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Lovin 'you after CCA 10

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「そうだ、あんた熱が!」
荒い息を吐きながらも、作業に集中するアムロにギュネイは息をのむ。
そして、アムロが作業しやすいように身体を支える。
「ありがとう、助かる」
「これくらいしか出来ん…頼む」
残り1分を切ってアムロの手が止まる。
「どうした?」
「フェイクだ…。この赤と白の導線どっちかを切れば完了だが、フェイクの導線がある。間違った方を切ったら爆発する。」
「なっ、どっちがフェイクか分からないのか?」
「分からない。ギュネイ准尉、逃げろ!」
振り向いたアムロの真剣な瞳に、こんな時なのに魅入ってしまう。
『強い光を放つ綺麗な琥珀色だ…』
「馬鹿言うな!最後まで付き合う」
「ギュネイ!」
叫ぶアムロを後ろから抱き締める。
「あんたと一緒なら良いよ。それに、俺は死ぬつもりはない。あんたなら出来る!」
ギュネイの言葉にアムロが目を見開く。
「…馬鹿だな…」
「あんたと一緒だ」
「ふふ…」
残り時間が刻々と減っていく。
『どうする?どっちだ!?』
アムロは爆弾に向き合い、導線に刃を当てる。
心臓の音がやけに耳に響く。
そして、子供達の顔や仲間の顔が次々と脳裏に浮かぶ。
『死ねない!』
そう思った瞬間、愛する人の後ろ姿が浮かび上がる。
『シャア!!』
シャアを想い、必死にその名を呼ぶ。
その時、

