第二部15(88) エルヴィン・フォン・シェルブレ
― どうも・・・・。断片的な情報のピースが今一つ繋がらない。
寄宿舎に戻り、ベッドに寝転がって、今までの情報を整理する。
時系列で言うと…そもそもの事の発端は、フォン・ベーリンガー家の生き残りと見られるヴィルクリヒ先生と、彼の祖父の校長、そしてヴィルクリヒ先生の家に仕えていたヤーコプによる復讐だ。だが、このヴィルクリヒ先生と校長との関係がはっきりしない。
ヴィルクリヒ先生はフォン・ベーリンガー家の養子なのか?それとも校長は祖父を「騙っている」だけなのか?
それから、アーレンスマイヤ家の先代当主の不審な点。
彼は何故一家―召使に至るまでを殺害に至ったか?
そこまでしたのに、一方でなぜ密かにエルンストを手厚く保護したのか?
あの事件から二年後に彼を引き取った人物はフレンスドルフ校長なのか?
そしてマリアと弁護士に何か遺言を残そうとした矢先のアルフレートの急な死は、本当に自然死なのか?
そして、ユリウス母娘に寄生してアーレンスマイヤ家に入って来たヤーンという男。
イギリスと組んでスパイ活動をしていた男が、いきなり失踪した原因は?
彼はまだ生きているのか?それとも誰かによって殺されているのか?
彼は一体この家の何を嗅ぎつけたのか?
彼が嗅ぎつけたものは…先代当主が関わったあの事件にかかわりのある事なのか?
そしてアネロッテ。
執事が警戒する程の財産への執着。
ヤーコプを使って自分を監視させたり、マリア・バルバラに対する誹謗を流したり、小さな牽制・妨害は見せているが、これといった動きをまだ見せていないのも、不気味といえば不気味といえないこともない。一体彼女の目的は何なのか?
執事の言うように本当に財産に対する野心を持っているのか?
先日自分とマリア・バルバラを襲った火事も、恐らく直接手を下したのはヤーコプなのだろうが、彼に命令を下したのが、果たしてどちらなのか確定できない。
遡って昨年のカーニバルでユリウスを負傷させた剣をすり替えたのは、校長?
マリア・バルバラをおびき出したアブラハム・ウント・レヒナー商会の正体も、一体どちらなのか。アネロッテ?校長?
次々と浮かび上がってくる不審な事象と、自分とマリア・バルバラを襲った事件。
だがそれらの出来事が事由に繋がらない。
事件と事由の間に存在するミッシングリンク。
ダーヴィトがこの繋がらない事象と事由に苛立ち低く呻いた。
作品名:第二部15(88) エルヴィン・フォン・シェルブレ 作家名:orangelatte