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第二部20(93) 収監そして反撃

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「…ゲルトルートは…どう?」

「賢くて、案外胆の据わった子だ。逮捕された時こそ、酷く動揺していたが、自分がなぜこんな状況に陥ったか、事態を冷静に整理している風だった。あんたに言われた通りちゃんと説明してやったら、納得していたよ。まあ…露骨な事は出来ないが、気は配ってやっているつもりだ。…ご主人様の身体の心配をしきりにしていたよ。あと…あんたの身の安全も」

「そうか…。ありがとう。刑事さん。…これからも…すべてが終わるまでゲルトルートの事は…よろしくお願いします」

「任せろ。少なくともあそこにいりゃ誰も手出しは出来ない」

「それから…校長は?」

「相変わらず黙秘を続けているから…まあ、拘留期限ギリギリまで粘ってみるさ。そうだ。あの校長とエレオノーレの関係について調べて分かった事がある」
― あの校長とトルン・ウント・タクシス家とは、当然だが何の係累も関わりもなかった。だが、あの校長の過去を調べたところ、娘が16で亡くなっている事が分かった。…名前はエレオノーレ。しかし、あのエルンストと同じで、死亡届は出されているが、埋葬の記録はどこにもない。一方トルン・ウント・タクシス公女でテオドール・フォン・ベーリンガー夫人のエレオノーレは、16まで修道院の寄宿舎で育ち、そののちフォン・ベーリンガー家に嫁した…と公式な記録では残っていた。恐らくその修道院の公的な記録にもそのように在籍記録が残されているだろう。あくまで上の作った記録では…の話だがな」

「上の?公のってこと?」

「まあ、そうだな。だけどな…。真実に迫ろうと思ったら、まず下から…外から攻めていくものなんだ。…敵を攻略するには外堀からじっくりと埋めていく…これが肝要だ」

「で?今回も外堀を埋めていったの?」

「まあな。…その修道院の下働きをしていたシスターや、寄宿舎の同輩をあたった」

「そうしたら?」

「俺の読み通りだった。…その修道院に、トルン・ウント・タクシス公女エレオノーレなどという娘はいなかった。どういう経緯でそうなったかは分からないが、ハインツ・フレンスドルフの亡くなった娘エレオノーレは、トルン・ウント・タクシス公女のエレオノーレで間違いないだろう。これが、事実だ。記録は改ざんできる。だがな、真実は…いくら改ざんしても…どこかで、どこかから…必ず綻びが現れるものなんだ」

「真実は…改ざんしても…必ずほころびが現れる…か。フ…、ズシンと響いたな。…あの、アルフレートが関わったあの事件も…いつか綻びが現れて…真実が明らかになるんだろうな」

「もう、その綻びは現れているんじゃないのか?他ならぬあんたらの手によって」

「そうかもね」

「それより…。約束は守ってもらうぞ。手筈はどうなってる?」

「ああ。その点も抜かりはないさ。明日の午後、酒屋が酒類の納品にやって来る。その時の荷に紛れて僕とあなたが屋敷へ潜入する算段になっている。酒の管理は執事の仕事だ。あの家でも納品業者と執事が直に検品して受け渡しすることになっている。…大丈夫だ。執事には言い含めてある。後は…彼が万事手配してくれる。あの家の執事は優秀だから」

「分かった」

「毒物投与で今や寝たきりのマリアと、このタイミングでの校長の逮捕だ。…恐らくこれは先方にとっても、まさに千載一遇のチャンスだ。少なくても…僕ならば絶対このチャンスは逃さない。必ず…近日中に動く筈だ。彼女は―、アネロッテは必ずとどめを刺しに来る」

「相手が…罠を警戒している可能性は…?」

「それもあるかもしれない。だけど、あちらだってこれ以上時間をかけるのは本意ではない筈だ。元々事業が傾いていたところに、今回のマリア・バルバラの事故だ。現在あの家の事業は殆ど停止しているに等しい。このままの状況が長引けば…破産は免れない。アネロッテにしてもそうなる前に何とか手を打ちたいだろう」

「だから…この機を逃さない…と?」

「ああ」

「分かった。そのあんたの読みに、俺も一口乗ろう。…しかしあんたも相当なもんだな。…ゼバスを卒業したら、帝国警察へスカウトしたいぐらいだ。あんた…いい刑事になるよ」

「はは…お褒めに預かり、光栄だけど…でも、そのつもりはないよ。もうこんな事は…コリゴリだ」

「そうか…。こちらとしては残念だが、そうだな。こんな因果な職業、やめておいた方がいいだろうな。あんた、あのアーレンスマイヤ家のお嬢さんと一緒になって、光の当たる道を歩いて行きなよ。この事件のカタがついたら…こんな事はきれいさっぱり忘れてしまった方がいい」

「…そうしたいよ。…じゃあ、お互いの無事と…追い求めた真実が明らかになることを願って!」

ダーヴィトが持ち上げたビールジョッキに、刑事が自分のジョッキをカチリと合わせた。

「グッドラック」

「いよいよ…こちらの反撃だ」