Lovin 'you after CCA 10
「ギュネイに抱きしめられたりなんかしなかったかい?」
レズンが面白げに聞いてくる。
「抱きしめ…ああ。解除が成功した時は感極まってそんな事があったけど…」
と、その時ギュネイに言われた言葉を思い出す。
『ははは!スゲーなあんた!惚れ直したよ!』
その言葉に、思わず顔が真っ赤に染まる。
『イヤイヤ、あれはメカニックとしてって言うか、尊敬だと言ってたじゃないか。何勘違いしてるんだ!』
アムロは心の中で何度も確認して己を落ち着かせる。
そんなアムロに、レズンが「あー!」っと声を上げる。
「その顔!やっぱり何か有ったな!」
「何かって、別にアレはそう言う意味じゃ無いって言ってたし!」
「アレって何だよ!白状しな!」
「ええええ、や、だから、えっとその…!」
必死に誤魔化そうとしたが、結局はレズンの追及に負けて白状してしまう。
「“惚れ直した”、ね!はーははは!やっぱりな。」
「やっぱりって何だよ!」
「アムロ大尉…気付いてなかったんですか?」
二人の会話を聞きながら、ナナイがボソリと呟く。
「え?ナナイ大尉?」
少し呆れ気味な表情を浮かべるナナイに、アムロが聞き返す。
「まぁ、ギュネイもはっきりと自覚していなかった様ですし、過去に貴女を殺そうとしていますからね。」
あの戦争の時、ジュドーを人質に取られたアムロは、ギュネイによって高圧電流を流されて殺されかけた。そして、捕虜となった後も、医務室で首を絞められている。
「アレは別に…戦争だったんだから仕方ない。私は敵兵だったから」
アムロはそっと、あの時締められた首に手を当てる。
ギュネイも戦果をあげようと必死だった。
連邦のガンダムを墜したとなれば、戦歴にもハクがつき、シャアに認めてもらえる。そう思ったに違いない。
「まぁとにかく。あの爆弾騒ぎでギュネイもきっと自分の気持ちを自覚したんだろう?面白いじゃないか!」
「レズン少尉!」
面白がるレズンに、アムロが焦って叫ぶ。
「レズン、もうその辺にしておきなさい。アムロ大尉も、貴女が焦れば焦るほどレズンが喜びますよ」
そして、その三人の会話を、談話室の扉の前でワナワナと拳を震わせたギュネイが、顔を真っ赤にして聞いていた。
シャアにナナイを呼びに行くよう命令され、扉の前に来たら、中からとんでもない会話が聞こえて来たのだ。扉を開ける事も出来ず、ダラダラとギュネイの額に冷や汗が流れる。
『クソッ!レズンの奴!覚えてろ!!』
ギュネイの心の叫びが病院内に響いたのだった。
end
作品名:Lovin 'you after CCA 10 作家名:koyuho