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第二部22(95) sturm

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マリア・バルバラが危篤状態となり、死の宣告を下されて早一週間が過ぎた。

相変わらずベッドから起き上がれず意識は混濁しているようだが、医師との見解とはうらはらに、容態は安定し始めている。

屋敷の人間全てが寝静まった夜更けの時間を狙いすまして、アネロッテがマリア・バルバラの部屋に訪れた。

「あのヤブ医者…。何が持って一週間よ。一週間どころか、全然くたばる気配ないじゃない!…しぶといったら!」

ベッドの上で亡骸のように身を横たえているマリア・バルバラの寝顔にアネロッテが苛立たし気に毒づく。

「あなたが予定通りにあの世へ行ってくれないと、私が困るのよ。ふふ…、だって、もう旅立つ船の手配をしてしまったのですもの。今更あなたがいつまでも生きていられると、この家の財産がいつまでも分与できないじゃない。…ふふふ。姉妹二人で、こんなにじっくりとサシで向き合うなんて…何て久しぶり。ううん、私達…いえ、違うわね。私はあなたをずっと憎み続けていたから、こんな事、初めてね。まあ、いいわ。最期ぐらい貴女にこうして付き合ってあげる。尤もあなたはもうすぐ、天に召されるのだけどね。このアーレンスマイヤ家も、それから…何だったかしら?あのちょっと可愛い歳下の好い人も、全てこの世に置いてね!あんたは何一つ持たずに冷たい土の下に埋められるのよ!」

ー いい気味!ホホ…ホホホホ

堪えきれず高笑いを上げながらアネロッテが肉の削げた姉の白い頰を指先で撫でる。

「うう…」

「苦しいの?ふふふ、いい気味。もっと苦しめ!苦しみながら死んでゆくがいい。…そうね、私今とても気分がいいから…、あの世への土産話に、面白い話をしてあげるわ。ー このアーレンスマイヤ家の、あんたが後生大事に守り続けて来た、アーレンスマイヤ家の薄汚れた真実を!」

ベッドサイドに腰掛けたアネロッテがマリア・バルバラの耳元で全ての真相を打ち明け始めた。

作品名:第二部22(95) sturm 作家名:orangelatte