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Lovin 'you after CCA 10

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Lovin you after CCA 10


「Lovin’you after CCA 5」テロ騒動直後のお話になります。


コロニー「スウィート・ウォーター」
ネオ・ジオンの本拠地であるこの場所で、かつて連邦の白い悪魔といわれたアムロ・レイは、総帥、シャア・アズナブルと、その子供達と共に暮らしている。
数日前、アムロはシャアとの子供である双子の男児を出産した。
過去に連邦のニュータイプ研究所で無茶な人体実験を受けた後遺症で、その出産は命懸けのものとなり、一時は心肺停止に陥ってしまった。しかし、セイラによる救命処置や生死の境目を彷徨っていたアムロをカミーユとシャアが迎えに来てくれたお陰で一命を取り留めたのだ。

そしてその翌日、アムロの入院する病院を標的としたテロ事件が勃発。
いち早く危機を察知したライラと、シャアに代わりテロリスト殲滅作戦を指揮したカイルの活躍により無事危機を乗り越えたのだった。


「ギュネイ准尉、悪いね」
「いえ、大佐の命令ですから」
アムロの車椅子を押しながら、ギュネイは検査室から病室へと向かって歩く。
普段はシャアの護衛をしているが、テロがあった直後の病院に入院しているアムロを心配したシャアにより、いち早く危険を察知出来るニュータイプ素質のあるギュネイをアムロの護衛につけたのだ。
「それより体調はどうですか?」
「ん?うん。…大丈夫」
その返事に、ギュネイが溜め息を吐く。
「体調が悪いんだな」
「あ…いや、ちょっと熱が出て来た…かなぁ…って…」
ギュネイは車椅子を押す手を止め、そっとアムロの額に触れる。
触れた手からは、平熱とは程遠い熱さが伝わってくる。
「おい!結構熱高いぞ!直ぐドクターに!」
「ああ!大丈夫!」
そのままUターンしようとするギュネイをアムロが止める。
「ギュネイ准尉、大丈夫。さっき薬貰ったから、部屋に戻ったら直ぐ飲むよ。」
アムロがギュネイの手を掴んでドクターの元に行くのを止める。
「しかし…!」
「大丈夫。心配してくれてありがとう。ギュネイ准尉」
辛いだろうに、無理して笑顔を向けるアムロに庇護欲の様なものが込み上げる。
「…っ」
少し汗の浮かんだアムロの額にハンカチを当てて、優しく拭き取る。
「ありがとう」
「い、いいから…早く部屋に戻るぞ」
熱で赤みを帯びた頬と、潤んだ琥珀色の瞳に、昔、酔っ払った時のアムロの色っぽい顔が重なる。

