるサードは15歳で、その見た目は、一年戦争当時のアムロそのままだ。
ブライトはその姿を見つめ、懐かしそうに目を細める。
セカンドはサードの誘いに、少し思案してから首を横に振る。
「オレはいいよ。サード行っておいで」
「えー?行かないの?」
「ブライト艦長に話があるし、また今度な」
「うん、分かった。それじゃ行ってくる!」
サードはまだ慣れない無重力の空間に戸惑いながらも、嬉しそうにドックへと向かって行った。
「君は良いのか?」
ブライトが不思議そうにセカンドを見つめる。
「ええ、一応知識は教え込まれているのでありますが、サード程興味も無いので。」
セカンドの答えにブライトが顎に手を当てて頷く。
「そうか…、やはりクローンといっても別人なんだな。アムロだったら大喜びしそうな誘いなのに、興味が無いとは…」
「俺はファーストのスペアだったんですが、ファーストが表立って行動したお陰でもう一人の“アムロ・レイ”を存在させる訳にもいかず、記憶を移植される事が無かったので、今の人格が安定して構築されたんです。」
「…そうか…」
「でも、全く興味が無いわけではないですよ。昔“ゼロ”と過ごした時に色々教えてもらった時はすごく楽しかった。」
“ゼロ”、セカンド達がそう呼ぶのは、彼らのオリジナルであるアムロ・レイの事だ。
研究所ではオリジナルの事をそう呼んでいた。
「アムロと?」
「ええ、あの時はまだ子供だったので、簡単な事しか教えて貰っていませんが。」
セカンドの言葉に、ブライトが疑問の声を上げる。
「君は今いくつなんだ?」
「肉体年齢は23歳です。クローンとして目覚めてからは…まだ10年程ですかね。何度か成長促進処置を施されてますから。」
「成長促進…そんな事が出来るのか?それで、今後はどうなるんだ?」
「今の状態で生きていけば普通に歳を取ります。」
コーヒーを飲みながら事も無げに語るセカンドに、ブライトが眉を顰める。
「研究者って言うのは人の成長までも操るのか。酷い話だ。」
ブライトの憤りにセカンドがクスリと笑う。
「ブライト艦長は俺たちを『人』として扱ってくれるんですね。ありがとうございます。」
「当たり前だろう!以前に君たちのようなクローンの強化人間の少女に会ったことがあるが、彼女達だって普通の人間だった。」
「強化人間…、その子達は?」
セカンドの問いにブライトが小さく溜め息を吐く。
「戦闘でな…。可哀想なことをした。」
「そうですか…」
「ところでオレに話って何だ?」
「あ、はい。フォースの事です。」
「フォース?」
フォースは四番目のクローンで、今5歳の子供だ。
「ええ、あの子はまだ幼いので、今からでも十分普通の子供と同じように生きていけると思うんです。それで、もし可能ならば養子に出して両親のいる家庭で育てたいと…」
セカンドの言葉に、ブライトが頷く。
「そうだな。しかし、あの子もニュータイプだろう?そうなると普通の夫婦では持て余すかもしれんな。」
アムロ・レイのクローンである四人は、年齢や性格はそれぞれ少しずつ異なるが、容姿やニュータイプ能力は、オリジナルのアムロ・レイからそのまま引き継がれていた。
「そうですね…」
セカンドはブライトの言葉に小さく溜め息を吐くと、残念そうに頷いた。
「まぁ、そんなに直ぐに諦めるな。総帥にも相談して考えてみる。」
「はい、ありがとうございます。」
「それより、君やサードは今後どうしたい?サードはスウィート・ウォーターで暮らせるようになったらハイスクールに通うか?君もカレッジにでも入るか?」
「え?あ…」
ブライトの提案にセカンドが驚いた表情を浮かべる。
「なんだ?自分の事は考えてなかったのか?」
「あ…はい」
「君はどうも自分のことを後回しにする所があるな。サードとフォースは君が面倒を見ていたのか?」
「そんな事は…、それにサードは俺とファーストの二人で面倒見ていましたし。フォースはファーストがシャイアンに送られてから造られたのでファーストとは面識がありませんが、俺とサードで面倒を見てました。なので俺一人でという訳ではありません。」
「アムロ…ファーストがサードの面倒を?」
「え?ええ。」
ブライトが驚いた顔でセカンドを見上げる。
「ブライト艦長?」
「い、いや。アムロはなんて言うか典型的な一人っ子で、他人の面倒なんて見るタイプじゃなかったからな。」
