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Lovin 'you after CCA 9

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段々と睡魔に襲われ、アムロの目が虚になっていく。
「って事は敵同士だったのかい?」
「…うん…」
「それっていつの事?」
「え…っと、一年戦争…んん」
と、言い掛けて、後ろから誰かに口を塞がれる。
振り向くと、金髪に真っ黒なサングラスをした男が立っていた。
「あ…シャ…んん」
口を塞がれアムロがもがく。
「ああ?あんた誰だ?」
アムロの口を塞ぐ男をレズンが睨みつける。
「彼女の面倒くさい夫だよ」
いつから聞いていたんだと思いつつも、
そのあまりにも聞き覚えのある声に、レズンが目を見開く。
前髪を下ろして濃いサングラスを掛けているが、この腰に響く良い声は間違いなく自分の知っている男だ。
レズンはまじまじとその顔を見上げると、ニッと不敵な笑みを浮かべて男を指差す。
「ははは、面白いじゃないか。まぁ座りなよ」
男をアムロの隣に座らせて酒をすすめる。
「ちょっと、付き合ってくれるかい?」
レズンのその態度に、男も不敵な笑みを浮かべると、マスターに酒を頼む。
男に口を塞がれたアムロは、気付くとその胸の中でスヤスヤと寝息を立てていた。
「あーあ、寝ちゃったか。もっと色々聞きたかったのに。」
「何を聞くつもりだったんだ?」
「ん?色々さ」
男はマスターから酒を受け取り、一口含む。
「ほぅ、色々…ね」
「まぁ良いや。代わりにあんたに聞くからさ」
レズンは、眠るアムロの柔らかい頬を指で優しく撫ぜる。
「アムロのセカンドネームの“R”は“Ray”じゃないのかい?」
「何故そう思う?」
「“アムロ・レイは女だった”そんな噂を聞いたのさ。そして、今日見たあの模擬戦でアムロの動き。アレはνガンダムの動きと同じだった。」
レズンはその表情から笑みを消し、男に向き合う。
「なるほど…それで?」
「白い悪魔が生きてた。それはトップシークレットかい?」
「…そうだな」
「おまけにあんたが彼女の夫?こっちのがビックリだ」
「いけないか?」
その答えにレズンが笑い出す。
「良い訳ないだろ?アレは何のための戦争だった?」
レズンが男を睨みつける。
「スペースノイドの独立の為だ。」
「そりゃ表向きだろう?」
レズンは真っ直ぐにシャアの瞳を見つめる。
「私の手を振り払ったアムロと決着をつける為…と言ったら納得するのか?」
「手を振り払った?」
「ああ、七年前、エゥーゴで共に戦った彼女に手酷く振られた。一番欲しいものを手に入れられなかった私は、道化となりネオ・ジオンを立ち上げて連邦に戦争を仕掛けた。そうすれば、必ず彼女は私を止めに来ると思ったからな。」
「可愛さ余って憎さ百倍?」
「ああ、私は彼女を憎んだ。彼女の本心や事情を知りもせずにな」
グラスの中で氷がカランっと音を立てる。
「事情?」
「ああ、彼女はある事情から私の手を取れなかったんだ。」
「その事情とは?」
シャアはチラリと周りに視線を向けてからレズンに視線を戻す。
「…ここでは…ちょっとな。」
その様子に、レズンは小さく溜め息を吐く。
「まぁ、いい。それはまた聞かせてくれ。で、そんな個人的な理由で私の部下は命を落としたんだが、それについてはどう思ってる?」
「何も言い訳はできんな。しかし、彼女が命を懸けて私を止めてくれなければ、地球は氷の星となり、私は…いや、我々は大罪を背負ったテロリストと成り果てていただろう。」
その言葉にレズンが息をのむ。
確かに、あのアクシズの降下作戦が成功していたら、ネオ・ジオンは連邦に勝利しただろう。しかし、同時に地球を凍らせ、大量殺戮をした大罪人となっていた。
レズンはグラスを握る手に力を込める。
「…そうだな…」
答えながら、眠るアムロに視線を向ける。
華奢なその体で、どれだけのものを背負って戦っていたのだろう…。
落下を始めたアクシズを、たった一機で押し返していた姿を思い出す。そして、その想いに賛同した多くのパイロットが同じようにアクシズに取り付いた。その中にはレズンの部下もいた。
「私たちはアムロに感謝すべきかもしれないな。それで、アムロはようやくあんたの手を取ってくれたって訳かい?」
「ああ、死を覚悟してまで戦場に舞い戻り、愚かな私をその深い愛で受け止めてくれた。」
シャアは腕の中のアムロを見つめ、ギュッと抱きしめる。
サングラス越しでもそうと分かる優しい瞳で、アムロを見つめるシャアに、レズンが大きな溜め息を吐く。
「分かったよ。ほら、もういいから連れて帰ってちゃんと寝かしてやんな。」
「ああ、そうだな。レズン、この事は…」
「分かってる。誰にも言わないよ」
「すまんな」
そう言うと、アムロを抱いて店を出て行く。
その後ろ姿を見つめて、レズンがグラスに口をつける。
「白い悪魔があんなのじゃ、恨むに恨めないじゃないか」
「そうだろ?」
酒を片手にエドヴァルドがウィンクしてくる。
そんなエドヴァルドにレズンが呆れた視線を向ける。
「あんた、どこまで先を読んでアムロに模擬戦やらせたんだい?」
「さぁな。まぁ、レズン少尉なら気付くとは思っていたがね。」
「食えないおっさんだな」
「はははは!お前さんもな!」



