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鳥籠の子供達2〜Second〜

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「ええ、無理やり成長させますからね。当然身体への負担は大きくて、処置後二週間は全身の痛みに苦しみます。」
辛い時、側で支えてくれたのはファーストだった。
自分たちが人工的に造られたクローンだと言うことをまだ知らなかった頃、ファーストとは双子の兄弟だと思っていた。
研究所の中しか知らなかった俺にとって、ファーストが世界の全てだった。
その後、自分たちがアムロ・レイのクローンだと、人間ではなく作り物の偽物だと研究員から言われた時、彼らの俺たちに対する扱いが“物”の様だった事にようやく納得がいった。
しかし、ゼロと接して、彼から“人”として扱われた時、とても不思議気持ちになったのを覚えている。
当時の俺を、ファーストとゼロだけが“人”として扱ってくれた。
「大丈夫か?」
ブライトの問いに、自分が涙を流している事に気付く。
「あ…」
自分の意思とは関係なく、次々と溢れてくる涙にどうしたら良いのか分からず戸惑う。
「すみません…勝手に…」
そんなセカンドの頭を、ブライトが優しく撫ぜる。
「いいんだ。泣きたい時は思いっきり泣いて全部吐き出しちまえ。今までずっとファーストの心配したり、サードやフォースを守るのに必死だったんだろう?もう良いから。誰もお前たちを傷付けないから。」
そんなブライトの言葉に、更に涙が溢れ出した。


私室に戻り、涙でくしゃくしゃになった顔を洗う。
「はぁ。恥ずかしい…。思いっきり泣いてしまった…。」
鏡に映る目蓋の腫れた顔を見ながら呟く。
「なんだろう…ブライト艦長相手だと、なんか色々緩む…。あんな事まで話すつもり無かったのにな」
濡れたタオルで目を冷やしながらレストルームを出ると、インターフォンが鳴る。
扉を開けると、そこにはファーストが立っていた。
「ファ…アムロ?」
ラー・カイラムでは“アムロ”がクローンのファーストである事は伏せられる事になった。
共に死線を潜り抜け、戦った仲間が偽物だったなどと、全てのクルーが受け入れるのは難しいとのブライト艦長とシャア総帥の判断だ。
アムロが部屋に入り、扉を閉めるとセカンドに視線を向ける。
「二人の時はファーストでいい。お前にとって俺はファーストだ。」
「ファースト…」
ファーストはセカンドに歩み寄ると、そっと目蓋の腫れた顔を覗き込む。
「セカンドが…泣いてる気配がしたから来た…。大丈夫か?」
心配気に見つめるファーストに、セカンドから笑みが零れる。
「大丈夫。ブライト艦長と話してたら思い出し泣きしちゃったんだ。」
「ブライトと?」
「ああ、なんだろう。ブライト艦長の前だと油断する。」
「あぁ、それ分かる。なんだろう、つい甘えちゃうっていうか…まるで親父みたい?」
「そうそう、そうかも!そんな感じ!」
同じ意見に、思わず互いに顔を合わせて笑いが込み上げる。
「…少しはここ生活に慣れたか?」
「そうだね。ここの人たちはクローンの俺たちにも親切にしてくれる。」
時折、好奇の目や哀れみの視線を感じる事はある。けれど、研究所にいる時の様にモルモット扱いされる事は無い。
「そうか…」
「サードやフォースはなんか女性たちに物凄く可愛がられてるよ。『ちっちゃいアムロ大尉可愛い』っだってさ」
クスクス笑うセカンドに、ファーストが顔を真っ赤にして手で顔を覆う。
「あれな…。勘弁して欲しい。凄く恥ずかしいんだけど。」
「アムロ大尉は人気者だね」
「セカンド!」
「ふふ、こうしてると昔に戻ったみたいだ。ファーストの記憶は大分戻って来てるの?」
その問いにファーストが少し視線を伏せる。
「ああ…。あの日から…少しずつだけど」
「そっか……本当は戻らない方がファーストにとっては良いんだよね。二つの人格あるなんてきっとどこかで弊害が出る。」
「それが…意外とそうでもないんだ。」
「え?そうなのか?」
「ああ、アムロとしての生きてきた年月が長かったのと、アムロとして生きてきた時も、ファーストの人格がいくらか影響していた状態で今の俺があるからなのかもしれない…」
「そうか…それなら良いけど。」
自分の事をもっと思い出して欲しいと思いながらも、それがファーストの負担になるならと、出来るだけ早くファーストの前から消えようと思っていた。
「セカンド、お前変な気を使って俺から離れようとか思ってなかったか?」
「…っ」
心情を言い当てられて言葉に詰まる。
「大丈夫だから。お前は昔っから周りに気を使い過ぎだ。」
「それさっきブライト艦長にも言われた。」
「だろう?」
「自分ではそんなつもり無いんだけど…」
そう呟くセカンドを、ファーストがそっと抱き締める。
「ファースト!?」
「今までサードとフォースを守ってくれてありがとな。一人で大変だったろう?」
ファーストの言葉に、止まった筈の涙がまた溢れ出す。
「俺…今、涙腺緩くなってるんだ。」
ファーストの肩に顔を埋めながら呟く。
「それに…俺よりもファーストのがずっと辛かっただろう?ファーストが連れて行かれた時…俺、何も出来なかった!ごめん…」
「バカ。お前は何も悪く無いだろう?」
「でも!」
「もう良いから。これからの事を考えよう。」
「…それもブライト艦長に言われた」
「流石ブライトだな」
「ふふ、そうだね。俺も…“人”としての生きても良いんだよね…」
「当たり前だろ」
ふと、抱き締めるセカンドの身体が思った以上に細い事に気付く。
「…セカンド…、お前…俺がシャイアンを脱走した後…もしかしてあいつらの研究の被験体になっていたのか?」
セカンドの肩がビクリと震える。
「…少し…ね。でも大丈夫。サードとフォースは被験体になってないよ。」
ゼロが死に、ファーストがいなくなった研究所で、次にニュータイプ研究の被験体となったのはセカンドだった。
過去にアムロに行った実験の続きを、クローンであるセカンドで行ったのだ。
サードとフォースにしようとしていた実験も全て引き受けた。あの子達にこんな辛い思いはさせたくなかった。

“これからの事”、ボロボロのこの身体で、後どれだけ生きられるか分からない。
だから未来の事なんて考えられなかった。
でも、その短い未来を…夢見て良いだろうか?
“人”としての未来を…。

そんなセカンドをファーストがギュッと抱き締める。
「大丈夫だ。俺がなんとかする。お前がずっと生きていられるようになんとかするから!」
「ファースト…」
ファーストに抱きしめられて、昔の事を思い出す。
いつもこうして俺を抱きしめてくれた。この腕の中が俺はとても好きだった。ファーストの事が…とても好きだった。
ファーストがシャアと幸せになってくれてとても嬉しい。でも、少し辛いと思う自分がいた。
俺にとっての一番はファーストだけど、ファーストにとっての一番はシャアだ。
それで良いと思う。思う筈なのに…どこか苦しい。
「いつか死ぬ時は…ファーストの腕の中が良いな…」
思わずそんな言葉が零れる。
「馬鹿野郎!そんな簡単に死なすかよ!」
「ふふ、ありがとう。大好きだよ、ファースト」
「俺も好きだよ!だからそんな風に諦めるな!一緒に生きよう!」
「うん…、分かった…頑張るよ」
作品名:鳥籠の子供達2〜Second〜 作家名:koyuho