「ああ、そうですね。ゼロはそんなタイプじゃありませんでしたね。」
セカンドがクスクス笑いながら答える。
「でも、ファーストは如何にも長男っていう感じの性格でした。」
「ああ、そうか…」
ブライトはまだ、オリジナルのアムロとクローンであるファーストが別人だということが、うまく自分の中で受け止めきれていない。
確かに、今のアムロに違和感を感じていた。しかし、一年戦争を共に戦ったアムロとロンド・ベルで一緒に戦ったアムロは自分にとっては同一人物だったのだ。
そんなブライトに、セカンドが優しく微笑む。
「お気持ちは分かります。俺もファーストとゼロの違いが曖昧になっています。今のファーストにとって、ゼロの記憶は自分の記憶として存在しているんです。だからファーストの思考はゼロにより近くなっています。」
コーヒーを握るセカンドの手が少し震える。
「けれど…、ファーストとしての人格が完全に消えたわけではないんです。だから…俺にとってはファーストなんです。一緒に生まれて一緒に育った兄弟みたいな存在です…。」
「一緒に生まれて?」
現在のアムロの年齢は二十九歳だ。そしてセカンドの年齢は二十三歳。その年齢差にブライトが首を傾げる。
「ええ、俺とファーストは同じタイミングで造られました。だから初めは双子のように育ちました。」
「君たちの年齢差は…例の成長促進処置せいか?」
「はい。ファーストは俺よりも2回くらい多く処置を受けてます。一度に成長させられるのは精々二~三歳程度が限界なんです。だから数回に分けて行われました。」
少し辛そうに話すセカンドに、ブライトが心配げな視線を向ける。
「その処置はかなり身体に負担をかけたんじゃないのか?」
地球のオーガスタ研究所から、ネオ・ジオンの拠点である『スウィート・ウォーター』に、アムロ・レイのクローンであるファースト、セカンド、サード、フォースの四人はやってきた。
アムロ・レイの記憶を移植され、アムロとして生きて来たファーストは、そのままアムロとしてロンド・ベルに所属し、他の三人は現在、ラー・カイラムのブライトの元に預けられている。
「すまんな。まだネオ・ジオンでのアムロの立場は微妙でな。君たちの身の安全を図る準備を整えるまでの間、ラー・カイラムで過ごしてくれないか?」
シャアからの指示に逆らえる訳もなく。
セカンド達は今、ラー・カイラムで過ごしている。
「セカンド!」
「どうした?サード」
「今からアストナージがモビルスーツを見せてくれるって言うんだ。セカンドも一緒に行こう!」
フリールームでブライトとコーヒーを飲んでいたセカンドの元にサードが飛び込んでくる。
三番目のクローンであるサードは15歳で、その見た目は、一年戦争当時のアムロそのままだ。
ブライトはその姿を見つめ、懐かしそうに目を細める。
セカンドはサードの誘いに、少し思案してから首を横に振る。
「オレはいいよ。サード行っておいで」
「えー?行かないの?」
「ブライト艦長に話があるし、また今度な」
「うん、分かった。それじゃ行ってくる!」
サードはまだ慣れない無重力の空間に戸惑いながらも、嬉しそうにドックへと向かって行った。
「君は良いのか?」
ブライトが不思議そうにセカンドを見つめる。
「ええ、一応知識は教え込まれているのでありますが、サード程興味も無いので。」
セカンドの答えにブライトが顎に手を当てて頷く。
「そうか…、やはりクローンといっても別人なんだな。アムロだったら大喜びしそうな誘いなのに、興味が無いとは…」
「俺はファーストのスペアだったんですが、ファーストが表立って行動したお陰でもう一人の“アムロ・レイ”を存在させる訳にもいかず、記憶を移植される事が無かったので、今の人格が安定して構築されたんです。」
「…そうか…」
「でも、全く興味が無いわけではないですよ。昔“ゼロ”と過ごした時に色々教えてもらった時はすごく楽しかった。」
“ゼロ”、セカンド達がそう呼ぶのは、彼らのオリジナルであるアムロ・レイの事だ。
研究所ではオリジナルの事をそう呼んでいた。
「アムロと?」
「ええ、あの時はまだ子供だったので、簡単な事しか教えて貰っていませんが。」
セカンドの言葉に、ブライトが疑問の声を上げる。
「君は今いくつなんだ?」
「肉体年齢は23歳です。クローンとして目覚めてからは…まだ10年程ですかね。何度か成長促進処置を施されてますから。」