『それじゃ、好きぃ?』

決して恋愛的な要素が含まれた言葉ではない事は分かっていたが、あの時のアムロの言葉と表情が、未だにギュネイの脳裏にハッキリと焼き付いている。自身の顔が火照るのを感じながら、アムロに顔が見えないように後ろに回って、車椅子を押し始める。
少し行ったところで、アムロがビクリと反応して辺りを見渡す。
すると、子供の声が聞こえてくる。
その声の方向に視線を向けると、突然、アムロが焦ったように車椅子を自分で動かして声の方に行こうとする。
「どうした?」
そうアムロに問いかけた瞬間、ギュネイの脳裏に“危険”の文字が浮かぶ。
そして、アムロの向かう方向に嫌なプレッシャーを感じた。
『何だ!?この嫌な感じは!』
おそらく、アムロも同じ事を感じているのだろう。プレッシャーの方へと行こうとする。
「待て!アムロ大尉。そっちは“危険”だ」
「だから行くんだ!嫌な予感がする。このまま放っておいたらみんなに危険が及ぶ!」
その切羽詰まった様子に、ギュネイは“自分が行くから”と、アムロをその場に待たせようとするが、それは却下され、結局アムロの車椅子を押してそこに向かった。
すると、そこには子供が二人、何かを見て騒いでいる。
「なんか赤いランプが光り始めたよ」
「時計も動きだした!」
「お前たち、こんな所で何をしているんだ?」
入院患者と思われる子供二人に、ギュネイが声をかける。
「お兄ちゃん誰?僕たちここでオモチャを見つけたんだ。」
「オモチャ?」
「うん、時計のオモチャ!なんか触ってたら動き出したんだ。なんだろうコレ?」
子供が見ている“オモチャ”をギュネイが覗き込む。
そして、それを見て固まる。
「なっ!!」
「どうした?ギュネイ准尉!?」
ギュネイは引きつった表情を浮かべてアムロに振り返る。
その様子に、アムロが車椅子から立ち上がり、ギュネイの見ているものを覗き込む。
そこにあったのは“爆弾”だった。
時限式らしく、タイマーの数字がカウントダウンされていく。
「っ!?」
アムロは動揺を悟れれぬ様に子供たちに振り向く。
「君たち、コレはこの部屋に置いてあったの?」
「うん!そう。ここに置いてあったの。誰かの忘れ物かな?」
首をひねる子供に優しく微笑むと、そっとその頭を撫ぜる。
「そうみたいだね。きっと大切なものだろうから私が病院の人に渡しておくよ。だから君たちは早くお部屋に戻りなさい。」
「うん!わかった。お姉さん、よろしくね」
「うん。拾ってくれてありがとうね。」
アムロは笑顔で手を振り、子供達の退出を促す。
「お姉さん!バイバイ」
「バイバイ」
子供達を見送ったあと、ガバリと振り返り“それ”に向き直る。
「昨日のテロの爆弾が残ってたのか!?不味いな、残り10分。間に合うか!?」
「おい!あんた、何する気だ!?俺たちも逃げるぞ!」
「ここで爆破させる気か?この残り時間じゃ患者を全員避難させられない!」
「しかし!」
「ここで解除する!」
「アムロ大尉!」
「ハロ!」
アムロはハロを呼び寄せると、中から工具を取り出す。
ハロには、直ぐに修理出来るように小型の簡易工具がセットしてある。
「ギュネイはアルに連絡を!」
その状況に、アムロの指示に従うのが最善策だと感じたギュネイは、踵を返すと、急いでアルの元へと走り出す。
「くそっ!直ぐに戻る!」
アムロは慎重に爆弾の蓋を開けると、中を確認する。
「このタイプは解体したことある…。大丈夫だ。いける。」
自分に言い聞かせる様に口に出し、深呼吸して作業に取り掛かる。残り時間は5分。
解体を始めると、ギュネイが戻ってきた。
「アムロ大尉!大丈夫か!?この付近の患者だけだが避難してもらってる」
あまり騒ぎになっていないところを見ると、ギュネイの連絡に、アルが機転を利かせて上手く患者を誘導してくれているのだろう。
本当に…彼にはいつも助けられる。
『私は彼に何も返してあげられないのに…』
「ありがとう」
「それより、解除できそうか!?」
「ああ、大丈夫だ。このタイプは解体した事がある!」
ギュネイに振り向きもせず、手早く解体作業を進める。
「した事あるって…あんたパイロットだろう?」
「ははは、昔…一年戦争の時に、ガンダムに仕掛けられた爆弾を解除した事があるんだ」
「はぁ?だからってパイロットのあんたがやる事ないだろ?」
「他に出来る人がいなかったんだよ。それに私は一応メカニックでもあるよ」
そういえば一年戦争当時、人員不足だったホワイトベースでは、パイロットのアムロ自らガンダムを整備していたと聞く。
『そんな状況であの赤い彗星と戦っていたって言うのか?』
そんな事を考えていると、アムロの身体がグラリと揺れる。
咄嗟に支えた身体が熱い。
作品名:Lovin 'you after CCA 10 作家名:koyuho