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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL27

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第92章 大悪魔断罪


 ロビンが自らに覚醒した力を告げ、デュラハンのみならず、一同が言葉を失っていた。
 闘霊なる存在そのものが、それを知らぬ者達には、荒唐無稽な話に聞こえてしまった。
 しかし、ロビンの話を聞いた者全てが、まるで信じられないという状態ではなかった。
 事実として、ガルシア達がどれほど力を合わせてもまともな勝負にならなかったほどの強さを持つデュラハンが、ロビンたった一人の力によって地に膝をつかせられている。
 その上、ロビンは一つとして傷を負わず、一切攻撃を仕掛けずにデュラハンの攻撃を無力化、反射してデュラハンを追い詰めている。
 この事実が、ロビンの話に真実味を与えていた。
「竜殺し、ドラゴンスレイヤー……」
「何だか訳が分からないけど、ロビンのやつすげえ……!」
 ガルシアとジェラルドは、遅れてやってきた驚きの感情に支配されていた。
「闘霊、とはいかようなものなのか。アズール殿、なにかご存じではないか?」
「いや、オレに訊かれても全然……メガエラさんはどうや?」
「……詳しいことはこの私にも分からないわ。けれども、こんな話なら聞いたことがある。ウェイアードを創造した神が、ウェイアードに防衛本能を与えたって。もしかしてそれが……?」
 天界の者でもその正体は理解できていなかった。
「メガエラの言うことは大体あっているわね」
 突然、どこからともなく声が聞こえた。恐らく女の声であるが、それにしてはトーンが低い。
「その声は!?」
 シンが真っ先に反応した。
 光の粒子が空間に集まり、人型をなしていく。そしてその正体が明らかとなる。
「遅くなったわね、みんな。船の錨を下ろすのに少してこずっちゃって」
 現れたのはヒナとハモであった。ハモの『テレポート』によって二人はアネモス神殿までやって来たのだ。
「姉貴、なんでここに?」
「ロビンの様子を見に来たのよ。思った通り、圧倒しているようね」
 膝をついたデュラハンに対し、ロビンは傷一つなく、余裕の笑みさえも浮かべている。戦況は来たばかりのヒナにもよく分かった。
「私の予知のエナジーでここの様子は分かっていたのですが、ヒナさんには見せられなくて。どうしても見たいと言うから連れてきたのです」
 ハモは、ここにやって来た理由を説明した。
「つまりは姉貴のわがままってことか……」
 シンは少し呆れた様子である。
「わがままとは失礼ね。まあ、確かにそれもあるけど、それ以上にロビンの変化について皆に教えてあげようと思ったのよ」
 ロビンは死の淵から蘇り、更にデュラハンを追い詰められるだけの力を得た。一体何故そのような事が起こり得たのか、それは天界の神、メガエラでさえも分からないことだった。
「ロビンに覚醒した力、それは闘霊が与えた力よ」
 これはロビン自身も言っていた事である。ヒナは皆の様子を見るに、これは周知の事と判断し、話を進める。
「闘霊ってのは、この世界自体の防衛の意思。この世界が破壊に追いやられた時に、世界が人間に与えるのよ」
 ここまでもメガエラの口から語られていることである。ここから闘霊に関わったことのない誰もが知り得ないことが明かされる。
「あたしは天眼、ハモは予知、といった具合に、実はあたし達はずっと昔に闘霊と会っているのよ」
 驚く一同を後目に、ヒナはシンを見る。
「シン、あなたも出会っているのよ、闘霊とね。とはいっても、物心つく前だったから覚えてないかもしれないけど」
「……オレが闘霊とやらに会っている、だって? 本当なのか……?」
 シンはやはり、得心がいかない。
「シン、あなたはあまりにも幼かった。だからあたしみたいに両目に天眼は宿らなかった。イワンもそう。ハモと同じような力を持っているけど、ハモほどの予知能力はない。精々、いいえ、十分だと思うけど人の心を読む力を得るのが限界だったわ」
 ガルシア達には途方もない話に聞こえたが、これらは全て、ロビンが闘霊と邂逅したのを目撃したために言えることだった。
「天眼……闘霊……? ……っは!?」
 シンは、もやがかかっていた記憶が蘇った感じがした。
「そうか、思い出したぜ。オレは確かにガキの頃、妙な所に連れていかれた。全て真っ白な変な世界にな。そこでオレはこの眼を……」
 シンには十分な力の余地がなかったために、ヒナのようにはいかなかった。
「闘霊は他にもいるらしいわ。ひょっとすると、ガルシアやジャスミンのような黒魔術の適性、炎の力も闘霊から授かったものなのかもしれないわね」
 この兄妹のみならず、ここにいる皆が何かしら特殊な力を持っている。それも、ヒナの眼を通して必要最低限の修行を行ったとはいえ、たったの一月で最大の力を開花させている。
 皆も闘霊の力を授かっていた、と考えれば辻褄の合う話である。
「だとしたら、そんなに前からウェイアードは破滅の危機を感じていたのか?」
 シンが言う。
「あるいはそうかもしれないわね。あたしやハモみたいに十年近く前から力に目覚めているんだし。まあなんにせよ、あたし達の希望はロビンよ。ロビンにしかデュラハンは倒せない。今は見守りましょう」
 一同がロビンに目を向けると、相変わらずロビンはデュラハンに膝をつかせていた。
「さて、デュラハン」
 ロビンは、肩に担いでいたソルブレードの切っ先をデュラハンに向けた。
「貴様を一刀両断して消滅させるのは容易い。だが、貴様にはまだまだやってもらわなきゃならない事がある」
 ロビンは、口元に不敵な笑みを携えつつ望みを言う。
「まず一つ、イリスの封印を解いて、シバを解放してもらおう。それから最後のエレメンタルスターを渡せ。せめてもの慈悲をくれてやる、大人しく従えば、痛い目を見ずに消し去ってやる」
 当然、デュラハンが素直に聞き入れるはずがなかった。
「調子に乗るな、小僧……がああ!?」
 ロビンはデュラハンの肩口にソルブレードを突き刺した。
「さっき言った事をもう忘れたのか? オレがその気になれば、貴様は一瞬にして消滅する。これ以上痛い目を見たくないのなら素直に言うことを聞け」
 ロビンは突き刺したソルブレードを抜いた。デュラハンの肩からどす黒い血が飛ぶ。
「……いや待てよ、暴力で従えるのはこいつとやっている事が変わらないな。ならば対価を支払ってやるか。デュラハンの満足がいくようにな……」
 ロビンは、不意に考え込むような素振りを見せたかと思うと、ソルブレードを背中の鞘にしまった。
 デュラハンはもちろん、仲間達もロビンの意図が全く読めなかった。
「対価を支払うって、ロビンのやつ何をするつもりなんだ?」
 ジェラルドが思わず口にする。
「分からん、ロビン、一体何を考えているのだ……?」
 ガルシアも同調する。
 しばらくの間が空いた後、ロビンは結論を出した。
「……決めた、いや、これしかないとしか言えないな。デュラハン、貴様に一つ楽しみをくれてやろう。オレなりに考えた最高の楽しみだ」
 ロビンは笑う。そして手を上げて無詠唱エナジーを発動し、何かを手もとに引き寄せた。
 それは、刀身がキラリと輝く小太刀であった。
「あれは、ボクの菊一文字!?」
 イワンは全く気がつかないうちに剣を取られていた。