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第二部24(97) 交渉

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「だぁ!!」

赤ん坊ながらその木箱にいいものが入っているとしっかり認識しているミーチャが、ユリウスの抱えて来た木箱に歓声を上げる。

「ありがたいねぇ。ミーチャ。…今日は重たかったよ。…何が入っているのかな?」

ユリウスが木箱の蓋を開く。

「あ!ミーチャにおもちゃが入ってるよ?」

木箱の中から、ミーチャのためのものと思われる木製の汽車、近衛兵の人形、ブリキの太鼓、それに美しい挿絵の絵本が覗いている。

「もう少しお兄さんになったら、遊べるねぇ。よかったね」

その他にいつものように食品を初めとする日用品―、ただしいつものような市場でそろえたようなものとはややラインナップが異なる、英国製の缶入りのショートブレッド、ジャム、缶詰、そして紅茶、それからやはり英国製の香りの良い化粧水やコロン、クリーム、石鹸などが木箱に所狭しと収められていた。

「いい香り!…全部英国製だ。…名無しの親切な贈り主様…、イギリスにでも行かれていたのかな?」

そして、それらの荷の重みで潰れないよう一一番上に美しく包装されて置かれていたものを手に取り、包みを開く。

「わぁ!」

ユリウスが思わず歓声を上げたのは、しっとりと指に吸い付くような最上級のカシミアの大判のショールだった。
ユリウスの白い肌と金の髪に融け合うような上品なオフホワイトは、彼女の宝石のような碧の瞳をも引き立てる。
ダークカラーの地味なドレスの上に早速羽織ってみる。
軽いのに何とも温かくユリウスの華奢な身体を包み込む。

「暖かい…」

身を包む柔らかで温かな感触に、しばしうっとりとなる。

「だぁ…」

ユリウスの身体を包むショールの房を、よちよち歩きのミーチャが小さな手で引っ張った。

「ミーチャ、おいで」

ユリウスがミーチャを抱き上げ、そのショールの中に息子ごと包み込んで、長椅子に掛ける。

「ありがたいね、ミーチャ。いつか…この贈り主の方に会って…ありがとうって、お礼が言いたいね」

そう言ってユリウスは、腕の中で母の温もりに包まれて安らかな顔をしている息子を優しく優しくあやし続けた。

作品名:第二部24(97) 交渉 作家名:orangelatte