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第二部11(84)アブラハム・ウント・レヒナー商会

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「大変です!マリア・バルバラ様が―」

血を流して全身傷だらけの御者が、同じく血を流し全身傷だらけで低くうめき声を上げたマリア・バルバラを抱えてよろよろと屋敷へと入って来た。

血だらけで馬車から投げ出された彼らを保護し屋敷へ運んで来た人間が、二人の代わりに説明する。

「通りかかったら、馬車の車輪が道に転がっていたので、がけ下を見たら、転落した馬車と、馬車から投げ出されたこの人達を発見した。聞くとレーゲンスブルグのアーレンスマイヤ家というので、病院へ運ぶよりもこちらへ引き返した方がいいと思い、お二人を運んでまいりました。馬は…もうだめだったので、私の銃で楽にしてやったよ」

「マリア!!」

ダーヴィトが意識のないマリア・バルバラに駆け寄る。

― 嫌な、予感は的中してしまった。