シャアは、眠るアムロを横抱きにしてエレカの助手席に乗せる。
「んん…」
「起きたか?」
「シャア?…なんで貴方がいるの?レズン少尉は?」
「君が眠ってしまったのでな。帰るぞ」
「え?あ…。うん」
まだ寝ぼけた頭では深く考える事が出来ないのか、トロンとした瞳を向けて頷くと、そのまままた眠りに落ちてしまう。
「やれやれ、アムロには酒を飲ませないようにしないとな。」
そして、真っ赤になったギュネイの顔を思い出す。
「…絶対ダメだな…」
他の男にあんな色っぽい顔を見られたかと思うと、嫉妬心が込み上げる。
「アムロ、帰ったらお仕置きだ。」
アムロの頭を少し乱暴に撫ぜると、エレカのエンジンをふかして走り出した。


翌朝、何故かシャアのベッドで目覚めたアムロは、どうして自分がここにいるのか分からず困惑する。
そして、何も身につけていない自身の身体に無数のキスマークを見つけて一瞬固まる。
「わぁぁぁぁぁぁ!」
「どうした?アムロ」
隣で寝ていたシャアが、その叫び声で目を覚ます。
「どうしたって!コレ…コレ何だよ!それに、何で私、ここにいるんだ!?レズン少尉は?」
そんなアムロに、シャアが盛大に溜め息を吐く。
「覚えてないのか?」
シャアの問いに思い切り頷く。
「アムロ、君は今後飲酒禁止だ。」
「ええ!私、何かやらかしたのか!?」
「色々とな」
「えええええ!」
「良いから、まだ早い。寝るぞ」
シャアはアムロを抱き寄せると、腕に中に閉じ込めてシーツの中に潜り込む。
まだ困惑しているアムロを抱きしめながら、心の中でクスクス笑う。
動揺しつつも、シャアの暖かい温もりに包まれて、睡魔がまた襲ってくる。
「ん…シャア…」
「なんだ?」
「好きだよ…」
その言葉にシャアは目を見開くと、アムロの顔を覗き込む。
しかし、次の瞬間、アムロからは穏やかな寝息が聞こえてくる。
昨夜、レズンに夫の事が好きかと聞かれて、「好き」と、幸せそうに答えたアムロを思い出す。
「ふふ、私も好きだよ。アムロ」
夢の中のにいるアムロに、シャアはそっと囁いた。


end

作品名:Lovin 'you after CCA 9 作家名:koyuho