第二部6 (79)復讐
「お久しぶりです」
「ああ…」
「噂で…ユリウスのお母さんと街を出奔した…と聞いてはいましたが、本当だったのですね」
「ああ…」
「今、どこにいるのですか?」
「…」
「答えられません…か。まあ、いいや。彼、ヤーコプとの会話、悪いけど、大方聞かせてもらいましたよ」
「…耳、いいんだな」
「一応、音楽やってるものでね。彼、フォン・ベーリンガー家の執事の息子だったのですってね。…先ほどの会話から察するに…あなたとヤーコプは主従関係のように見えましたが…という事は…、あなたは…フォン・ベーリンガー家の子息という事になりますが?」
「…」
「だんまりですか。それから…お祖父様…というのは?誰の事なんですか?まさか…校長先生?」
「…」
「答えて下さい!あなたとヤーコプと校長先生は…血縁と主従関係で繋がってる?そうなんですか?」
「…」
「なぜ…ヤーコプは…アーレンスマイヤ家でスパイのような行為を働く?あの家は、一体あなた達に何をしたのですか?」
「…」
「答えて下さい!」
ダーヴィトの度々の追及に、呻くようにヘルマンが、ぼそりと呟く。
「…復讐だ…」
「え?!」
「…校長に…校長の行動に、くれぐれも気をつけろ!マリア・バルバラさんを…守ってやれ」
呻くように低い声でそう囁くと、ダーヴィトが止める間もなく、足早にヘルマンも又酒場を後にした。
「先生!」
― 復讐・・・・。フォン・ベーリンガー家…。ヴィルクリヒ先生と校長先生と…ヤーコプ…。
一体彼らは…アーレンスマイヤ家の…何なんだ?!
「畜生!」
ダーヴィトが苛立たし気に机を拳骨で叩いた。
作品名:第二部6 (79)復讐 作家名:orangelatte