「成長促進…そんな事が出来るのか?それで、今後はどうなるんだ?」
「今の状態で生きていけば普通に歳を取ります。」
コーヒーを飲みながら事も無げに語るセカンドに、ブライトが眉を顰める。
「研究者って言うのは人の成長までも操るのか。酷い話だ。」
ブライトの憤りにセカンドがクスリと笑う。
「ブライト艦長は俺たちを『人』として扱ってくれるんですね。ありがとうございます。」
「当たり前だろう!以前に君たちのようなクローンの強化人間の少女に会ったことがあるが、彼女達だって普通の人間だった。」
「強化人間…、その子達は?」
セカンドの問いにブライトが小さく溜め息を吐く。
「戦闘でな…。可哀想なことをした。」
「そうですか…」
「ところでオレに話って何だ?」
「あ、はい。フォースの事です。」
「フォース?」
フォースは四番目のクローンで、今5歳の子供だ。
「ええ、あの子はまだ幼いので、今からでも十分普通の子供と同じように生きていけると思うんです。それで、もし可能ならば養子に出して両親のいる家庭で育てたいと…」
セカンドの言葉に、ブライトが頷く。
「そうだな。しかし、あの子もニュータイプだろう?そうなると普通の夫婦では持て余すかもしれんな。」
アムロ・レイのクローンである四人は、年齢や性格はそれぞれ少しずつ異なるが、容姿やニュータイプ能力は、オリジナルのアムロ・レイからそのまま引き継がれていた。
「そうですね…」
セカンドはブライトの言葉に小さく溜め息を吐くと、残念そうに頷いた。
「まぁ、そんなに直ぐに諦めるな。総帥にも相談して考えてみる。」
「はい、ありがとうございます。」
「それより、君やサードは今後どうしたい?サードはスウィート・ウォーターで暮らせるようになったらハイスクールに通うか?君もカレッジにでも入るか?」
「え?あ…」
ブライトの提案にセカンドが驚いた表情を浮かべる。
「なんだ?自分の事は考えてなかったのか?」
「あ…はい」
「君はどうも自分のことを後回しにする所があるな。サードとフォースは君が面倒を見ていたのか?」
「そんな事は…、それにサードは俺とファーストの二人で面倒見ていましたし。フォースはファーストがシャイアンに送られてから造られたのでファーストとは面識がありませんが、俺とサードで面倒を見てました。なので俺一人でという訳ではありません。」
「アムロ…ファーストがサードの面倒を?」
「え?ええ。」
ブライトが驚いた顔でセカンドを見上げる。
「ブライト艦長?」
「い、いや。アムロはなんて言うか典型的な一人っ子で、他人の面倒なんて見るタイプじゃなかったからな。」
「ああ、そうですね。ゼロはそんなタイプじゃありませんでしたね。」
セカンドがクスクス笑いながら答える。
「でも、ファーストは如何にも長男っていう感じの性格でした。」
「ああ、そうか…」
ブライトはまだ、オリジナルのアムロとクローンであるファーストが別人だということが、うまく自分の中で受け止めきれていない。
確かに、今のアムロに違和感を感じていた。しかし、一年戦争を共に戦ったアムロとロンド・ベルで一緒に戦ったアムロは自分にとっては同一人物だったのだ。
そんなブライトに、セカンドが優しく微笑む。
「お気持ちは分かります。俺もファーストとゼロの違いが曖昧になっています。今のファーストにとって、ゼロの記憶は自分の記憶として存在しているんです。だからファーストの思考はゼロにより近くなっています。」
コーヒーを握るセカンドの手が少し震える。
「けれど…、ファーストとしての人格が完全に消えたわけではないんです。だから…俺にとってはファーストなんです。一緒に生まれて一緒に育った兄弟みたいな存在です…。」
「一緒に生まれて?」
現在のアムロの年齢は二十九歳だ。そしてセカンドの年齢は二十三歳。その年齢差にブライトが首を傾げる。
「ええ、俺とファーストは同じタイミングで造られました。だから初めは双子のように育ちました。」
「君たちの年齢差は…例の成長促進処置せいか?」
「はい。ファーストは俺よりも2回くらい多く処置を受けてます。一度に成長させられるのは精々二~三歳程度が限界なんです。だから数回に分けて行われました。」
少し辛そうに話すセカンドに、ブライトが心配げな視線を向ける。
「その処置はかなり身体に負担をかけたんじゃないのか?」
作品名:鳥籠の子供達2〜Second〜 作家名:koyuho