《赤だ!!赤を切れ!!!》

突如、脳裏にシャアの声が響く。
自分を抱き締めるギュネイの腕にもギュッと力が入る。
「大佐を信じろ!」
ギュネイにもシャアの声が聞こえたのだろう。後押しする様にアムロに叫ぶ。
アムロは意を決すると、その言葉のまま、赤い導線に刃を掛けてそれを断ち切った。
〈ピッ〉
タイマーが残り2秒を残してストップする。
二人はそれを呆然と見つめ、暫く固まる。
そして、数秒経ってようやく大きく息を吐いた。
「…助かっ…た…?」
まだ現実を受け止められず、アムロが呟く。
すると、ギュネイが突然笑い出し、アムロをギュッと抱き締めた。
「ははは!スゲーなあんた!惚れ直したよ!」
思わず心からの声が飛び出す。
その言葉に、アムロだけでなく、言った本人も驚く。
『惚れ直した?』
そう心の中で呟いて、その言葉がストンと胸に落ちるのを感じる。
『そうだ。俺は、この人が好きだ』
そう自覚した瞬間、顔に熱が集まり真っ赤に染まる。
「ギュネイ?」
見上げるアムロの顔も赤い。
「あ、いや、これはだな。メカニックとしてって言うか、人としてって言うか…、アレだ、尊敬っていうか、そう言うのだ!れれれ、恋愛的な…のとは…違うから!」
何故か必死に言い訳をしてしまう。
本心は恋愛的な想いだと分かっているのに…。
「あ…、そうだよな。ビックリした。でもそんな風に言ってもらえて嬉しいよ」
にっこり微笑む顔に、ギュッと胸が締め付けられる。
思わず手を伸ばそうとしたその時、入り口の方から物凄いプレッシャーを感じた。
振り向くと、金髪の自分の上司がこちらを睨んでいた。
「た、大佐!」
「アムロ…、ギュネイ…」
シャアは足早にこちらに向かってくると、アムロの腕を引き、自身の腕の中に抱き締める。
「シャア…」
アムロはシャアに抱き締められて、ホッとした表情を浮かべる。
そんなアムロを、シャアは無事を確認する様に、頭から肩、背中を撫ぜながら抱き締める。
「無事で良かった…」
微かにシャアの指が震えている。
「ごめん…シャア…、心配かけて…」
「全くだ…君は私を殺す気か?心臓がいくつあっても足りない」
「でも、最後は貴方が助けてくれた」
突然聞こえたシャアの声。アレがなければ決断出来なかったかもしれない。
「君が私に助けを乞う声が聞こえた。そうしたら君の状況が視えて、赤い導線を切れと頭に浮かんだ」
「やっぱり、貴方のNT能力は眠ってるだけで私よりもよっぽど高いよ」
「君の事しか分からないがな」
その言葉に、ギュネイはハッと顔を上げる。
やはり、アムロが助けを乞うのは…頼るのはシャアなのだ。自分は彼女にとっては守るべき対象の側なのだ。
そして、二人の強い絆を感じる。
『俺の入る隙なんてないな』
二人を見つめ、ギュネイが小さく溜め息を吐く。
「大佐、事後処理は自分がしますので、早くアムロ大尉を休ませてあげて下さい。医師から薬を貰っているそうなのでそれを飲ませ下さい。」
「分かった。すまないが後は頼む」
「はい」
ギュネイは踵を揃え、シャアへと向かい敬礼をする。
「うむ」
シャアは頷くと、アムロを抱き上げて部屋を出て行った。
その、シャアの腕の隙間から零れ落ちて揺れる癖毛に、思わず触れたくなるのをグッと堪え、開きかけた拳を強く握る。
二人を見送った後、大きな溜め息を吐いてその場に座り込んだ。
「自覚した途端に失恋かよ…」
両手で顔を覆い呟く。
すると、ポンっと肩を叩かれた。
見上げると、騒ぎを聞き付けたカミーユ・ビダンが自分を見下ろしていた。
「大丈夫か?」
「カミーユ・ビダン…」
アムロを上回る力を持つと言うニュータイプ。グリプス戦役でエゥーゴを勝利に導いた男。
その戦いで心を病んでしまったが、今は回復し医師をしていると言う。
「オレのミスだ。すまなかった。爆弾を取りこぼしていたなんて…」
カミーユは、ライラと共にあのテロ事件で、爆弾の位置やテロリストの動向を離れた場所から透視して作戦をフォローしていた。
「いや、アレは稼働していなかったから見つけられなくても仕方がない」
「そうだけどね。君やアムロさんを危険に晒してしまった。」
すまなそうにもう一度謝ってくる。
「いや、無事だったし、もう良いよ」
そう答えながらも、意識は名残惜しげにアムロの気配を追う。
ギュネイの視線に気付いたカミーユは「ああ」とその意味に気付くと、小さく溜め息を吐いてギュネイの肩を叩く。
「良かったら今晩、飲みに行きませんか?」
「え?」
「俺も少しギュネイ准尉の気持ちが分かるので。ついでに、あの無駄にキラキラした人の悪口も聞いて欲しいし」
そう言って差し出されたカミーユの手を取り、立ち上がる。
そして、その手からカミーユの思惟が伝わってきた。
『クワトロ大尉の馬鹿野郎!アムロさんを独り占めしやがって!』
ギュネイは苦笑すると、カミーユに笑顔で答える。
「いいね、行こう。あんたとは気が合いそうだ」
「よし、決まりだ!」


二人は街に繰り出し、小さなバーのカウンターで酒を酌み交わす。
「大体あの人は独占欲が強すぎるんですよ!俺がちょっとアムロ大尉に触れただけで物凄いプレッシャー掛けてくるんです!」
グラスをドンとカウンターに叩きつけながらギュネイが叫ぶ。
「そうそう!昔なんて久しぶりに会ったアムロさんにいきなりキスしたり、キスマークつけて牽制したり!手が早い上に独占欲が強くって!」
既に大分酒の回ったギュネイとカミーユがくだを巻きながら文句をブチまける。
「あの無駄にハイスペックなところもムカつく!自分と比べるとなんか落ち込むし…」
「だよなぁ…。敵わねーって思っちまう。けど、結構情けない所もあるぜ。」
「そうだな。グリプスの時なんて優柔不断過ぎて俺、あの人を殴っちゃったよ」
「ええ!カミーユ、お前凄いな!」
ギュネイが思わず目を見開いて驚く。
作品名:Lovin 'you after CCA 10 作家名:koyuho